国内で500万ダウンロードを突破したスマートエデュケーションが、知育アプリの新ブランドで10倍規模の海外市場に挑む

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130605_smarteducation_184x138知育アプリの企画、開発、販売を手がけるスタートアップ、スマートエデュケーションがこれまでにリリースしてきたアプリの累計ダウンロード数が11月17日に500万ダウンロードを突破した

10月8日に450万ダウンロードを突破して、1ヶ月で50万ダウンロードを突破するなど、大きな伸びを見せた。500万ダウンロードという数字は、2011年に同社初の知育アプリとなる「おやこでリズムえほん」をリリースして以来、約2年での達成となる。

スマートエデュケーションは、500万ダウンロード達成に合わせ、以前から述べていた海外展開を本格化させる。同社は全世界展開を念頭においた知育アプリの新ブランド「Gocco(ゴッコ)」を立ち上げ、11月21日には第一作目となる「Gocco Zoo/Goccoどうぶつえん」をリリースした。同アプリは北米を中心に全世界のApp Storeにて配信される。

今回、新ブランド「Gocco(ゴッコ)」の立ち上げにあたり、スマートエデュケーション代表取締役の池谷大吾氏と新規ブランドの担当者である太田垣慶氏に話を伺った。

子ども向けのモノづくりを

新ブランドの「Gocco(ゴッコ)」を担当している太田垣氏は、2006年にDeNAに入社し、2009年からプロジェクトのリーダーとしてソーシャルゲーム事業を立ち上げた人物。2011年からは、サンフランシスコを始めとした世界各地の拠点にてProducer / Game Design Advisorを務めた後、今年の5月にスマートエデュケーションに入社した。

太田垣氏はサンフランシスコ時代、子どものいる同僚の家に遊びに行くことがしばしばあった。元々子ども好きだったこともあって、次第に30代相手のモノづくりではなく、子ども相手のモノづくりがしたいと考えるようになったという。

子ども向けのアプリについてぼんやりと考えていて、色々な選択肢があったのですが、一番優先したかったのは早く作ること。池谷とは元々知り合いだったので、一度話をし、自分のやりたいことが実現できそうだったのでジョインしました。

海外マーケットの大きさ

池谷氏は海外と日本の市場を比較して、このように語った。

私たちは日本の知育アプリ市場においてナンバーワンのシェアを持っていますが、世界における教育の市場の中で日本が持つシェアは5%ほど。ナンバーワンといっても5%の中だけなのです。グローバルにはさらに上のプレイヤーがおり、AppAnnieのデータなども見ていると、日本市場の伸びよりも世界市場の伸びのほうが大きい。

私たちがずっとウォッチしているスウェーデンのToca Bocaは5000万ダウンロードを突破した、というリリースを出していました。月の売上も私たちが1500万〜2000万なのに対し、Toca Bocaはその10倍ほどの1.5億から2億に達しています。

市場の差がそのまま現れているのですが、まだそれほど寡占化が進んでいるわけでもないですし、コンテンツも穴だらけという状況。いくらでも狙うことができる市場だと考え、日本国内では質の高いアプリ、月額課金制、NHKなど有力コンテンツとの提携を通じてサービスを提供しつつ、世界で大きい戦いに出ていこうと考えています。

海外に打って出るにあたって、プロダクトが必要になる。そのプロダクトが今回11月21日にリリースしたばかりの「Gocco(ゴッコ)」シリーズのアプリだ。

同アプリを担当する太田垣氏は、

DeNA時代にいろんなスタジオを世界中に作りました。その時、細部にこだわってモノづくりをする日本人の強さを海外で感じることができました。日本人の強さはどこでも通じると感じましたが、その強さを十分に発信できていないことも同時に感じたので、Gocco(ゴッコ)では日本人であるということをきちんと発信していきたいと考えています。

と、新ブランドに込める想いを語ってくれた。

海外向けブランド「Gocco(ゴッコ)」のアプリ

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海外向けのブランド名となった「Gocco(ゴッコ)」の由来について、太田垣氏は以下のように語る。

ブランド名もいろんなアイデアがあったのですが、ごっこ遊びの「ごっこ」になりました。響きがいい、印象に残るものにしたいと考え、サンフランシスコの知人にもヒアリングしたり、たまたまスペインに同名の子ども服メーカーもあったことから、「Gocco(ゴッコ)」に。USでもトレードマークの申請をしています。

一番最初にリリースしたアプリは、「Gocco ZOO」。動物園をテーマにしたお絵かきアプリだ。フリーミアムモデルで提供されるこのアプリは、まず動物を選択する。お世話ルームと呼ばれる最初の部屋では、動物に餌をあげ、餌をあげると動物の色が変化する。実際には存在しないような色に変化したりもするのだが、これは太田垣氏が知人から、最近の子どもたちは「ゾウの絵を描いて」と言われるとみんなねずみ色で色を塗る、話を聞いたことから発想したそうだ。

