〈韓国の定期購入サービス・スタートアップ対談〉Memebox vs. Dum & Dummerce vs. Hello Nature vs. hey! Bread

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2012年からこれまでの1年間、韓国のスタートアップ・エコシステムで、最も人気のあるビジネスモデルが定期購入サービスであることについては、皆が同意してくれるだろう。数ある商品の中で定期購入サービスは、バーティカル(商品分野別)に導入され、多くの会社が生まれた。その人気に反して、ビジネスとしての成功率は低く、事業を成長させたスタートアップは多くない。

去る7月10日、韓国の定期購入サービス・スタートアップのトップ4社の代表者を招き、ビジネスにフォーカスして対談をした。

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写真左から:

  • 生活必需品:Dum & Dummerce 代表 チョ・ソンウ(조성우)氏
  • 有機農産物:Hello Nature サービス企画担当 ジン・ヨンキル(진영길)氏
  • 化粧品詰合:Memebox 代表 ハ・ヒョンソク(하형석)氏
  • パンの宅配:hey! Bread 代表 ユ・ミンジュ(유민주)氏

<モデレータ>Bitamin 代表 チョ・キュミン(조규민)氏
<記事編集・構成>BeSuccess マネージャー イ・ウンホ(이은호)

「韓国では、どのようにすれば定期購入サービスが成功できるか」とよく耳にする質問。ビジネスの鬼才達はどのような考えを持っているのだろうか。各社のビジネスについては、以前この記事で詳細を紹介している。

Q. 定期購入サービスをご自身の観点から定義してみてください。

Memebox:

定期購入サービスで提供する商品は、食べると無くなるような、持続的に消費される商品である必要がある。他社のように製品原価を拠出する必要があれば、我々がビジネスをするのは難しかっただろう(編注:Memebox はメーカーのサンプル商品提供、新製品のマーケティングを兼ねているため原価が掛かっていない)。Memebox は販売するボックスの化粧品を無料で提供を受けており、その負担が少ない。

先週は5,000人以上の定期購入ユーザが集まった。毎月同じようなペースだったのに、なぜ急に先月増えたのだろうかと考えた結果、消費者が定期購入サービスを理解するには、一定の期間が必要なのだと分かった。消費者が定期購入サービスを理解するのに、なぜ時間がかかるのかはよくわからない。定期購入サービスとて、化粧品を買う方法の一つに過ぎないのに。

消費者がサービスを受け入れやすいよう、日毎、週毎の商品サービスを企画しているところだ。顧客にとってハードルは低くあるべきで、簡単に利用できること、中に入っている化粧品を説明し、私達のメッセージを明確に伝えられるよう注力している。

hey! Bread:

コマースで成功できる道は2つのみ。他の誰よりも安く売るか、誰も売らないものを売るか。実際のところ、hey! Bread は定期購入サービスとは言えない。基本的には普通のコマースであって、利便性を追加しただけのことだ。定期購入のしくみ自体は、消費者の財布を開かせるきっかけにはならないと思う。

Memebox を見ていて、本当に多くのことを学ばせてもらっている。Memebox のユーザは、月に一度便利なので利用するのではなく、Memebox の商品そのものが欲しいのだ。核心はそこにある。

定期購入サービスを始めるときは、定期配送が便利なのか、商品をパッケージ化したときに価値が増大するのか、考える必要がある。その商品が定期購入サービスになったとき相性がよいか、それが最も重要なポイントである。

Dum & Dummerce:

100% 賛成する。Dum & Dummerce は、定期購入サービスの本質的な意味に立ち返って、サービスモデルを発展させている。消費者は冷静なので、価格が通常の商品と同じか少し高いのに、定期配送という理由だけで長期的な顧客にはなってくれない。商品の魅力、利便性、独自性の3つを兼ね備えているべきだ。しかし、韓国の定期購入サービス市場は規模が小さい。

Hello Nature:

定期購入サービスを使えば、商品をたびたび購入する必要はなくなる。しかし、この利便性を追求すれば、その分、独自性が失われてしまう。ここでうまくバランスを取る必要がある。調査をしてみたところ、サービスに商品を入れることが重要なのではなく、商品そのものが重要だということがわかった。継続的に購入を繰り返す商品に定期購入サービスが展開されているが、実際に探してみると、そのような商品は多くない。生活必需品、化粧品などが合致するだろう。それに、定期購入サービス自体が単体で、一つのビジネスモデルとして成立できるほど簡単ではないようだ。

Q. 現在各社が展開中の定期購入サービスを、どのように強化する予定か。

Dum & Dummerce:

