投資家と起業家の関係は興味深い。特にシード期の投資家と起業家は共同で経営にあたり、資金だけでない特別な関係を結ぶことが多い。そこにはどのようなやり取りや葛藤があるのだろうか。このインタビュー・シリーズでは、投資家と起業家のお二人に対談形式で「二人だから語れる」内情に迫る。
今回は日本の独立系インキュベーターの草分け的存在、サムライインキュベート(以下、サムライ)から代表取締役の榊原健太郎氏と、同インキュベーターの運営ファンド一期生で、ソーシャル翻訳サービス「Conyac」を運営するエニドア代表取締役の山田尚貴氏が対談する。本稿は前回の続き
エニドアの道のり
2009年2月:山田尚貴氏と小沼智博氏(旧姓菊池)エニドアを創業
2009年5月:ソーシャル翻訳サービスConyac誕生
2010年3月:榊原氏と出会い、サムライインキュベート一期生になる
2011年12月:ユナイテッドから資金調達
2013年2月:ビジネス向けサービス「ComyacforBusiness」開始
2013年10月:ベンチャーキャピタル3社から資金調達
「天使のサムライ」榊原氏との二人三脚
TB:二人の仕事はどんな感じで始まった?
山田:榊原さんとはじめにやったのが「KPI」を決めようってことでしたね。小沼と二人の頃はとりあえずユーザーを増やしていたんですけど、なんらか他の数値を目標にした方がいいよねってことになって。
榊原さんと一緒に毎週、その前の週にどうだったかを話し合って「じゃあ今週はこれをやろう」というのをチェックしてもらってました。
榊原:最初の頃って無料もやってましたよね。
山田:やってましたねー。半年やってみると完全な逆ざやで、使われれば使われるほど赤字になるという(笑。値段設計に苦労してました。
榊原:小沼さんが海外サービスをよく知ってたのでそういうのを教えてもらってました。
山田:そう、ほとんどが雑談(笑。結構そういう時間が大切だったりしたんですけどね。ずっと根詰めてやってるとその時が楽しみで。
榊原:癒し系でしたね。
山田:僕が一番キツかったのはバイトしながらの時でしたから、榊原さんは本当に天使みたいでしたよね。
TB:エンジェルだ(笑。
榊原:今でこそConyacって認知広がってますけど、当時はなかなか理解してもらえなかった。反省点としてはそこをもっと分かってもらいたかったなというのはありましたね。資金調達も苦労しましたし。
山田:ユナイテッド(当時はngigroup)決まるまではキツかったですね。1年ぐらいはクラウドソーシングっていう言葉もなかったし、いちいち海外の事例だして説明して。
榊原:さらに市況もそこまでではなかったですからね。当時はノボットでさえ厳しかったですよ。
TB:VCとの交渉は榊原さんがやってたんですか?
榊原:いや、僕は人間関係的なところをサポートしてましたね。山田さんの方が細かい資料を作られているので。ただ、今は会計士さんとかいるので僕らが入ってやってますね。
山田:らしいですよね。ずるい(笑。
榊原:当時、VCさんって投資家サイドが積極的に提案してくるのを嫌がるのかなと思ってたんですけど、最近はそうでもなさそうなんですよね。人によるらしいんですけど。
山田:ただユナイテッドに投資してもらってから1年間ぐらいは、方向性が結構曖昧になってしまって資金が全然使えない。ずっとコンシューマー向けにやってましたからね。
榊原:ビジネス向けに決断するまでは時間がかかりましたよね。その頃は月に1回ぐらいの間隔で会ってましたね。
山田:結局、足りてなかったのがデータ分析で、後回しにしてたのがよくなかったですね。ちゃんとデータとユーザーをみる。
サムライ一期生、海外へ行く
榊原:最近もシリコンバレーの方に行ってましたけど、山田さんが一番一緒に行きましたよね。
山田:いろいろ行きましたよね。
榊原:海外VCの方の評価も段々変わってきて、今だったら調達も出来る気がしてますよ。
山田:キヨさん(元ノボットの小林清剛氏)、榊原さん、それとうちで行ってましたね。いろいろ回るんだけど「何言ってるんだろう?」って顔されてキツかった(笑。
榊原:楽しかったですよね。
山田:試行錯誤しながら、VCとかインキュベーター以前に仲間って感じでしたもんね。
榊原:出席率高かったですよね。
山田:出席しないといけないような気がしてまして…(笑。
榊原:3年前はシリコンバレーも沢山ついてきてくれたんだけど、今年なんて誰も来なくなっちゃった。
山田:海外に行き続ける理由ってなんかあるんですか?
榊原:海外で成功するサービス作りたいんですよね。でもそうしようと思ったら現地のエンジェルと関係を構築するとか、そういうのが必要。例えばショーンパーカーと仲良くなるとかさ。
山田:よりによってショーンパーカーですか(笑。
榊原:でも、結構これまでの積み上げで「健太郎の紹介だったら話聞くよ」って感じにはなってきてますよ。さらに繋がり強化していこうかなと思ってます。
山田:そう考えるとサムライの第一期生は無茶してましたよね。いきなり海外行ったりとか。
榊原:今は海外無理だからまず日本からっていう人が多いですね。
山田:まあ、一番最初に行った時は正直何も考えてなかったですね。榊原さんが海外のVC回るぞ!っていうから「よし行きましょう」って(笑。それでダメダメ言われてヘコんで。うちのサービスなんか、英語圏でそもそも翻訳自体どうなの、必要あるの?とか言われたり。
ーー「サムライ」と山田氏は試行錯誤を繰り返しながら一歩一歩事業を作っていく。「サムライ」は次にどうするのか、二人のプライベートも語った最終回は明日公開です。
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