B2Bと教育にクラウドソーシングーー2014年を占う、注目のスタートアップ18社と6つのテーマ+α(3/3)

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2013.12.23

2013年のまとめコラムもこれで最後。エンタープライズ方面と教育、それに私の注目する二つのカテゴリだ。(前々回前回はこちら)

ラウンド6:エンタープライズ

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企業向けのビジネスでスタートアップする場合、ここ2,3年で最も注目が集まったのはやはり広告周りだろう。アトランティスやノボットといったスタートアップたちがスマートフォンシフトの波を掴み、イグジットを果たしてくれたおかげで、後続の投資活動に弾みがついたことはよく知られている。ノボットを輩出したサムライインキュベートはこれをきっかけにSSIを立ち上げている。

一方で、アドテク以外のビジネス向けサービスも徐々にアピール度を増している。人材系ではWantedlyが順調に成長して、新しいオフィスへの移転、拡大を続けているようだし、社内コミュニケーションツールのTalknoteも、堅実に数字を積み重ね、公開3年目で1万社の獲得に成功した。

従来、セキュリティ的に安心だと思われてきたイントラネットの分野を、「クラウド」というワードとともにリプレイスして成長していく様子は時代のシフトチェンジを感じさせてくれる。会計などの分野もクラウドに移行していることを考えると、今後、企業内で提供されていたサービスはどんどん外部に流れていく可能性がある。

またそういった視点でPlanBCDをみると興味深い。カイゼンの提供するグロースサービスは、サービスの作り込みや使い勝手の素晴らしさもありながら、クラウドソーシングの概念を取り入れて、グロースハッカーの外部発注を可能にしていることに注目すべきだ。

クラウドを使う、というのは決してサーバーサイドサービスを活用するということだけではない。人的なリソースもクラウド化し、使いたい時に使いたい分だけ活用するというリソース活用の概念そのものを変えると捉える方が適当だろう。

ラウンド7:教育

今回、Japan Startup Awardのノミネートに際して「同一テーマで数社並ぶ」という視点があった。そういう意味で、教育分野の選出は難しかったように思う。

今年、この分野で頑張ったスタートアップはやはりSchooだ。私もCNET Japanの岩本記者と一緒にこのテーマで出演させて頂いた。

オンライン教育は国土の広い北米の地理的問題や各州での教育格差から発達した背景があり、年代別にK12(初等教育)、Higher Education(大学以上の高等教育)、その前後にプレスクール、社会人教育の分類がよく知られている。とくにCourseraやedeX、UdacityといったMOOCの代表格といわれる高等教育は社会的意義も手伝って世界的に注目されている。教育関連の対北米比較はこの記事にもまとめている

一方で日本は地理的には国土も狭く、遠隔地教育のニーズが薄い。さらに学習指導要領も完備されており、地域間の教育格差もほぼ存在していない。

結果的にKDDIとQuipperが始めたK-12の「GAKUMO」や、最近になってDeNAが開始したアプリゼミ、リクルートの提供する受験勉強特化の「受験サプリ」など大手(一部で+スタートアップ)の取組みは散見されるものの、国内のオンライン教育ビジネスは唯一といっていいほどの英語コンプレックスを突いたSkype英会話が主戦場になっている。

つまり、Schooが置かれる環境というのは、決して楽な状況じゃないということだ。教育格差の是正という「シンプルかつマスト」のニーズが薄い中、広大な社会人学習の海でどのようなニーズを掴むのか。ここしばらくはスタートアップ向けのコンテンツを用意していたが、ニッチすぎるのは間違いない。ではこのニッチを積み上げるとして、人間の学習範囲は当然広い。どこまでカバーするのか。

もちろんまだ答えは出ていないが、過去何度かスクー代表取締役の森健志郎氏に何度かインタビューしているので、そこに何かヒントがあるかもしれない。興味ある方はそれも合わせてご覧頂きたい。

