起業家がすべきは事業価値を高めることだ−−East Ventures松山氏が語る「シードラウンドにおける投資基準と、起業家が持つべき経営判断」

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スタートアップの成長において、シード期の環境をどう作るかで、立ち上げの成功が大きく変わってくる。

松山太河氏は、ネットエイジ取締役やeグループなどを経て、エンジェル投資組合のクロノスファンドのパートナーや、日本やインドネシアを中心とした東南アジアのスタートアップを支援する投資ファンド兼シードアクセラレーターEast Venturesのパートナーを務めている人物だ。

同氏が語る、シードラウンドにおける投資基準と、起業家が持つべき経営判断についてまとめた。

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シード期に必要な支援を通じて、起業家を育てることがミッション

投資の判断軸として、まだプロダクトができていないスタートアップに対しては、起業家個人のことをよく知っていたり、過去にプロダクトを作って実績を作ったことがある人に投資している。しかし、ほとんどは動いているプロダクトを見てから判断し、投資を行っている。

投資額は大きな額ではないが、例えばEast Ventures アクセラレータープログラムやシリアルアントレプレナーのネットワークの提供を通じて、投資先のスタートアップの成長をサポートしている。East Venturesはインドネシアにも投資をしている。過去にインドネシアのスタートアップのシード期に投資をしていたが、現在では事業がある程度進んでいるミドル期の投資で成長を支援している。

まずは一つのプラットフォームで成果を出せ

アプリ開発で、iOSとAndroidのどちらから先に始めればいいかといった相談をされることは多いが、私は人的リソースがあるプラットフォームから先に開発したほうが良いと考えている。つまり、メンバーにiOSで開発できる人がいればiOSから始めればいい。始めから両方やるのではなく、まずは一つに絞ってからスタートしたほうが良い。iOSとAndroidのどちらにおいても、最低でも10万ダウンロードを初期に達成しなけばその後の成長は見込めず、別のプラットフォームに移動しても成功しない。

VCやCVCの違いを理解しろ

East Venturesなどの独立系VCは、運用額は小さいがシード期などの早い段階に対して積極的な投資を行なっている。事業会社が運営しているCVCは、億単位の投資を中心とし、ミドル期以降の大型投資を行うことが多い。CVCや金融系VCなど、会社組織が運営するVCからの投資を受ける際に気をつけるべき点は、担当者が途中で変わる可能性が高いことだ。投資先との癒着などが起きないように定期的に部門移動が起きるため、そうした企業内のサイクルを理解した上で、コミュニケーションを図っていこう。

リスクを背負う人に対してお返しをする意識を持て

エンジェル投資家やVCからの投資であっても、そのお金は借金で借りたお金だという意識で取り組むスタートアップのほうが、成功しているケースが多い。逆に、リスクマネーだと思っている起業家は、お金に対して責任を負っているという意識が薄いため、失敗することが多い。リスクを背負って投資をしてくれる投資家に対してお返しをする、といった感覚を持つことが、成功の要素の一つと言える。

初期の株主は、一生付き合っていくパートナーだと思え

社員を企業から外すことはできても、株主は一度企業の中に入ったら抜けさせることはほぼ不可能だと思ったほうが良い。それくらい社員と株主の性質は違う。ある程度成長段階が見えた後で、自身と考え方が違う人物が株主がいることは、新しい発想を見出したり違った業界とのネットワーク構築をしたりするのに有効だが、初期の頃は立ち上げ期を共に過ごす仲間であると認識し、一生付き合っていくパートナーだと思えるような相手を選ぶべきだ。

会社の価値を正確に把握し、提案すること

バリュエーションについては、自社の価値を正確に把握して提案しないと、投資家から信用を無くし、その後の経営に影響を及ぼすかもしれない。仮に今回は投資が断られたとしても、コミュニケーションを通じて信頼を得ることができれば、次のラウンドで投資をしてくれるかもしれないし、投資以外の協力が得られるかもしれない。投資家とのコミュニケーションにおいては、バリュエーションを意識しすぎるよりも、信頼関係を大事にしたほうが良い。

株の比率を意識するよりも、事業価値を高めることに力を注げ

株の比率を過剰に意識しすぎてはいけない。事業が成長した結果、時価総額1000億円規模で起業家が20%の株を所持していれば200億円となるが、時価総額が100億円しか成長せず、かわりに株の比率が50%だったとしても起業家の手元には50億円しか残らない。起業家がすべきことは、株の比率を気にすることではなく、事業にしっかりとコミットして売上を伸ばし、最終的な事業価値を少しでも高くするように経営することだ。

定石に囚われず、自分の軸を持って事業を進めろ

起業の成功パターンは企業によってまったく異なるため、あまり定石や成功者の意見に左右されすぎてはいけない。これまでに成功してきた起業家をみても、方法論は起業家それぞれで千差万別だ。もちろん、ロールモデルを探して真似るのは大事だが、サービスや経営者の個性によって成功の道筋は違ってくるということを意識して、自分の中の軸を定めて行動して欲しい。

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