マイクロソフト、NTTドコモ・ベンチャーズ、電通が考える、スタートアップとのビジネス連携 #bdash

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本稿は、B Dash Camp 2013 in 大阪の取材の一部だ。

近年、Morning Pitch や Creww の Ignition Night など、スタートアップと大企業を結びつけようという試みが散見されるようになった。CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)が営むインキュベーション・プログラムの多くは、コミュニティに還元するというCSRの側面に加え、メンタリングなどの機会を通じて、社内の人材をスタートアップ文化に触れさせ、ビジネス創造の空気をを取り込む、いう隠れた目的を持っている。

過不足のある要素を相互に補完できる大企業とスタートアップの関係は、今後なお一層活性化されるだろう。B Dash Camp in 大阪のこのセッションでは、大企業でスタートアップとの接点を持つ人々の話を聞くことができた。

  • 砂金信一郎氏 日本マイクロソフト株式会社 エマージングテクノロジー推進部 部長 エバンジェリスト
  • 三好大介氏 株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ Managing Director Investment & Business Development
  • 中嶋文彦氏 株式会社電通 コミュニケーション・デザイン・センター 次世代コミュニケーション開発部 部長

モデレータは、多摩大学大学院客員教授で、本荘事務所代表の本荘修二氏が務めた。

【電通】スタートアップの創造力と技術を組み合わせ、利用シーンを世の中に提起

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電通 中嶋文彦氏

中嶋氏によれば、電通はスタートアップとの協業に取り組む上で、アイデア、起業、技術の3つのフォーカスを持っている。Neurowear という取り組みの中では、Nekomimi や Mico などのプロダクトを開発した実績があり、今年のSXSWに出展した。現在は事業モデルを開発中だ。

電通は、他社と連携したサービスの開発にも積極的で、以下のようなサービスやプラットフォームを開発/提供している。

  • draffic … GIS会社のゼンリンデータコムとビッグデータによるサービスを開発しており、特定の時間帯にどれだけの人がどの地域にいるのかを視覚化。
  • Asoberu-T…ファッション小売の BEAMS との連携で、Tシャツを使った拡張現実感(AR)による、インタラクティブ・サービスを提供。<関連記事(英語)
  • SOCIAL_MARATHON…RFID でマラソンランナーの走行状態を自動収集し、ソーシャルメディアで拡散(リリース
  • Dentsu Science Jam…デジタルガレージとのジョイントベンチャー。最先端科学の研究成果をビジネス化するプラットフォーム。
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クリエイティブとテクノロジーから、どのようなショーケースを作れるかを考えるのが、我々のフォーカスだ。チームのメンバーは積極的に社外へ出て行って、スタートアップにアプローチするようにしている。

【NTTドコモ・ベンチャーズ】グループ企業500社への水先案内人

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NTTドコモ・ベンチャーズ 三好大介氏

三好氏は、NTTドコモ・ベンチャーズではキャピタルゲインを追求するものの、スタートアップには、NTTドコモだけでなく、NTTグループ全体のスタートアップ窓口と捉えてほしいと語った。

NTTグループのような大きな企業体では、ニーズに合った部門にアクセスする上で、どの部門にアクセスすればよいのかがわかりにくい。NTTドコモ・ベンチャーズでは、適切な部門の適切な人物に、スタートアップを紹介する橋渡しをする。それ以外にも、紹介した部門がスタートアップの持つテクノロジーを使って、どのように活用できるかも一緒に考える。

NTTドコモは、その会社の生い立ちゆえ、ビジネスの範囲が通信端末という概念に縛られ、新規事業を立ち上げるにはベンチャーよりも時間を要する。今後、スタートアップから多くの知見をもらい協業することで、新規ビジネスの動きを加速していきたいと考えている。

最近、当社の役員の間で話題のキーワードは〝ヘルスケア〟だ。医療とまで行くと手に負えないが、ヘルスケアのソリューションをスタートアップから持ち込んでもらえると、いろいろ検討できると思う。

海外のスタートアップからのアプローチも歓迎しているが、そのときは日本語の通訳も一緒につれてきてほしいとのことだ。

【マイクロソフト】Microsoft Ventures を設立し、スタートアップ支援を加速

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日本マイクロソフト 砂金信一郎氏

マイクロソフトでは、米国本社で7月に Microsoft Ventures が作られた。現在、日本でも Microsoft Ventures の開設を準備しており、BizSpark、コミュニティ、アクセラレータ、シードファンディングなどを提供する。500万円〜3,000万円のシードファンディングも実施する予定だ。

どのようなスタートアップが支援したいかとの問いに、砂金氏は最近知ったニュースを交え説明してくれた。

佐賀県で高校生にタブレット端末が支給されることになり、グーグル(Android Tablet)/Apple(iPad)/ マイクロソフト(Windows Tablet)は、互いに競り合ったのだが、最終的に Windows Tablet を採用してもらえた。おそらく、マイクロソフトは、紛失したデバイスのアカウントの無効化、クラス変えのときの権限変更などの点で、パートナーと組んでよいソリューションが提案できたからだと思う。しかし、問題なのは Windows Tablet はアプリが豊富でない点だ。したがって、Windows Tablet 向けにアプリを提供してくれるスタートアップは、積極的に支援したいと思っている。

マイクロソフトは国際企業なので、投資検討を依頼する資料は、英語で提出してもらっているのだそうだ。もちろん、事務的な記載に関しては、日本マイクロソフトで翻訳サポートが可能だが、事業を起こした動機やビジョンなど、創業意欲の核心に関わる部分は「下手でもいいので、創業者自らの言葉で、英語で書いてほしい」と、砂金氏は述べた。

大企業〜スタートアップの連携もパッションでやるもの

このパネルには、聴衆の中に居た、プロフェッショナル・コネクターの勝屋久氏も飛び入り参加した。彼は以前、IBM に在籍していた頃、グループウェアで競合関係にあったサイボウズと提携し、常務に怒られた経験があるという(IBM には、グループウェアの Lotus Notes があった)。しかし、サイボウズ経営者のパッションを信じて共に努力を続け、この提携を通じて IBM に数億円の売上をもたらすことができた。

モデレータの本荘氏は、登壇したパネルの3人を見て、「このような優秀な人達が、大企業のスタートアップ窓口となる立場に居るのはいいことだ」と賞賛すると、マイクロソフトの砂金氏は、それは大企業が以前と比べて「弱くなってきたからではないか」と自らの分析を述べた。

昔は優秀な人は、会社の中で儲かるところ(利益率の高い事業部門)にアサインされていた。スタートアップとやりとりするには、機敏に対応する能力を求められる。スタートアップ支援は、収益には大きく貢献しないが、将来のことを考えて、まだ体力のあるうちに、そういうアプローチをしておこうというのは、いい考えだと思う。Steve Ballmer(マイクロソフトCEO)はまもなく退任するが、彼は会社にいい置き土産をしていってくれたと思う。

砂金氏は最後に、今後アメリカなど世界の投資家から日本のスタートアップに多く投資してもらえるように、「日本のスタートアップはイケてる」というパッションを国内外に発信し続けてほしいと訴え、このセッションを締めくくった。


<情報開示> 筆者は、電通の一部のプロジェクトに関して、契約関係があります。

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