番外編:クラウドソーシングと「クラウド化する」リアルビジネス

2013年のまとめもこれで最後、残念ながら今回ノミネートには至らなかったが、私個人が注目している分野を二つご紹介したい。クラウドソーシングと「クラウド化する」リアルビジネスだ。

ランサーズとクラウドワークスというタイプの違うプラットフォーム型の2社と、MUGENUPなどの特化型クラウドソーシング各社にとって、2013年は躍進の年だっただろう。彼らが取り組んでいるのは、決して外注の価格破壊でも内職の量産でもなく、この多様化する働き方、生き方に新しい選択肢を提供しようとする活動と捉えた方がいいかもしれない。

参考インタビュー:1万人がクラウドソーシングで”食える”世界に立ちはだかる「見えない壁」ーーランサーズ秋好氏に聞く #IVS
参考インタビュー:「新しい働き方」はバブルか未来かーー11億円を調達したクラウドワークス吉田氏に聞く(前半)

注目しているポイントはまず2大プラットフォームとなったランサーズとクラウドワークスの動向だ。微妙にスタンスが異なり、完全なオープン指向を目指すクラウドワークスと、ある程度のルール、秩序を提供しようとしているランサーズの違いは興味深い。例えば、ランサーズが最近提供を開始したチームワークの機能提供は、同社代表取締役の秋好陽介氏への取材時によく話題に挙っていた機能のひとつだった。

ランサーズ代表取締役の秋好氏

クラウドソーシングで最も困るのが「なんでもいいからお願い」といった漠然としたオーダーだ。ここにはディレクションという機能が必要で、その壁を積極的に取っていったのがMUGENUPの方法だった。大量かつ全国に存在する絵師達を集中的に管理する方法は分かりやすいが、その反面、プラットフォームの良さが失われてスケール感に限界がみえてしまう。

オープンかコントロールか。国内で受け入れられるのはどちらになるのだろうか。

なお、海外ではこちらも2大プラットフォームだったoDESKとElanceが合併するという大きな動きがあったばかりで、この分野は2014年も引き続き激しい成長が期待されている。

「クラウド化する」リアルビジネス

もうひとつ番外編で注目しているのがこのリアルビジネスのクラウド化だ。以前にもいくつかの記事まとめて考察してみたりしている。

私がこの分野に注目する理由はひとつ、読者の関心が高いからだ。残念ながらこの分野はどうしても地味で、技術的な革新要素というよりは、既存ビジネスの古い商習慣、腰が重く、問題を先送りしすぎた老人たちとの交渉に時間が費やされることが多い。彼らにとってネットは理解不能で面倒なもの、場合によっては食い扶持を減らす「敵」なのだ。

だからこそ、若い力が丁寧にその業界の中に入り、インターネットによって効率化を果たす姿というのは、見ていて気持ちがいいのかもしれない。

また、ビジネスモデルの分かりやすさというのもあると思う。工場や人材など、現実的な「リソース」をオンライン上で仮想的なひとつのリソースに仕立て、「集客と管理」を効率化する。お弁当も宅配ラーメンも印刷もクリーニングも教室も全て類似のコンセプトに基づいている。つまり、まだまだ他のテーマがあるかもしれないというビジネスチャンスの匂いに惹かれている人が多いのだと思う。

そういう意味で、この分野は2014年も多くアイデアが出てくるのではないだろうか。期待したい。

さて、いかがだっただろうか。ここ数年は投資状況もどんどん良くなり、ここ数カ月では数年前のイグジットのような金額規模で資金調達も実施されるようになってきた。また、イグジットした起業家がエンジェルとなり、そのエンジェルがまた起業する、そういった人材の循環も起こりつつある。業界にひとつの「流れ」が生まれているのは多くの人たちが感じていることだろう。

チャンスは多いのだ。

また新たな年に私たちを大いに驚かしてくれるスタートアップとの出会いを楽しみにしたいと思う。

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