なんでもありなんだ、という認識を子どもにしてもらい、次の部屋へと移動してもらい、そこでは自由に動物に色を塗ることができる。ツールをタップし、自由にスクラッチするだけで色を塗ることができるようになっており、これによって子どもたちには自分も上手に色を塗ることができるという自信を持ってほしいと考えているという。

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別の画面に移動すると色を塗り終えた絵を撮影する機能が用意されている。ソーシャルメディアなどでシェアする機能はないが、ポラロイドのように端末に保存できるので、実際に友達に会ったときに見せたり、親が自分の友人に見せたりすることができる。

動物の種類や色を塗る際のツールなどを増やすときはアプリ内で購入することになる。このとき、子どもが間違って購入してしまうことがないように、購入のボタンを3秒間長押ししなくてはならないようにしているなどの対策を施している。

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iOS7から新しくキッズカテゴリが新設され、そこにアプライしています。Appleもキッズカテゴリに力を入れているのですが、当然、課金やプライバシーポリシーをしっかり明記するなど、審査のポイントがあります。今回私たちはそれもクリアしています。

と太田垣氏は語る。彼が同アプリで目指したのはテキストレスな世界。同アプリにはテキストが一切ない。

開発当初よりUIが非常に重要だと考えていて、まずはこうしたら迷わず操作してくれるだろうと想定した状態でアプリを設計しました。途中、子どもたちに実際に遊んでもらって、どこで躓くのか、どこはスムーズに操作できるのかを観察し、ブラッシュアップしていきました。

左右の画面移動が可能なことに子どもたちが気づくかどうかが課題の1つだったが、なかなか気づかなかったため、一定時間ごとに木が動くようにした。そうすることで、子どもが木が気になってタップすると画面が移動し、木を触ると画面が遷移することに子どもに気づいてもらえるように改良した、というエピソードも。

一度子どもが使いやすいインターフェースにできれば、国が変わってもインターフェースの違いはそれほど大きなものではないという。それよりも、海外の子どもたちに向けてアプリを開発する際に考えなくては「タブレットの操作にどれくらい慣れているのか」と「絵のテイスト」の2つだと太田垣氏は語る。絵のテイストは途中何度かアメリカの友人にヒアリングをし、改良を重ねながら「Gocco ZOO」は開発された。

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「Gocco ZOO」以外にも、スマートエデュケーションは「Gocco Doodle(日本タイトル:らくがキッズ!)」を開発しており、今月末に公開を予定しているアプリもある。このアプリでは、子どもが素材をもとに絵を描き、その絵が動いたり、絵を描いた順番を見ることができるようになっている。

描いた絵はインターネットを通じて公開することができ、世界中の子どもたちがどんな絵を描いたのか閲覧することが可能になっている。これは幼稚園や保育園などで後ろの壁にクラスの子どもたちが描いた絵を見ることができるようになっているようなイメージだ。

この他にも、「Gocco(ゴッコ)」シリーズでは医者や消防士などをテーマにしたアプリのリリースを予定している。

世の中のネタを題材に、子どもに疑似体験をしてもらいたいと考えています。遊びを通じて何かを体験し、クリエイティブに表現をしてもらいたいですね。

と太田垣氏は語る。

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四半期に1、2本のリリースペース

「Gocco(ゴッコ)」は、英語圏をカバーして提供していく。アメリカのオーディエンスの反応を気にしつつ、コンスタントにアプリをリリースしていく予定だ。Gocco Zooは月に50万は狙えるのでは、とスマートエデュケーションは考えている。

この数字目標については上振れもあると池谷氏は考えている。

最初、日本で「おやこでリズムえほん」をリリースしたときも、想定以上のダウンロード数を記録しました。また、継続的に新しいアプリをリリースしていくことで相乗効果を生み出すことができればさらにダウンロード数を伸ばすことができます。日本ではこの手法でノンプロモーションで数字を伸ばすことができましたし、Toca Bocaも同様の手法を実施しているためん、同じような生態系ができると思っています。

四半期に2本、月に1本くらい新たなアプリをリリースできるようになれば、サブスクリプション型のモデルも視野に入れることができると考えています。現在はAppleがゲームに関してサブスクリプション型を認めていないため現段階では構造上はできないのですが、Gocco(ゴッコ)というブランドが確立されていけば、リーズナブルなモデルになると考えています。

国内で成果を出しているサブスクリプション型や、「こどもモード」のような入り口を抑えるプラットフォームの構築なども将来的には考えていると太田垣氏は語ってくれた。

知育はシリコンバレーでも加熱しているワード。だが、そこからもまだグローバルに活躍するプレイヤーは出てきていない。日本を見ても同様だ。「知育のリーディングプレイヤーとして海外へ」、スマートエデュケーションの挑戦は次のステージに入った。

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