※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから。
数ヶ月前、THE BRIDGE では、AR(拡張現実感)アプリの Yesterscape を作った、京都のスタートアップ QOOQ を取り上げた。そのとき、SF作家の William Gibson がその記事のリンクをリツイートしてくれたので、THE BRIDGE へのトラフィックが劇的に跳ね上がったのを覚えている。最近、Yesterscape の開発者で、Hide Nu の名前で知られる QOOQ の CEO にインタビューする機会を得た。QOOQ の京都オフィスでのインタビューで、彼は William Gibson の著作をすべて読んだ熱烈なファンであると話し、本棚から一冊取り出して私に見せてくれた。
詳しくない読者のために説明しておくと、Yesterscape を使うと、写真を撮影し特定の場所に仮想的にそれを保存することができる。再びその撮影した場所に戻れば、スマートフォンを使って先ほど記録した内容を再現することができる。Yesterscape は今月初めダウンロード数が10万件を超え、現在も開発と改善が続けられている。最近追加された機能は、近隣で知り合いが写真を投稿するとノーティフィケーションが届く機能、そして、他のユーザに自分の写真を AirDrop や LINE でも見てもらえる機能だ。今後、マーカーを必要としない AR を実現したいと考えている。[1]
Hide Nu は、このサービスを日本国外でもプロモートする計画があり、来年の SXSW(サウスバイサウスウエスト)でのお披露目を目指していると語った。
メキシコ生まれの同社 CTO Oscar Peredo と会うこともできた。彼は熱狂的な個性の持ち主で、日本が大好きで、素晴らしい開発スキルを持つ。彼は現在、全く新しいプロダクトを作ろうとしていると語った。
全く、これまでにやったことのないモノを作ろうと思っている。我々は、日常生活に便利なモノ、人が使って楽しめるモノを作ることに特化している。皆を驚かしたいんだ。
本稿の冒頭、私は Yesterscape のアイデアのファンであると書いたが、彼らのビジネスの可能性については懐疑的だった。しかし、Hide Nu と話した後、Yesterscape は我々の将来に必要不可欠な存在に思えてきた。従来からあるデジタルカメラに彼らの技術が採用されれば、WiFi 接続ができるコンパクトカメラやデジタル一眼レフは、Yesterscape のようなことが簡単にできるようになる。カメラに「Yesterscape スイッチ」のようなものをつけるのが理想的だが、ウェブへのソーシャルシェア機能などの方がより現実的かもしれない。
個人的には、私はこのプロジェクトを非常に気に入っている。高齢者が増えつつある日本において、このプロジェクトを実現しようとしている点については特にだ。高齢者が亡くなり、彼らの記憶が失われることは、ある種の文化危機と考えることもできる。政府がこのようなプロジェクトを率先してスポンサードし、高齢者の記憶を Yesterscape に蓄積すべきだと、私は真剣に考えている。
- 従来からある AR で見られる白黒の模様に代えて、マーカーが不要な AR では、我々の身の回りにあるモノを捕捉対象として用いる。 ↩
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