Dum & Dummerce は、通常の定期購入サービスとは逆のことを行っている。しかし、我々は本来、定期購入サービスに求められる姿に近づいていると思う。例えば、ボトルウォーターの配送は Dum & Dummerce では人気のアイテムだが、「自分の好きな商品を、好きな量だけ、必要なタイミングで」出荷されることに満足が得られている。水を毎回購入する煩わしさから解放されるだけでなく、必要な量やブランドを選べるようにして、Dum & Dummerce はあらゆる顧客に愛される定期購入サービスに発展させるべく、多くの実験をしているところだ。

Hello Nature:

我々は、お米を定期的に配送するサービスを企画したが、思ったほど簡単ではなかった。その点、Dum & Dummerce のボトルウォーター配送は、非常にうまくやっているようだ。

Dum & Dummerce:

我々はボトルウォーター配送のサービスを完全なものにするのに、10ヶ月かかった。

Memebox:

定期購入サービスは、それ自体がブランドにならなければならない。Memebox が支持されているのは、パッケージに入っている商品のブランド力のおかげだ。そのおかげで、シナジー効果が得られている。Benefit、Chanel などのブランドは、誰もが知っているブランドだ。

多くの人は知らないが、Memebox は創業当初、大きな投資家から投資の提案を受け、事業を他分野にも拡大いようとしたことがある。そのうちの一つは洋服の配送サービスで、洋服をタダで8,000着譲り受けたし、他に、アメリカの Dollar Shave Club のようなカミソリ刃定期購入サービスも展開しようとした。カミソリの替刃は、Dollar Shave Club と同じ構成、同じ商品、同じ品質のものを用意した。すぐに結果は出た。あっという間に2億ウォンが消えてなくなった。

ブランド力をどう育てるかを考えず、定期的な配送というメリットだけで商品を販売することができない。それゆえ、Memebox は企業のブランド・マーケティングにチャネルになることに特化しており、Memebox は彼らのブランドパワーに助けられて、共に成長することができる。最近では反対に、化粧品ブランドで、自社パッケージに Memebox のロゴを印刷して発売する商品も出て来ている。今後もメディアの活用のために、資金を投入する計画だ。

Hello Nature:

それはうらやましい。農産物にはブランドが無い。イシモチ(グチの仲間)、梨、韓牛などにはブランドがあるが、それも消費者に広く浸透しているわけではない。Hello Nature はブランド力の無い農産物のメディアとなり、共にブランディングをする役割を担っている。もちろん、私たちもメジャーブランドの力にあやかりたいと思うときはあるが。(笑)

Q. 以前、ソーシャルコマースの全盛期、マクドナルドなどが数十万枚の割引クーポンを配りまくることが話題になり、それがソーシャルコマースに火をつけた側面がある。定期購入サービスにも似たような側面はあるだろう。hey! Bread は、あやかれるブランドは無いのか。

hey! Bread:

他の各社と似たような状況だ。しかし、だからと言って、Tous Les JoursParis Baguette(訳注:いずれも、韓国のパン屋チェーン)のような有名ブランドにあやかる必要はないじゃないか。 我々がパン屋と提携を結ぶ上で、彼らに求める最も厳格な条件は「防腐剤が入っていないこと」なのだよ。(笑)

Q. 良い商品を集め、品質を保証するために、どのような努力をしているか。

Hello Nature:

品質委員会を運営している。Hello Nature で募集をし、応募のあった人の中から選んでいる。彼らに商品を正式に販売する前に、サンプルを送って評価を依頼している。彼らにはマーケティングや広報を一切要求していない。ただ、商品に対する正当な評価を依頼するだけだ。そして、評価が低いものは販売しない。そのためか、品質評価グループで活動した人が、活動終了後にヘビーユーザーとなるケースが多い。

このシステムを運用してみて、時々、彼らとの間に確執が生まれることもある。営業担当者的には品質を評価しているが、品質委員会の評価が低い場合だ。商品を集めた営業チームは大変悩むことになる。しかしこのようなときも、営業担当者には「品質管理チームを説得できなかったら、消費者は納得してくれない」と理解を求めながら、ルールを守り続けていこうと言っている。

チームの中で評価が異なるよりも、農家と消費者の間で品質評価が違っていると大きな問題だ。Hello Nature は、このギャップを間に入って埋める役割を担っている。販売チームは3人だ。最初のうちは、農家を一軒一軒回ってお願いしていたが、少しは世間で知られるようになった最近は、別な農家から紹介され、農家の方から我々に連絡してくるケースも出て来た。どのようなチャネルで連絡することになっても、まずは営業チームが一度訪問する形をとっている。

