与えれた「材料」からしか、ゴールは見いだせない−−サンブリッジグローバルベンチャーズ平石氏が語る起業家が抱くべき思い

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起業家は、限られたリソースをもとに、自身の思いを形にしなければいけない。また、価値観や自身の目的を常に見直して新しい挑戦をすることが求められる。

サンブリッジグローバルベンチャーズ代表取締役社長の平石郁生氏は、八度の創業の中で、東証マザース上場やヤフージャパンへのEXITなどを経験した人物だ。現在は、シードマネーを中心とした投資事業を展開している。

同氏がMOVIDA SCHOOLで語った、起業家が抱くべき思いについてまとめた。

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まず、捨てる覚悟を持て

よく若手の起業家に相談されることがあるが、その時に言う最初の言葉は「まず、捨てろ」ということだ。新しい何かを得ようとするためには、何かを捨てないといけない。覚悟をもって決断をすることで、そこから新しいものが入ってくる。だからこそ、「躊躇せずに潔く捨てることだ」と言ってる。

自分自身、91年に創業してDTPビジネスをやっていたが、インターネットの時代が来る前に、それまで利益を上げていたDTPビジネスから徹底した(捨てた)。その後、インターネットの盛り上がりに呼応して事業を展開することができた。DTPを捨てたからこそ、身軽になり新しいチャンスを掴むことができた。目の前のチャンスを拾うためには大きな覚悟と決断が必要だが、それによって返ってくるリターンは大きい。

まずは、事業を定義せよ

事業において、「目標」はとても大事だ。ドラッカーは、「組織において事業の定義が必要だ」と語っている。さらに、仮に定義できたとしても、それを形にしなけば意味はない。定めた定義を具現化するために、事業を展開していくことが求められる。

事業の定義は陳腐化する

当初定めていた定義を達成してしまった瞬間、定義は陳腐化する。常に高みを目指し、新たな定義を作りなおす作業を行わないと、機能しなくなった定義にリソースを注ぎ続けることになる。「目的」や「目標」を達成した時は、お祝いをする時ではなく、定義を考えなおす時である。

「やらない」ことを決める

事業の定義のためには、劣後順位を決めないといけない。つまり、「やらない」ことを決める作業だ。事業は、限られたリソースをもとに効率的で生産的な活動に取り組まなければいけない。やらないことを決めることで、自ずと判断や意思決定の基準が見えてくる。優先順位を決めることは、誰でもできる。しかし、事業の定義のためには「やらない」ことを決め、意思決定を円滑にしなければいけない。

組織の使命(目的)を考えろ

組織は、その活動の使命に共感した人たちが集まる場でもある。人を集め、一つの方向性のもとに向かわせるためには、単純明快な使命が必要なのだ。

使命は、必ずしも野心的なものである必要はない。AT&Tは「すべての家庭と企業に電話を提供する」、マネックスは「新しい時代のお金の使い方を世の中に広めること(平石推測)」など様々だ。企業としての大きな方向性と何かあった時に立ち戻る原点を位置づけるために、意義ある使命を定めることだ。

チームで創業しろ

一人の能力はたかが知れている。チームでやらないとリソースは足らなくなるし、1人だとどうしても近視眼的になってしまう。時に衝突するくらいに自分と似ていないパートナーがいることで、分野や視点を越えたアプローチによって良いものが生まれる。会社を辞めて起業する人は、それぞれに自分なりの価値観や強烈なエゴを持った人たちであり、1つの目標を共有して突き進んでいくためには、大きなエネルギーが求められる。しかし、そうしたやりとりの過程を経たチームで事業を作っていかなければ、結果的に良いものは生まれない。

自分の価値観と合ったビジネスを作れ

世の中の方向性を読み、これはビジネスになると思ったら一気に突き進むのがスタートアップだ。しかし、そのチャンスとビジネスの形が自身の価値観とマッチしないと、調子が良い時はいいが、調子が悪くなった時に、踏ん張れないだろう。全身全霊で価値を見いだせるものでなければ、イノベーションは起きない。

与えれた「材料」からしか、ゴールは見いだせない

多くの成功した起業家は、創業当初から今の事業をしようと思っていたわけではない。目の前のことを地道にやり、そこから形になっていった人がほとんどだ。それが「Given Means & Given Goals」でいう「Given Means」の意味だ。目の前にある出来事に対して、どれだけ一生懸命に取り組むかが未来を作るのだ。

過去を振り返り、未来を見定めよ

自分のこれまでの過去を振り返ってみて、今までやってきたことに対してどれだけ意味を見いだせるだろうか。今の自分を作っているのは、過去の積み重ねでしかない。そして、今の自分が持ってる材料をもとに未来を作っていく。

どういう未来を作りたいかは、自分自身の経験と価値観によって大きく変わってくる。今を懸命に取り組むことが、未来へとつながっていく。

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