ベンチマークするサービスは、点ではなく線で観測しろ−−イセオサム氏が語る「事業としてのスマートフォンアプリの心得」

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スマートフォンの普及が進み、利用率が上がってきている中、どのようにしてスマートフォンアプリを事業化していくかは必須課題だ。

株式会社HALO Co-Founder 、株式会社オモロキCSO、PLAY株式会社CEOを務めているイセオサム氏は、顔文字アプリ「カオコレ」といったウェブサービスやスマートフォンアプリのプロデュースを行っている。また、共同運営のオモロキでは、写真で一言ボケるウェブサービス「ボケて(bokete)」を開発している一人だ。

同氏が語った、事業としてのスマートフォンアプリの心得についてまとめた。

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ユーザのニーズに合ったサービスであること

ユーザが使っている姿をイメージできるくらい、アプリのユーザ像を明確にしなければいけない。あったらいいなではなく、なくてはいけないプロダクトとなるためには、ユーザのニーズをしっかりと掴まなければいけない。ネット業界にいると、アプリに対して偏った意見になりがちだ。一般の人たちに使ってもらうアプリを作るためには、多方面に意見を求めるべきだろう。

アプリのマネタイズ視点を始めから持っておく

アプリの事業モデルは、広告や課金、コマースなどがあげられるだろう。これらをどのように組み合わせるかが重要だ。運営しているボケては、今年から企業コラボを開始して8月に200万ダウンロードを突破した。どれくらいの規模になったら事業が成り立つのかを考え、KPIを設定しよう。

マネタイズを始める規模でアプリの成長は止まると言われているが、マネタイズは始めからやれば良いと私は考えている。クールすぎるUIにあとから広告が入ると違和感があるが、始めからプロダクトに広告があれば、改めて広告を意識することはない。資金があれば、サービスはさらに投資することができるため、マネタイズ視点を持つことは、事業にとって重要だ。

ユーザに近い場所で広告をする

最初から、広告費で数百万円を投資できるスタートアップはいない。非効率な広告に資金を費やすよりも、ユーザに近い場所に的確に広告を絞ったほうが良い。例えばレビューサイトなど、ユーザが普段から目にするメディアにアプローチしたほうが効果は高い。ユーザに近い場所でしっかりと発信していこう。

シェアされる仕組みを作ること

広告に頼らずにいかに自然流入を作るか。そのためには、アイコンとASO(アプリストア最適化)、そしてシェアされる仕組みを意識しなければいけない。アイコンは、ストア内で見られることを意識した目立つ工夫が必要だ。ユーザがアプリを使うまでに、ダウンロードしてスマートフォンのホーム画面に設置し、そこからタップして起動させるという手順があるため、これらのUXを途切れさせない設計が必要だ。ボケては、ネイティブアプリだがウェブサイトを持ち、各投稿毎にパーマリンクを設定してウェブ上でも拡散される仕組みを作り、アプリダウンロードへ誘導する情報設計を行っている。こうした情報設計を、始めから意識しておくことが大事だ。

ベンチマークするサービスは、点ではなく線で観測しろ

参考にしたりベンチマークしたいサービスは、しっかりと観測することだ。どこが変わったかを理解するために、できるだけ自分でリサーチすること。自身の五感で体験することでどこが変化したかを理解でき、言語化できればそのUXは実装することができるからだ。また、Growth Hackは伸びているアプリを真似することが一番効率的だ。日々の観測から、変化が見つけられたポイントにこそ、そのアプリが伸びている理由が潜んでいる。そのためにも、観測は点ではなく継続してチェックする線で観測する意識を持ち、変化に敏感になっておくことが大事だ。

お金をかけるところとかけないところを明確に

もちろん、勝負どころではブーストするために資金をかけてマーケティングすることも大事だ。例えば、Facebook広告はセグメントしたユーザに応じたコンバージョンの違いを理解することができ、その結果をUIに反映させるテストマーケティングとして有効だ。お金をかけるところとかけないところを明確にして、効率的に資金を活用しよう。

意味のある事業提携を結ぼう

提携が、どれだけ効果があるか意識しておこう。ボケての場合、エンタメ要素がYahoo!アプリに少なかったためボケてのコンテンツを通じてエンタメを提供でき、こちらもユーザ獲得が期待できると考え、Yahoo!と提携を行った。どこと組むか、どのように組むか、効果と目的を理解しておこう。

コミュニケーション型かコンテンツ型か

サービスを、Facebookのようなコミュニケーション型と、YouTubeのようなコンテンツ型の二つに分けて考えることができる。コミュニケーション型は、場合によって別のコミュニケーションサービスでシェアがひっくり返される可能性がある。コンテンツ型は、ストック式なので時間が立てば立つほど後続が追いつけない可能性がある。ボケては、この分類ではコンテンツ型だと考えている。自身のサービスが、コミュニケーション型かコンテンツ型かどちらのグループに属しているのかを考えた上で、どういった事業展開をすれば成長できるかを考えなければいけない。

全体最適の情報設計をすること

ただのABテストは、根本的な解決にならない。ダウンロード数が上がっても、アクティブ率が下がれば意味がないように、Growth Hackでは目先の数値の変化ではなく、もっと俯瞰した視点が必要だ。そのためには、事業全体におけるKPIの設定が合っていることが大事だ。その上で、部分最適ではなく全体最適の意識を持って設計していかなくてはいけない。

チームの役割を明確に意識すること

チームの役割が明確になっているかを考えよう。プロデューサーは、お金周りを含む企画制作に対して責任を持つ存在だ。ディレクターは、プロダクトの質、UXに責任を持つ存在であり、デザイナーはプロダクトのデザイン、UIに責任を持つ存在だ。エンジニアはプロダクトの構造、プログラムに責任を持つ存在といった区分けができる。兼務もできるが、立場に応じた別々の思考回路を持たなければいけない。

事業化する時は、採用をしっかりと行うこと

スケールするフェーズでは、事業化できる人間を早く採用することだ。また、エンジニアとデザイナーはコミュニティが分かれているため、それぞれのコミュニティに自ら足を運び、コミュニケーションしていくことで仲間を見つけることができる。

運用方法に応じたパートナーシップを考える

それでも、人を採用するのは難しい。ボケてでは、内部リソースを持たずに役員全員が別の会社を持ちながら、それぞれの得意分野を活かしてオモロキという会社を運用している。どういった運用方法が最適かを考え、しっかりとしたパートナーシップを組むことが大事だ。

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