当社の中で「営業輪番」という面白い文化が生まれた。毎日ほぼ社外で活動する営業チームとオフィスとの関係を維持し、内勤者が営業チームの外回りに随行し、現場の状況を理解しようという趣旨からだ。鬱陵島(ウルルンド)、全羅道(チョルラド)、慶尚道(キョンサンド)など、韓国全土を全社員が営業チームと共に回っている。

hey! Bread:

ソウルには、2,000〜3,000件のパン屋があり、自分達のパンを自信を持って紹介しているパン屋は、そう多くはない。現在は、7店のベーカリーが hey! Bread と提携している。私はパンが好きだが、私の舌は、一般的な青年男性の味覚に過ぎない。チームメンバーにも食べ物に好き嫌いがあるので、彼らの意見をそのままパン屋選びに反映することはできない。ブログでおいしいと書かれた話を読んで、店を訪ねて行けば、さらにおいしく感じることもある。したがって、私たちはパンに対して専門家ではない。品質委員会は開設していないが、パンの品質を測るため、提携しているベーカリーのブーランジェにブラインドテストをお願いしている。

Dum & Dummerce:

Dum & Dummerce は独自性の高いサービスなので、キュレーションには強くない。社内に商品やサービスを評価する基準はあるが、まだ過渡的なものなので、よい商品とよくない商品で顧客の反応をテストし耳を傾けるようにしている。以前、ソーシャル・コマース事業をしていたことがあり、その頃にあまりに多くの営業を雇って人脈を作った。その人脈、学縁などを使っているので、営業は大変ではない。

Dum & Dummerce は、家事や洗車サービスも提供しているが、この種のサービスの品質基準を定めるのは難しい。サービスに対する信頼というより、どんな人に託すかという点がポイントになるので別の基準が適用されるべきだろう。例えば、ベビーシッターの市場は他サービスと類似している点もあり規模も大きいが、思い切ってあきらめるしかなかった。ベビーシッター・サービスを始めて、万が一、対応できないような事故が起きたら、事業全体が影響される。リスクが大き過ぎるのだ。

サービスの品質が評価されるのは、どれだけきちんと掃除したかではない。掃除後に電話を入れ、いつ来たかをチェックし、メールを送るなどアフターサービスが重要だ。本来ならメイドさんへの報酬は封筒に入れて渡し、電話でやりとりをするものだが、消費者に面倒なやりとりを強いないことが最大のメリットとして受け止められているようだ。このような雇用市場に関するビジネスでは、従来からあるビジネスを、どのように再定義できるかに焦点を合わせるべきだろう。

Memebox:

定期購入サービスもサービス分野によって大きく異なるようだが、hey! Bread や Hello Nature と違って、Memebox はあまり流通を気にする必要がない。Memebox は美容業界で、多額に確保されたマーケティング予算に狙いを定めており、流通ではなく化粧品メーカーのマーケティングに革新をもたらす役割を担っている。

当社には5人の取締役がおり、1人は開発、他の4人は営業をしている。4つのチームにはそれぞれセールス・ディレクターがおり、各チームには7人のメンバーがいる。多くの人がさまざまな確度からアプローチしている。先般、ソウルのデパート「the Galleria」とオフラインで協業できることになり、SKテレコムとも提携している。ビッグネームとの協業が始まり、営業の際のハードルはだんだん低くなっている。会社で使うほとんどのリソースや時間は、企業との関係締結に費やされている。

Memebox の定期購入サービスは、現在のB2B に近い。全リソースの80%程度がB2Bに投入され、顧客との関係をあまりケアしていない。しかし、心配は不要だ。顧客との関係は、B2Bの同様にうまく維持できる。Chanel と当社が結んだ提携は、最終的には顧客の利益になるのだから。結局のところ、顧客が求めるものもそれである。

Q. 定期購入サービスを始めて、特に直面した問題はありますか。

Dum & Dummerce:

法制的な問題が多い。商品のバリエーションが多いため、売っていいものとよくないものの悩みをよく持つ。例えば洗車、おばちゃんが無許可で営業する違法の低価格洗車が蔓延すれば、そのようなことも乗り越えなければならない。人を違法に雇用することはできないからね。

だから、既存の洗車サービスの専門会社と提携した。家事サービスも、地域毎に担当している代理店と提携している。面白いことに、我々の洗車サービスの売上の大部分、70%はB2Bからだ。サムスンも我々のサービスを利用しており、他社からも「役員の車を拭いてほしい」というリクエストを多くもらっている。祝日ともなれば牛肉や果物のパッケージをプレゼントしようとする人が増えるが、これまでの工業製品や販促物の市場だった商品に飽きて、我々のサービスに加入してくる人が増えている。

