Bio3D、3Dプリンティングで身体パーツの安価で高品質な処方薬の実現を目指す

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Bio3D Technologiesの共同設立者であるMingwei Fan氏が今年のStartup Arenaコンペにおいてプレゼンを行った。同スタートアップが製造しているバイオ3Dプリンターによって臨床試験のコストが大幅に削減され、高品質の医薬品を迅速かつ安価に作れるようになると、Fan氏は考えている。(ピッチのビデオはこの記事で見ることができる。)

Fan氏のバイオ3Dプリンターは産業仕様の3Dプリンターと精密な研究機器をかけ合わせたものだ。同社初の市販品となるこの製品は、細胞やその他のバイオ素材、さらにはプラスチックまでもがミクロン単位で配置され、プリントされる。世界一手先が器用な人でもこれには敵わない。

Fan氏はバイオオタクで、結合によってより複雑な生命体の元となる細胞と呼ばれるミクロ生命体に特に夢中になっている。彼は細胞をまるで人間であるかのように扱い(Tech in Asiaの1対1のインタビューで彼は「細胞はペトリ皿の中で摂食と排便を同時に行います。」と述べた。)、また、バイオ3Dプリンターの潜在的効果を知る上で細胞が結合していく仕組みを理解することがいかに重要か説明している。

細胞が互いに作用するにはある仕組みで配列されていく必要があります。いったん配列されれば、後は自然の流れにまかせればよいのです。

あれ程までに正確でかつ人工的な方法による細胞配列は、バイオ3Dプリンターが登場するまでは前例がなかった。

細胞ごとに行っている医薬品の研究方法の見直し

Fan氏は、破綻してしまった医薬品開発プロセスとバイオ3Dプリンティングがいかに現状刷新に向いているかについて長々と説明した。一般的なプロジェクトでは研究には8~20年かかることもあり、研究は医薬品テストから始まり、細胞、動物、そして最後に人間による臨床試験まで、莫大な量の試験項目を重ねていくことになる。

もし研究がある時点で失敗したら、科学者たちが何年も研究室で費やしてきた努力と莫大な費用が無駄になってしまう。どのように大変で骨の折れるような試験項目かというと、何千もの化学物質についてそれぞれの濃度、投与量、投与法について調べる必要がある。

動物実験の段階は特に厄介で経費もかかる。例えばある化学物質の効果を調べるために、試験薬をヒヒの肝臓に注射したりもする。ヒヒに何も病的な影響が見られなければ、科学という名の下にヒヒが安楽死させられ、研究のために肝臓が摘出される。

バイオ3Dプリンターを用いれば、従来の細胞試験や動物実験への依存率を減らし、劇的に時間とコストの節約が可能になるのだ。

2次元平面とは対照的に3次元的に細胞を配置することによってヒトの身体をより正確に模することができ、それによって正確なデータが得られるようになる。1つの合成物が2つ以上の細胞に適用され、医薬品開発のプロセスが劇的に簡素化される。

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バイオ3Dプリンターで最終的には全ての臓器をプリントできるようになれば、動物に合成物を注射したり、解剖することなくプリントされた臓器を用いることが可能になるだろう。

「キラーアプリ」となり得るこのバイオ3Dプリンターを使って、細胞レベルで繋がった細胞の宝庫からなるヒト生体の小宇宙をクレジットカードサイズで作製できるようになる可能性も出てくるだろう。このキットに化学物質を注入すれば様々なタイプの細胞に対する作用を調べることができるようになる。

ビジネスモデル

Bio3D初の商業モデルは血管細胞だが、すべての臓器をプリントして業界を驚かせるようになるにはまだ数年はかかるだろう。同プリンターはアフターサービス付きで1台数十万米ドルで販売されている。Fan氏は来年5台を販売したいと考えている。同社はすでに潜在的な顧客との販売交渉をしており、研究機関、大学、製薬会社といった組織が同プリンターに興味を持っているようだ。

これらのジェットブラック装置を販売する他に、Fan氏はヒト組織を大量生産し、臓器培養の手間を省きたい研究施設への販売にも乗り出したい意向だ。Fan氏のスタートアップは現在自己資金で運営されている。設立者たちはまだ自身への給料を払えていないので投資家探しをしているところだ。

審査員たちは、どのようにBio3Dが競合者たちとの差別化を図り、市場を獲得できるかについて疑問を呈した。K-Cube VenturesのJimmy Rim氏は、3Dプリンティング業者がこの技術を簡単にコピーできるか尋ねた。それに対してFan氏は、生きた細胞のプリンティングはプラスチックを印刷するのとは全く異なると返答した。細胞をプリントするのに必要な精密さもスケールが非常に異なるという。

Rakuten VenturesのSaemin Ahn氏からの知的所有権に該当するのは何かとの質問に対し、Fan氏はハードウェアとソフトウェアの組み合わせを用いたヒト細胞の精密な構築に関して、特許を申請中であると明らかにした。このプロセスは生物学の範囲外にも申請が及ぶ可能性もあるという。

一方、Khailee Ng氏はもっと資金が潤沢な競合相手にBio3Dが勝てるのかどうか疑問を呈した。Fan氏は

「当社のビジネスモデルは、研究者のカスタムソリューションを構築する点においてユニークです。細胞や臓器に特化しているアメリカやドイツの競合とは異なり、Bio3Dは他のバイオマテリアルをもプリントすることができるため、バクテリアとヒト細胞間の相互作用の研究をする研究室にも対応できるのです。」

と強調した。

以上が11月21日から22日にかけて開催されたStartup Asia Jakarta 2013のレポートの一部だ。Startup Arenaの他のピッチはこちらから。Twitterアカウント@TechinAsiaと私たちのFacebookページからフォローができる。

【原文】

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