韓国発スタートアップ向けPR動画制作サービスの500videos、11月に世界向け無料サービスを開始へ(インタビュー)

by beSUCCESS beSUCCESS on 2013.9.29

500startups の Christine Tsai(左)と 500videos の Ho Yang(右)
500startups の Christine Tsai(左)と 500videos の Ho Yang(右)

筆者は以前、モーショングラフィック動画の制作を志望していたことがある。そのとき、モーショングラフィック動画の作り方を習ったりもした。しかし、スタートアップが集まる場に行ってみると、よく耳にするのは「この動画は、いくらかけて作りましたか」という質問だ。以前、モーショングラフィックを志望していた立場から、この種の質問には敏感に反応した筆者は、これまでに二度PR動画についての記事を書いたが、その取材過程で 500videos の Ho Yang 代表を知ることになった。PR動画制作スタートアップの考えを直接聞ければ、PR動画の記事を書きながら抱いた「どんな映像がよいPR動画なのか」という疑問のヒントが得られると思ったからだ。

本稿は電話とメールで行われたインタビューをベースに、筆者が再構成したものである。

<あわせて参照されたい> スタートアップがサービス映像を作るべき理由ーーワンダー・グラフィクス代表小林秀年氏が語る「映像とユーザ体験」

自分が必要なものを、ビジネスにする

Ho Yang 氏は、「誰かが必要とするものより、自分が必要とするもの」が、何かをする上で強い動機付けになると言う。彼のこれまでの事業履歴を見ると、彼自身が必要としたものを、事業としていたことがわかる。これまでに、彼は不動産の写真を撮影する ImageYA というフランチャイズをチェ・ジェヒョク(최재혁)氏とともに運営し、AirBnB と契約・取引しながら決済に不便を感じた。

ファイル転送と同時に決済が完了するしくみの必要を感じた彼は、PaymentTab を作り、AirBnB の共同創業者である Joe Gebbia と Brian Chesky が最初の顧客になった。PaymentTab は、一言で言うと、ファイル転送と同時に決済が実行できるサービスだった。次第に多くのフリーランサーが使うことを期待して、PaymentTab のPRを始めた。そのとき、PR動画の必要を感じて、短いアニメーションを制作しようとアメリカ企業に連絡をとったが、金銭的にも時間的にも条件が合わなかった。結局、Ho Yang 氏は今回も問題を自ら自分で解決しようとし、ケイウォン芸術大学のチョン・ミンス(전민수)教授とともにPR動画を作った。それがまさに、500videos の始まりだ。

不要なものを捨てながら生きる男

人生のすべてにおいて、不要なものやムダなものがとにかく嫌いだという Ho Yang氏は、500videos のビジョンを「効率の追求」だと語った。過去1年間オフィスを持たずに 500videos を運営して来た彼は、PR動画を制作する上で、一度も顧客と事前に対面打合せをしたことがない。Dropbox や Skype があれば世界のどこでも仕事がができるので、オフィスがなくても仕事さえ効率よくできるのであれば、オフィスの所有は資金の浪費であり、顧客と対面で話すよりも、Eメールでやりとりした方が情報が整理されて正確だったからだという。

彼は自身の経験に照らして、経営者の役割の一つは「不要なものを最大限捨てること」だと話した。

サービスを作るとき、普通はいろいろな機能を盛り込みたいでしょうが、そのような欲求は抑えた方がいい。話をもう一歩進めて、既にあるサービスでも、捨てるべきものがないかを調べ、「もうこれ以上捨てるものがない」という状況になったとき、初めてそのサービスの特色が現われるでしょう。

彼の哲学はPR動画にも現れている。彼の考えるPR動画とは「メッセージを伝えるマーケティングツール」なので、「映像美よりも、伝達力が強く簡単に制作できることがポイント」なのだそうだ。500videos の動画を見れば、ストーリーの構成が問題提起で始まり、それが問題解決につながるという、メッセージを伝えようとしていることがわかる。

3つの確信

500videos はこの一年余り、市場テストのため、いくつかのテンプレートに限定し、割引価格($499)で注文から10日以内にPR動画を制作完成するサービスを提供してきた。Ho Yang 氏は、一年間で100社以上のスタートアップにPR動画を制作し、その経験から3つの確信を得たと言う。

  1. ユーザは文章よりも映像を見て、サービスが何かを理解したがる。
  2. そのような動画を作る場合、実写よりもアニメ(モーショングラフィック)の方が、ユーザの注意を引く上で効果的。
  3. 複数の条件を満たす動画を作る場合、ストーリー構成が難しくなるので、スクラッチで作るより完成サンプルから選んでもらう方が受け入れられやすい。

言い換えれば、動画を発注する人も、どんなストーリー展開で、どのように作ったらいいかもわかっていないことが多く、「この動画と同じような感じで…」と注文することが多い、ということだ。

