6ピクセルで4.8億円の改善に繋がったーービッグデータサイエンティストが語る「ビジネスへの活用」 #bdash

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ビッグデータはキーワードとして身近に感じられるようになりつつある。最近では選挙でのネット利用や、JR東日本によるSuicaのビッグデータ活用が議論を巻き起こしたことでその課題や有用性を考えた方も多いかもしれない。

では、実際の企業でビッグデータはどのように活用されているのだろうか。このセッションでは、Hapyrus共同創業者の藤川幸一氏、楽天執行役員の北川拓也、データセクション取締役会長の橋本大也氏、ディー・エヌ・エーでソーシャルゲーム関連のアナリティクス アーキテクトを務める濱田晃一氏らが実際の実例について語ったので、いくつかのトピックスにまとめる。

ビッグデータにはどういう価値があるのか

1:6ピクセルで4.8億円の改善

まずは実例だ。ビッグデータ関連では選挙の分析で政党やメディアに情報を提供をしていたのが最近のトピックスだという橋本氏は、自身の著書に関連してビッグデータ改善事例を紹介する。

例えばヤフーではトップページの検索窓の高さを膨大なA/Bテストで決定。22ピクセルから28ピクセルに「6ピクセル」だけかえたら、広告関連収入が0.64%、金額にして4.8億円の改善に繋がった。

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またOptimizely(オプティマイズリー)のデータを引き合いに、「A/Bテストを重ねると数パーセントのコンバージョン改善などが実現できる。年一回大きなリニューアルを実施するより、小さく確実な改善を重ねる方が年間で数十パーセントの改善に繋がる」(橋本氏)と細かな改善の重要性を語る。

2:パーソナライゼーションで10倍の継続率も

ソーシャルゲームもビッグデータの恩恵を受けやすい事業だ。濱田氏はビッグデータによるアルゴリズムをしっかりと組めば、インプレッションあたりのユーザー継続率などが「最大で10倍といった数値」で改善できると語る。

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「ユーザーに適したレコメンデーション、さらにそのレコメンデーションに対するリアクションをしっかりと把握する。クリックした先で見ただけなのか、インストールしたのか。このレコメンデーションに対するアクションを学習し、ユーザーにより適したゲームを選定し、パーソナライゼーションすることで数倍から10倍の改善が可能なアルゴリズムを構築できる」(濱田氏)。

3:データから興奮を演出することで数十パーセントの改善

前出の二人がA/Bテストやパーソナライゼーションといったアプローチの一方、楽天の北川氏はマーケティング寄りの考え方だ。

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北川氏の母親がスーパーのチラシにある「洗剤半額」という文言に動かされ、遠いスーパーで買物した挙げ句にタクシーで帰ってきた、というエピソードを紹介しつつ「これがお客さんの気持ち。金銭的な費用対効果を最大化するために買物をするんじゃない。楽しい気分でお買い物をしたい、そういう気持ちを最大化させる体験をデザインするためにデータを使う」と、”どこにお買い得感があるか”を探し出すことがポイントと語る。

「興奮して買物をする」というアプローチをデータから演出することで、特定の指標を数十パーセント改善したこともあるという。

ビッグデータ活用の不安

一方、ビッグデータ活用は個人情報に敏感なユーザーにとって関心事でもある。この点について、橋本氏は少し興味深い指摘をしていた。

「弁護士など、個人の深い情報にアクセスして最適な提案を実施している職業は沢山ある。個人情報を使ってランダムに送ってくるスパムのような情報は不快だが、これが完全に最適化されて送信されてくれば感動するかもしれない。レコメンデーションやデータサイエンティストがまだまだ未熟だから不安に繋がっている」(橋本氏)。

冒頭で触れたSuicaの個人情報活用も、精度の高い最適化が実現すれば不安よりも利便性が勝るようになるかもしれない。

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