「新しい働き方」はバブルか未来かーー11億円を調達したクラウドワークス吉田氏に聞く(後半)

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大型の資金調達を発表したクラウドワークス。代表取締役の吉田浩一郎氏へのインタビュー後半では、日本でのクラウドソーシング成立に必要なポイントと、これまでに経営経験のある同氏に、急成長するスタートアップの「成長痛」について聞くことにしよう。

日本でオープンプラットフォームは通用するのか

ーー日本で完全なC2C(もしくはB2C)というワークスタイルを確立するためには、いくつか乗り越えるべき壁があると感じています。吉田さんが考えるポイントってどこにありますか。

「やはり個人が本当に独立した存在になれるかどうかじゃないでしょうか。そもそも10年ほど前に成立したクラウドソーシングという働き方は、個人が責任をもって「契約する」文化が背景にあります。発注者となる側も成熟が必要で、企業ってこれまであまり考えることなく発注ってできていたんですよ。

営業マンが訪問してきてその無駄を許容できる時代でもあったわけです。でもだんだんそのコスト感では(収支が)合わなくなりつつあるのが現実です。企業内でも担当者レベルではクラウドソーシングへの関心はあるんですよ」。

ーー企業がリソースの選択を間違えると淘汰の道が待っていると。今の話では発注者側の意識を変えなければ危機を乗り越えられないという視点でしたが、受注側はどういう意識の変化が必要ですか。

「会社と違って自己責任ということを意識しなければならないでしょうね。とりあえず請けておいたはいいけれど『できません』ではやはりダメです。記事作成でも最初は5000円のものから始めて、1万円、2万円とステップアップしてく方もいらっしゃいます。そうやって実績を積み上げた方は毎日見積り依頼が届いていますね」。

まあこのあたりが劇的にひっくり返ることは難しそうだ。一方で話からもわかるようにこのご時世、コストメリットから企業側も正社員、派遣、外注に次ぐ「第4のリソース」としてクラウドソーシングを活用する可能性は十分にある。ではどうやってこの文化を作るのか。私はキーとなる2つの質問を吉田氏に投げかけた。

「新しい働き方」は地方とシニアをどうみるか

ーー私はこの働き方が市民権を得るためには、今のIT関連の少し偏った仕事だけでなく、もう少し幅広い地域、年齢に受け入れられる必要があると考えています。吉田さんは岐阜県や福島県南相馬市と連携するなど、地方展開について積極的だったと思うのですがこのあたりはどのように動かされますか。

「行政との連携は引き続きですね。どちらかというと現地で受注できる方々にフォーカスしてます。家庭の事情などを抱えてそこでしか仕事ができない方が多く、例えばそれに関連してなんですが、クラウドワークスとして就業ができなくなった方に保険をだせるんじゃないかとか、セーフティーネットについても検討を進めています」。

シニア世代の新しい働き方「クラウドワーキング」|クラウドワークス

ーーもうひとつ、普段私たちは気付きにくいですが、そもそもネットに触ることができない人材もまだまだ多いです。例えば既に取り組みを始められているシニア層など。こういう人たちにをカバーすることも新しい働き方を文化として根付かせるためには必要と思うのですがいかがでしょうか。

「実はまだこれからの話なんですが、やはりスキルやニーズによって市場は分けるべきかなと考えてるんです。例えば壊れた看板の写真を撮ってきて欲しい、なんて依頼も実際にあるんですね。看板屋さんが依頼主で、そこに営業かけにいくんだとか(笑。もうこうなったらスキル不要の分野になります」。

ーーなるほど、それだったらデジカメ使える方であれば誰でもできますね。

「シニア層の方でもいろいろなパターンの方がいらっしゃって、データ入力だけの方もいますし、名刺のデザインをバリバリとこなす方もおられます。スマートフォンが主流になれば、インターネットに接続する層もさらに拡大しますし、マイクロタスク(データ入力などの軽作業)はさらに広がりをみせるのではないでしょうか」。

ーーそれでもネットに接続できない方というのはいます。例えば小作農じゃないですが、クラウドワークスを使える事業者がとりまとめ役になって、そういったシルバー人材などに仕事を依頼する、というようなスタイルもありえるのではないでしょうか。

「ああ、請けた仕事を分解して発注している方は実際にいらっしゃいますよ。考え方はオープンソースですから、様々な可能性が考えられるでしょうね」。

ここには詳しくはかけないが、インタビュー中、吉田氏と地方展開の難しさについていくつか言葉を交わすことができた。私も地方での仕事が長く、そこに村的な発想が根強いことを体験している。なかなか新参者を寄せ付けないのだ。

完全なプラットフォーム型のクラウドソーシングが日本に根付くには、受注側となる個人、特に地方やシニア層といった多く「埋蔵」されているリソースの覚醒がキーになると信じている。しかし吉田氏への取材で感じたのは、そういったことよりも先に、発注側となる企業利用や理解を促進させる必要があるのではないかという想いだった。

急成長するスタートアップ

インタビューの最後に少し視点を変えて、急成長するスタートアップとしてのクラウドワークスについて話を聞いた。

ーー吉田さんは既に事業者としていくつも経営などを経験されていますよね。3年ほどの運営で一番厳しかったタイミングってありましたか?

「いやあ、実は今なんですよね。サービス開始前にKPIの管理ツールを作り込んでその数字目指して一致団結してましたから一体感もありましたし、一点突破って実はそこまで難しくないんです。でも、KPIが2つ、3つと増えてくるとそうはいかない。緊張感はありますよ」。

ーーえ、吉田さんでも緊張するんですか。

「もちろん過去の経営経験からみえているものもありますし、どうしても同じ道を通るんだろうなという想いもあります。例えば先に入っている人と後から入ってくる人。意識の擦り合わせに時間をかけるのか、それとも前に進むのか」。

ーーそれでも吉田さんは経験豊富なリーダーとして引っ張る役割じゃないですか。メンバーにはどのような話をしてるんです?

「1年後の話をしてます。どういうことが起こるのか。大体、5年とか10年とかで会社なんてできるわけないんです。仲間に話をしているのは株主の論理じゃなく、とにかくユーザーのために働こうと。これまでの経験でもあるんですけど、結局ユーザーについていった会社が勝つんですよ」。

ーーチームはユーザーのために働いて、吉田さんは株主のために働くと。

「笑)」。

ーー今日はお時間ありがとうございました。

さて、いかがだっただろうか。当たり前だがこの話題はバブルなんかじゃない(と信じたい)。人員計画などを聞いても、数百人規模の開発陣を擁するゲーム開発会社などと比べれば小規模だ。それよりも率直に時間がかかるだろうなという印象が強かった。新しい働き方をつくるということは、新卒で大学を卒業する若者が、就職、独立と並んでこの働き方を選択肢にいれておかしくない文化をつくる、ということに他ならない。

今回は時間の関係もあって、ランサーズやその他のライバルとなるサービスについては時間を割くことができなかった。文化づくりには彼らと共同戦線が必要だし、業界で生き抜くためには彼らとの戦いに勝たなければならない。また時間があればそのあたりのことも聞いてみたいと思う。

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