レディメイド・プラットフォーム

そこで、500videos では、世界中の誰もが簡単にPR動画を作成できるプラットフォームを準備中だ。Ho Yang氏が目指す 500videos の目標は2つだ。世界で最も数多くのテンプレートを用意したPR動画のプラットフォームになること、そして、世界で最も簡単にPR動画が制作できるプラットフォームになることだ。

テンプレートは、発注者が選べるフレームワークであり、Ho Yang 氏の表現を借りれば、カップラーメンに例えられる。

カップラーメンに、キムチ味、牛肉味があるように、あらかじめ動画のフレームワークを用意しておくのです。そこにお湯を注いで麺をほぐすように、自社のサービス・メッセージ、ロゴ、音声をトッピングすればいいようにしておくのです。11月に始める 500videos のプラットフォームでは、ユーザ登録やログイン不要で、数百種類のテンプレートから一つを選び、簡単にHD品質のPR動画を無料で作れるサービスを提供します。究極的には、このように簡単に制作したPR動画を使い、YouTube などのメディアを通じて、PR活動が実現できるソリューションを目指しています。

より具体的に述べるなら、将来は YouTube に統合されることを目標にしているとし、Google の Adwords を例に挙げた。

Adwords は、バナーを制作できるテンプレート編集ツールを提供していますが、YouTube 広告ではビデオを簡単に制作できるツールが提供されていません。500videos はその足りない部分を補うことができると思っています。

プラットフォームとコンテンツ

500videos_screenshot

しかし、作るのが簡単ならば、つぶれるのも簡単なのがプラットフォーム・サービスだ。ユーザを呼べないプラットフォームは、お客の居ないデパートと同じで、お客を呼ぶためには、よい商品を陳列する必要がある。Ho Yang 氏は、打合せで会った AirBnB の共同創業者 Joe Gebbia と Brian Chesky から、プラットフォーム・ビジネスが必ず意識すべき、コンテンツに対するインスピレーションを得たと述べた。

AirBnB では創業期、部屋を提供してくれる賃貸主を急増させるのではなく、賃貸主を啓蒙しながらコミュニティを形成すべく、オフラインでの活動に注力していた。つまり、AirBnB はオンライン・プラットフォームなのだが、オフラインの活動とPRに注力し、良質のコンテンツ(良質の賃貸主)を集めることに邁進していたのだ。この姿勢が AirBnB の成功につながったと信じる Ho Yang 氏は、500videos でコンテンツの確保に力を注いでいる。

私たちも、最終的にはプラットフォームを目指しますが、当面は、コンテンツの制作会社として取り組むつもりです。

そう述べた Ho Yang 氏は現在、PR動画のテンプレート準備に集中していると明らかにした。

ユーザこそ我々のメンター

3年以上にわたり、毎日 TechCrunch や Mashable の記事を読み、スクラップしながらビジネスの流れを学んだという Ho Yang 氏は、「この2つのサイトこそ、私のメンターだ」と述べている。特に記事の下に書かれたコメント欄に、役に立つインサイトが含まれていると述べ、他のユーザにもコメント欄を必ず読むことを薦めた。

韓国とは違って、TechCrunch や Mashable のコメント欄には、「他にも似たサービスがある」とか「この機能が欠けている」など、ためらいなく叱責してくれる、実用的な批評が多いからだと言う。「健全な批評は成長を助ける」と信じる彼は、次のように語ってインタビューを締めくくった。

500videos にとって、ユーザこそ我々のメンターです。11月にベータサービスが始まれば、多くのユーザがいろんな比較をして、批評してくれればいいと思っています。


日本のアニメ「エヴァンゲリオン」には、シンクロ率という概念が出て来る。シンクロ率とは、パイロットとエヴァの間の精神疎通の程度を意味するが、シンクロ率が高ければ高いほど、パイロットはエヴァを自分の意思通りに操作することができる。この考えにならって、パイロットをCEOに、エヴァをサービスに例えるなら、シンクロ率が高ければ高いほど、そのサービスを成功に導ける可能性も高いと言えるはずだ。事実、成功したスタートアップを見てみると、創業者とサービスは非常に似ているという印象を受けることが多い。500videos の Ho Yang 氏も、インタビューを通じて、彼とサービスが非常にシンクロしているような印象を受けた。

一方、Ho Yang 氏は現在カナダに住んでおり、ケイウォン芸術大学のチョン・ミンス教授(ケイウォン芸術大学)、アン・ヘソン(안혜선)氏、チェ・ジェヒョク(최재혁)氏など、他の創業メンバーらと共に事業を進めている。500videos の創業にまつわる話は、過去記事「安くて簡単に素敵なビデオを作ることはできないだろうか? 500 Videos(韓国語)」で読むことができる。

【via BeSuccess】 @beSUCCESSdotcom

【原文】

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