7月16日に「ZOZOTOWN」運営のスタートトゥデイ傘下に入りを発表してから約2カ月、STORES.jpが新たな提携に動く。STORES.jpを運営するブラケットは9月6日、ヤフーが運営するサイト作成サービス「Yahoo!ジオシティーズ」と連携すると発表した。
連携の内容は特別プランの提供で、ジオシティーズユーザーはSTORES.jpの特別プランが適応され、登録商品数や撮影サービスなどの点数に通常のSTORES.jpユーザーよりも特典が得られるものとなっている。
平たく言えば、ジオシティーズ経由でのSTORES.jp利用促進、といったところだろうか。古くからのインターネットユーザーであれば「ジオシティーズ」の名前を聞いて懐かしさを感じた人もいると思う。
歴史を紐解けば、1996年に米ジオシティーズ社が開始した無料のサイトホスティングサービスを1999年に米ヤフーが買収、詳細は割愛するが、日本でも同様の展開でサービスはYahoo! Japanに統合されていった。
ちなみに米サービスは2009年に終了しているが、日本版サービスは現在400万人の利用ユーザーがいるそうだ。ちょっと意外と言えば失礼かもしれないが、それでも「なぜ今、ジオシティーズ」の感は否めない。そこでブラケット代表取締役の光本勇介氏にスタートトゥデイ連携後の戦略も含め、狙いを聞いてみた。
ジオシティーズユーザーが欲しかった「コマース機能」
SD:すっかりZOZOTOWNや周辺サービスとの連携がくると思ってたのですが、またどうしてヤフーだったんですか?
光本:実は今回、先方からお声掛け頂いたんです。最近はちょっと名前を聞かないようになっていたかもしれませんが、サイト開設数は400万にも到達しているんですね。さらに、連携の最大の理由は、このユーザーの方々からコマース機能のリクエストが非常に多かったということですね。
SD:確かに400万サイトすべては無理でも、5%がコマースを開設するだけで20万ストア拡大ですね。
光本:現在、約5万ストアを開設頂いているんですが、今回の連携でこの数を一気にジャンプさせる施策にできたらと思っています。
SD:もう5万ストアになっているんですね。
光本:ストア開設数は戦略上、重要な数字になるので詳細はお伝えできませんが、規模感的には順調に成長しています。引き続き手応えを感じていますよ。
ストア数拡大が重要KPI
SD:スタートトゥデイ子会社化を発表して約2カ月経過しました。バイアウトなどの後どうなるのかってあまり出てこなかったりするので、お話いただける範囲で経過など教えていただけますか。
光本:基盤がしっかりと固まりつつ、順調に全体の数値が健全に上がっていってるという感じです。今回のヤフーさんとの連携もこの一環ですし、同等の提携等も、年末に向けていくつか展開していけたらと考えています。
これから競合環境がより激化していくことが予想される中で、 事業的にも規模的にも、一気にジャンプするつもりですし、スタートトゥデイの強力な経営資源を活用した施策なども、年末に向けて何本かリリースをする予定です。
SD:準備に時間かかりますものね。
光本:ここ最近はこれまでに比べるとリリースのペースがスローになっていたと思うのですが、こういった施策などの準備をしていたのが原因ですので、これからまた攻めます。
SD:今後の展開はやはりストア数を伸ばすことが重要課題になるのでしょうか。
光本:そうですね。当面はとにかくストア数を重要KPIとしています。 規模感が出ることではじめてユーザーへ提供できる新しい付加価値などもあると考えており、 これが結果的に自分たちの強みとなり、競合との差別化にも繋がると考えてますね。
子会社化後の体制拡大について
SD:新しいオフィスに移転されましたが、体制は変わりましたか?
光本:数カ月前までは約5名ほどの規模の会社でしたが、 一気に20人以上に強化しまして、開発や事業、カスタマーサポートにオペレーション等、 すべての軸において幅広く対応できる体制が整いつつあります。
とくに開発に関しては大人数で開発できるようになったので、 アウトプットできる幅もスピードも一気にあがりましたね。
SD:そうそう。モバイル対応とかアプリとかの予定はどうですか。
光本:出そうと思えばいつでも出せるのですが、 サービスの内容やユーザーの利用形態も日々変わっているので、 それらを観察しながら検討をしているところです。
SD:今回は資金調達によるブーストというよりは、新たな資本力を後ろ盾に、既に事業が回っている範囲での事業計画・推進ということですよね。
光本:ご理解頂いている通りです。事業計画は戦略的な内容もあるので、具体的にお話できませんが、「1人にひとつのオンラインストアを持つ」というカルチャーや世界を作るという目標は変わっていません。
以前お話したように「ブログのオンラインストア版になりたい」という想いがあるので、ストア数もブログが存在するくらいの、数百万、数千万という単位を目指してますね。
SD:将来像として比較対象としている事業などはあるのですか?
光本:Squareはひとつの参考ですね。 彼らもまた「1人にひとつの決済端末」という感覚でアメリカで展開をしており、リリース後3年で数百万もの端末を普及させています。
この考え方は「1人にひとつのオンラインストア」という概念と類似していると考えていて、 彼らの普及スピードや数、また流通総額は参考にしながら、同等のスピードで成長していきたいと思っています。
SD:ありがとうございました。
ーーベンチマークしている相手にSquareの名前が出てくる点は興味深い。ストア開設数が10万、20万と増えた時、店舗の売上や販売商品内容などにどういう変化が起こるのだろうか。
従来のASPカートサービスと比較するとどういう違いがみえてくるのかも含め、機会があれば考察してみたい。
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