新進気鋭 btraxの日本法人GM 多田氏に聞いた、スタートアップのシリコンバレー進出支援にかける思い

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btrax Japan ローンチ・パーティーにて、多田亮彦氏(左)と Brandon Hill氏(右)

サンフランシスコに本拠を置くデジタル・エージェンシーの btrax は先頃、日本法人の btrax Japan を設立し東京オフィスを開設した。同社顧客でもあるゲーム・デベロッパとのオフィス・スワップ [1] で六本木ヒルズに拠点を設け、日本の顧客向けのサービスを強化するとしている。btrax Japan の設立にあたっては先月、東京でローンチ・パーティーが開かれ、会場には Telepathy の井口尊仁氏をはじめ多数の著名人が招かれていた。

このパーティーで気になっていたのは、司会を務めた btrax Japan のゼネラル・マネージャーの多田亮彦氏のことだ。btrax の CEO Brandon Hill が日本法人設立にあたってヘッドハントした人物だが、パーティー会場では言葉を交わす時間もなかったので、改めて多田氏にお願いして、新たな事業に向けた彼の思いなどを語ってもらった。

クロスボーダーにシフトする業務展開

btrax は2004年、北海道出身の Brandon Hill が、サンフランシスコの自宅を拠点に開設した(関連記事)。当時、同社の顧客はアメリカの企業のみだったが、2006年頃から大手旅行口コミサイト TripAdvisor の日本市場向けのローカリゼーションやマーケットエントリを手がけることになり、それをきっかけに、日米にまたがって取り扱うプロジェクト依頼が多くの顧客から寄せられるようになった。その結果、現在、btrax が取引する顧客の割合は、アメリカ企業 60% に対して、日本企業 40% にまで増えた。

日本市場に進出したいアメリカのエンタープライズやスタートアップだけでなく、最近は、サンフランシスコやベイエリアを拠点に、新ウェブサービスやアプリを立ち上げようとする日本企業からの相談も増えている。もちろん、日本からでもサービスのローンチは可能だが、この地域に集まる人脈や人材が、サービスをより洗練されたものにし世界展開を加速させる。そのような顧客からのオーダーをより細かくサポートすべく、今回の東京拠点の開設に至った。

都市デザインへの傾倒がもたらした、シリコンバレーとの出会い

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btrax Japan GM 多田亮彦氏

興味深いことに、btrax Japan の新ゼネラル・マネージャー多田氏のバックグラウンドは、都市デザインなのだそうだ。確かに、世界各国でスタートアップのインキュベーション等を手がける人々に会うと、コンピュータや情報技術ではなく、都市デザインのバックグラウンドを持っている人が多いのには驚かされる。おそらく、現在の世の中では、都市を形成する上でスタートアップは必要不可欠な要素であり、スタートアップが生み出す革新や文化こそが、都市の変化を牽引していくからだろう。

日本の大学を卒業後、ロンドンの建築専門学校で都市デザインを6年間学びました。帰国後、建築系専門出版社に就職しましたが、担当していた職務の関係で海外出張が多く、さまざまな人に出会う機会に恵まれました。そのような課程で、デジタル・ファブリケーションの分野に興味を持つようになったんです。

彼はデジタル・ファブリケーションのコンセプトを本格的に日本に持ち込みたいと考え、それまで務めていた出版社にも別れを告げ、単身シリコンバレーに乗り込んだ。

ベイエリアには d.school [2]もありますしね。 サンフランシスコ市内に行けば、TechShop というコワーキング・スペースがあります。まるでスポーツジムのように、会社帰りに立ち寄っては、皆、何かを作って行く。TechShop を日本に持ってきたかった。しかし、労働環境の違いもあり、日本にはまだそのようなカルチャーは育っていません。時期尚早、そこで違うアプローチを考えてみることにしたんです。

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Golden Gate Park BBQ with Drikin
CC BY-NC-SA 2.0: via Flickr by Fumi Yamazaki

デジタル・ファブリケーションの波を、どのようにしたら日本に持ち込めるかーー思案をこらしていると、彼は友人の誘いで、サンフランシスコ在住のブロガー・ドリキン氏が Golden Gate Park で開いたバーベキュー・パーティーに参加し、そこで Brandon Hill と出会うことになる。

今後、ユーザ・エクスペリエンスというものを追求していくと、ハードウェアとインターネットの融合は不可避だと思います。これはまさに、デジタル・ファブリケーションが向かう方向に通じますね。Brandon はそこに可能性を感じている。私は Brandon と意気投合し、btrax Japan のマネージャーの任を引き受けることになりました。

人の出会いとは不思議なものだ。これまでも、Goodpatch の土屋尚史氏など多くの人材を輩出してきた btrax だが、多田氏が同社の新しい風となって、日本の起業家文化にどんな影響を与えてくれるか楽しみだ。

6回目を迎える Japan Night、ユナイテッド航空が東京〜SF往復航空券を提供

sfjnight年に2度、卓越した日本のスタートアップをサンフランシスコに招き、彼らに投資家や起業家の前でのピッチの機会を与える SF Japan Night(btrax 主催)。今回が今までと違うのは、ゴールドスポンサーのユナイテッド航空が東京〜SF往復チケットを提供してくれる点だ。詳細は SF Japan Night のウェブサイトを参照してほしいが、10月5日の東京予選で優秀な成績を収めたスタートアップが、11月7日にサンフランシスコで開催される本選に出場するにあたり、一定量のチケットを拠出するそうだ。

海外には、興味深いスタートアップ・イベントがたくさんあるが、当然、交通費は自腹というケースが多く、台所事情が厳しいスタートアップはついつい二の足を踏んでしまう。少しではあるけれども、そのハードルが幾分下がることになる。締切が今月いっぱいまでに延長されているので、アメリカを含む海外展開に興味のあるスタートアップは、この機会に応募してみてほしい

SF Japan Night(以前は、SF New Tech Japan Night)への登壇をきっかけに、最も大きな成長を見せたのは翻訳スタートアップの Gengo だろう。2010年に 500 Startups らから75万ドル、シリーズAラウンドで Atomico と 500 Startups から525万ドル、今年はじめには複数投資家から 1,200万ドルをシードB資金調達している。このイベントから次なる Gengo が生まれるよう、今後登壇されるスタートアップの健闘を期待してやまない。


  1. 自社のオフィススペースの一部を他社に貸与する代わりに、相手のオフィスの一部を借りるしくみ。違う国で無料でオフィスを利用できるメリットがある。参考:SwapYourShop.com
  2. スタンフォード大学のデザインスクール「d.school(Institute of Design at Stanford)」。公開講座も開かれている。
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