視力をクラウドソーシングして視覚障害者の助けになるアプリ「Lend an Eye」

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あるAndroidアプリによって、スマートフォンが視覚障害者の目の役割を果たそうとしている。マーケティングエージェンシーのGrey Singaporeが開発したLend an Eyeは2つのアプリからなり、1つが視覚障害者用で、もう1つがボランティア用だ。

ユーザは援助が必要になとき、音声かスクリーンのダブルタップでアプリを起動すると、数人のボランティアに同時に連絡がいく。最初にボランティア用アプリを通じて応答した人が、ユーザのスマートフォンカメラからのリアルタイム動画フィードとユーザの位置を知らせる埋め込み地図の両方を利用して、ユーザを案内することができるという仕組みだ。

技術的にはSkypeやFaceTimeといったビデオ通話アプリと差はない。Lend an Eyeの画期的な点は、アプリのデザインと利用プロセスにある。タッチと音声による素早い起動から、手が空いているボランティアへの自動転送まで、同アプリは視覚障害者のために最大限最適化されている。

開発者たちは同アプリのローンチ前に5人の視覚障害者とテストを行った。シニアアートディレクターのYing Zhi Deng氏が次のように語ってくれた。

「私たちのテストに参加した視覚障害者は皆、ミントを買ったり、支払いをしたり、小さな道を渡ったりといった単純なことでも他者に手伝ってもらう必要があり、単独では外出していませんでした。周りに誰も人がいなければ、彼らは待つしかないのです。このアプリは一人で外出して以前ならやろうともしなかったシンプルなことができるという自信を彼らに与えました。」

あらかじめプログラムされたルートを使う他のアプリとは違い、Lend an Eyeの使命はユーザをA地点からB地点へと移動させることだけではない。開発者たちは「視覚障害者が健常者と同じような選択」ができるようにしたいと考えている。

「Lend an Eye」は世界の3900万人もの視覚障害者を救えるか

WHOの統計によると、世界には3900万人もの視覚障害者がいる。同アプリの可能性は巨大だが、Lend an Eyeのモデルは世界の他の地域でも通用するだろうか?

もう1つの統計が支障となるかもしれない。すなわち、視覚障害者の90%は発展途上国で暮らしているということだ。このアプリは動画フィードの適切な動作のため、高速なネット環境に大きく依存している。したがって、シンガポール以外のインターネット通信速度やスマートフォン普及率が高くない地域にサービスを拡大するとなると問題になるかもしれない。

また、このサービスが機能するためには、コンスタントにボランティアの存在が必要となる。そう、同アプリによって視覚障害者の補助がさらにしやすくなるが、常にボランティアを確保し続けるにはより多くのインセンティブが必要だ。

Grey SingaporeのチームはCSRの先駆けとしてアプリを開発したが、マネタイズや資金調達は目指していない。昨年6月、同チームはカンヌで「Best Use of mobile Devices」部門でブロンズライオン賞を授与された。

この賞は同チームの革新的なビジョンを認めただけでなく、Lend an Eyeのように既存する技術の新しい利用法を見出すことができるなど、あらゆるベンチャーを勇気付けるものだ。視覚障害者ボランティアのためのLend an Eyeは現在、Play StoreからAndroid版をダウンロードできる。

【via SGE.io】 @SGEio

【原文】

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