基本的にはコマースだが、B2B にすべきかどうかよく悩んだ。しかし、当社の売上はB2Bの割合がますます大きくなっている。ある大企業のクライアントは、友人にプレゼントすると言って、一度に4,000個のパッケージを購入した。KPI を設定し、本格的にB2Bを始めたら、終わり知らずに成長していった。

Memebox:

Memebox がB2Bを初めて開始したとき、私は非常に反対した。共同創業者がB2Bの開始をあまりに強く主張したので、私は自分の考えを曲げたのだが、今から考えれば、何百回もよくやりあったものだ。しかし、先月には売上高の45%以上がB2Bからのものだった。B2Bは売上が予測しやすく、大きな利益が確保しやすいという点でメリットがある。

Q. スタートアップだけでなく、大企業も定期購入サービス市場に多く進出してきた。どのように対抗するのか。

Memebox:

定期購入サービスの市場は合計300億ウォン程度と言われるが、実際には、200億ウォン程度のようだ。それでも大きな市場である。大企業が進出してくるのに備えなければならない。しかし、結果として、大企業が始めた定期購入サービスで、うまく行っているものは一つもない。SKテレコムはキャッシュバックで受けられるサービス、CJグループAuction もそれぞれサービスを始めたが、定期購入サービスを提供するための雑務を、大企業の内部では処理できないと断言できる。

Ticket Monster で働いていたときも、同じような状況があった。ソーシャルコマースは、地域の社長を対象に販売するので、サムスン出身の友人、Sky 出身の友人らが、近所の零細企業に会って営業していた。Memebox の社内でも、どのような社員がどのような職種をこなせるか検討したことがあり、モバイル決済チームは、最初から94年生まれ以降の人材を採用するようにしていた。

市場には、骨太の人々が得意とする分野と、若くて経験がなくても力を発揮できる分野がある。定期購入サービスは、大企業の構造では、何百億ウォン、何千億ウォンの資金を持ってしても参入できるビジネスではないと思う。

Dum and Dummerce:

MBA を取得するために大学院に通っているのだが、そこには流通に関連した人々が集まっている。そこでは、アイデアを得たプロジェクトについて話をするとき、誰も一様に定期購入サービスだと言う。しかし、先ほども述べたように、定期購入サービスには雑務が多い。部門を7〜8グループ集めれば解決できることもあるだろうが、大企業の中で、果たして可能だろうか。我々のように、パートナーとの提携で雑務を減らすのは、一つの解決策だ。状況は厳しいが、業界や市場が拡大するのは歓迎すべきことだ。大企業の進出により、市場全体のパイが大きくなるのはいいことだ。

Q. 皆さんにとって、定期購入サービスとは何か。

Dum & Dummerce:

孤独な戦いだ。一定の成長をしており、大企業との関係も形成され、将来を楽観視しているが、私がこのビジネスを続けられるかどうかは、孤独の戦いの結果如何に尽きる。

Hello Nature:

いい状況だと考えている。定期購入サービスのモデルは Hello Nature が提供するサービスの核心部分ではないが、販売を促進し、収益増をプッシュするものだ。よい結果を生み出すために、我々が最初のよい職人になる必要がある。

hey! Bread:

アメリカで大学院に通っていた頃、Whole Foods Market というスーパー(訳注:比較的高級志向で、有機食材などを扱うチェーン)に行くたび、感心させられたものだ。「ソウルなら、Whole Foods Market のオンライン版が可能ではないか」と考え、好きだったパンから始まることにしたのだ。現在はビジネスの開発過程にあるので、サービスは顧客から学ばなければならないと堅く信じている。どんなによいサービスで顧客にとって便利だと説明してみても、顧客が認めてくれなければ意味がない。顧客の意見を聞き、彼らが欲するものを提供できれば、世の中に必要なサービスになれると思う。

Memebox:

ビジネスを始めたころは、お金や生き残る方法だけを考えていたが、美容業界で Memebox が実現できることは増えてきている。LG やサムスンのような韓国経済の礎となるような企業と提携しつつ、彼らよりも少し詳しいインターネット業界でサービスを展開できたこと。美容業界が製造からマーケティングにシフトし、韓国の美容企業は存続が危ぶまれる中で、Memebox が彼らを支援できたこと。このような経験から、韓国経済を自ら前進させていると実感できるようになった。現在、スタートアップをしている理由は、使命感や愛国心に近い。

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【via BeSuccess】 @beSUCCESSdotcom

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