ユーザドリブンで考えていく−−ユナイテッド手嶋氏・梶原氏が語る「CocoPPa急成長の過程と必要な経営判断」

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スマホアプリのヒットの裏には、それまでに積み重ねた経験や経営判断が必要だ。

ユナイテッド取締役兼執行役員で、スマートフォンメディアカンパニーカンパニー長の手嶋浩己氏と、メディアカンパニーCocoPPa事業部チーフプロデューサーの梶原彩菜氏がMOVIDA SCHOOLで語った、スマホの着せ替えアプリ「CocoPPa」急成長の過程と、成功するために必要な経営判断についてまとめた。

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スマホ市場にいち早く参入した

2010年頃、ユナイテッドに合併する前のスパイアでは、それまでのフィーチャーフォン中心のモバイル広告代理店事業から、スマホメディア事業へとメイン業態をシフトすることを試み、スマホアプリをいくつかリリースした。これが当時としてはヒットし、AppStoreで総合1位を獲得するタイトルも輩出した。

当時はソーシャルゲーム全盛だったが、スマホは確実に伸びると経営判断し、事業部化した。任天堂DSのスタート時には人気がなったことを思い出したのと、教育系ならばお金を払ってくれるユーザーもいるのではないかということで、有料の教育アプリに力を入れた。先にAppStoreで1位を取ったアプリで広告を導入していたが、売り上げがあまりあがらなかったので、有料アプリの課金モデルで進めた。開発の軸には、世の中では流行っているが、まだアプリになっていないものを狙った。

学びながら作っていく

4名の新卒を配属したスマホ事業部は、エンジニアがいなかったため若い人に学んでもらうためにまずは手を動かせと言い、学びながら作っていった。競合はあまりいなかったが、組織としては常に新しいものを作っていかなければいけないと考え、市場調査などの根拠ではなく、まずはやってみることを第一に様々なアプリ開発を進めてきた。

その結果、教育系で出したアプリもAppStoreで総合5位を獲得。他にもいくつかアプリを開発したが、ヒットする確率は4割近くと高かったため、アプリ開発に自信を持つことができた。

行動を変えることで、急速に学習することができる

本格的にアプリに力を入れるためには、まずはスマホについて熟知しなければいけない。そこで、ノボットの小林清剛氏などと頻繁に会い、スマホに詳しい人たちを紹介してもらい、業界について学習した。

何かを大きく進めるためには、まずは行動を変えなければいけない。そのためには、日々付き合う人の面子を変えることだ。自分の普段のネットワークを変えるだけで、景色は変わってくる。まだまだアプリ業界自体の歴史は浅かったため、3ヶ月没頭することができれば、すぐに必要な知識を得ることができた。

女性チームのみで開発したCocoPPa

有料の教育系アプリで総合5位を獲得したが、儲からないことを学習できた。そこで、有料アプリではなく継続的なメディアになる企画として、音楽系アプリのDiscodeerをチームで作った。この時、女性チームで別の企画を進めていた案があり、その一つが今のCocoPPaだ。CocoPPaは、女性チームの経験のために8ヶ月かけて開発させていたが、それまではDiscodeerがDeNAとの提携などが進むなど力を入れており、あまりCocoPPaにリソースを割くことはできなかった。

12年7月にひっそりとリリースしたCocoPPaは、日本語、英語、韓国語、簡体字の中国語に対応させていた。気がつくと13年1月頃にはマレーシアで注目され始め、そこから東南アジア圏へと広がっていった。始めからヒットを狙っていたわけではなかったため、ヒットの理由を明確に把握していなかったが、アジア圏での注目は日に日に増していった。

世界展開に方向転換

13年2月には、CocoPPaは欧州のユーザを増やしていった。事業部内ではあまり力を入れていなかったアプリのため、その時はリソースを投入するか判断しきれていなかった。翻訳も完璧とは言えず、時にサーバーがダウンするなど満足のいくサービスが提供できていたとは言い難いが、手持ちのリソースの中で懸命に対応していた。

ノルウェーやスウェーデンでAppStore1位を獲得してからは、CocoPPaを一気に世界に展開しようと大きな経営判断を行った。アメリカでは若年層の定番アプリとして浸透し、3月には世界で500万ダウンロードを突破した。

ネット業界とスマホ業界の乖離はある

500万ダウンロードを達成していたが、ネット業界でスマホアプリに詳しい人以外は、CocoPPaが世界で広がってもほとんで気付いていなかった。ネット業界と一括りにされているが、成長市場のスマートフォンネイティブアプリ、それも非ゲームについて執着心を持ってウォッチしている人は日本の中では一握りしかいないのではないか。結果、情報格差、事業機会に対して認識の差が生まれているのではと考え、これは自社にとって大きい競争優位になっているとそのタイミングで確信を深めた。800万ダウンロードを達成し、ようやく、ネット業界に認知されるよう方向づけしようと考えるようになった。そこで選んだ場所はIVS主催のLaunch Padであり、そこで2位を獲得して一気にユーザ数も伸び認知も高まり、7月末には1200万を超えるユーザ数となった。

アイデアは偶然の産物

CocoPPaのアイデア自体は、偶然の産物だ。元々はmixiで自分のプロフィールのコミュニティ一覧でアイコンをかわいく並べ、自分の趣味趣向の主張をしたいといった女性のニーズがあった。そうしたニーズに応えるものをiPhoneでできないかと考えた時に、技術的に実現できるという話を伺い、アイデアが実現レベルにまで昇華し、スマホの着せ替えコミュニティアプリが誕生した。

非言語のサービスだからこそ世界に広まる

スマホをかわいくするサービスが当時はほとんどなく、世界中でCocoPPaは広まった。主にInstagramやTumblr、YouTubeなどのソーシャルネットワーク上で認知されるようになった。特にスマホは、Instagramを通じてCocoPPaで作った画面を自慢するなどのコミュニケーションによって広がりが生まれた。

世界中で広まるためには、非言語で伝わることに意味がある。ビジュアルのみでサービスの価値が伝わり、ユーザ自身も使ってみて人に自慢したくなったり友だち経由でアプリを知ったりする。口コミを中心にサービスがバイラルしていくためには、誰でもひと目で分かるサービスの内容が大事だ。

ビジュアル重視で直感的な操作性を

ソーシャルネットワーク上では、ユーザ間で広めてくれるエバンジェリストが大事になってくる。そのため、ソーシャルメディア上でスムーズに投稿でき、さらに人に自慢したくなるようなデザインにするかがサービスの軸となる。壁紙やアプリをユーザ投稿型にしたのも、その一つだ。ユーザが自分でも作ってみようと投稿し始め、アイコンを投稿するクリエイターのネットワークがCocoPPa内で生まれていった。

ビジュアルで訴える面を強め、見た目で直感的に理解し利用できるインターフェースの改善を実施していくことで、誰でも簡単に利用できるサービスとなる。

ユーザドリブンで考えていく

1年後を見据えるのではなく、3ヶ月後半年後を目処に次を考える。論理ではなく、自分たちがマーケットに入り込み、自分たちがかわいいと思えるものや使いやすさを徹底的に追求していくことがサービスの基盤となる。ニーズに合ったものを提供し、ユーザ同士で作り上げていくものを運営側がサポートできる体制を作ることで、ユーザドリブンなサービスを作り上げていく。

いかに使いやすいサービスであるかを徹底的に考え、ユーザにとって居心地のよい場所を作ることが大事だ。

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