地方で起業することの現実と課題−−福岡市が目指すスタートアップエコシステムとは

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インターネットの登場で時間や空間を超えたやりとりが可能になり、いまや世界中の誰とでもどこからでもコミュニケーションが可能となった。その半面、いまだ東京一極集中になっているものがある。その一つが起業だ。

人、モノ、金が集まり、最先端で活動している人たちとの出会いの多さや、ビジネスの規模を感じやすい場所として、いまだ起業するなら東京、といったイメージは強い。では、本当に東京以外では起業は難しいのか。事実、全国各地で起業を推進する動きは起きている。

また、地方ならではのクリエイティビティやオリジナルの技術をもって、世界に発信しようとしている人たちも多い。なのに、いまだ東京一極集中という状態は、現在の日本の起業に対する一つの課題を含んでいるのではないだろうか。

そこで、地方の起業の現状や、地方における起業に関するさまざまな問題点などを浮き彫りにすると同時に、どういった解決策を見出すことができるのかを少しでも明らかにし、より多くの起業の機会やビジネスの可能性について考えてみたい。本シリーズではこのテーマに沿って、全国各地の起業も含めたさまざまな様子を取材する予定だ。

今回、取材していくにあたり、全国47都道府県ベンチャーサミットなどを主催しているトーマツベンチャーサポートの協力をいただいた。

アジアの中心都市としての福岡市

Some rights reserved by tsuna72
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地方都市で盛り上がりを見せている地域の一つに、福岡市がある。人口約150万の福岡市は、九州地方の行政や経済、交通の中心地であり、アジア近郊の玄関口として発達している。

雑誌『MONOCLE』の「住みやすい」世界都市ランキングにおいて、毎年福岡市は上位にランクインする(2013年6月で12位、東京は4位、京都は13位)など、世界的にみても注目を浴びている都市の一つでもある。

ソフトバンク株式会社代表取締役社長の孫正義氏、MOVIDA JAPAN株式会社代表取締役CEOの孫泰蔵氏、株式会社ライブドア元代表取締役社長CEO、SNS株式会社オーナーの堀江貴文氏といった、さまざまな起業家を生み出している地域としても知られており、「福岡を日本のシリコンバレーに!」といった起業のエコシステムを作る場所にしようとする動きは、この10年ほどみられている。

そうした起業のエコシステムを作る動きが、さらにこの数年で福岡では盛り上がりをみせている。すでに、THE BRIDGEでは過去に記事を書いているように、福岡を中心に活動しているヌーラボなどの企業がアジアに目を向けて活動している。

その傍ら、2011年からスタートしたテクノロジーのクリエイティブの祭典「明星和楽」を開催しながら、アジアのスター輩出の支援をするなど、福岡を起業の中心地へと推進しようとする動きが活発だ。ちょうど先日も、明星和楽 in 台北が行なわれ、福岡のみならず海を越えた開催となるなど、イベントとしての規模も広がりをみせているように伺える。

行政も動き出した、スタートアップのエコシステム構築

起業家支援は、民間だけではなく行政も大きく動き出している。2012年9月におこなわれた「明星和楽」において、高島福岡市長が登壇。「スタートアップ都市・ふくおか宣言」が発表された。

「スタートアップ都市・ふくおか」では、デジタル技術やコンテンツ、モバイルの分野において、起業支援を取り組むための事業として、福岡市を中心とした「スタートアップ・サポーターズ」を設立している。

アジアのスターを輩出する明星和楽を通じたクリエーターのネットワークづくりや、英国版シリコンバレーを目指しているロンドンTech Cityとの連携により、海外との情報交換を促進しながら、福岡のスタートアップエコシステムの構築と新たな挑戦を応援するスタートアップ都市づくりを目指している。

高島市長は、15歳から29歳の若者の割合が日本一なこと、大学が京都について集まっていること、そしてオフィス賃料の安いといった要素をもとに、起業がしやすい街をアピールしている。同時に、福岡県内約3万人の理工系大学生のうち、約6割が九州外へ就職しているという現状を改善し、若くて優秀な人材が福岡で活躍できる場をつくることが、今回の事業の目的でもあるという。

2013年12月には、地方における起業支援推進を通じて、日本全体の活性化を目的とした「スタートアップ都市推進協議会」が発足。会長に就任した高島福岡市長を含む千葉市、横須賀市、浜松市、奈良市、三重県、広島県、佐賀県といった3県5市が参画し、地方全体の活性化を通じた新しい価値の創出を目指している。

地域の実状、地域コミュニティが持つ課題とは?

都市全体を活性化するためにも、優秀な人材をどのように確保するかが今後の課題となる。同時に、新しい事業を起こそうとする起業家を応援し、それまでになかった新しい市場を生み出し、経済の活性や新しい技術開発を通じた日本のものづくりの成長と世界に向けた発信など、さまざまな課題ともリンクしてくる。

民間だけでなく、行政も協働して起業のエコシステム構築に乗り出した福岡。外部からみれば大いに盛り上がりを見せている状況かもしれないが、では、いざ「明日から福岡に行って起業ができるか?」といえばなかなか難しい、と感じる人もいるかもしれない。

さらに、起業家を輩出するためには、仕組みだけではなく、地域住民の理解や連携、それも含めたマインドシフトが必要不可欠だ。どんなに仕組みを用意しても、それはいわば箱物、ハードウェアであり、そこで動くソフトウェアが重要だ。行政によるトップダウンによる都市づくりだけではなく、市民全体も巻き込んだボトムアップ型の都市づくりとなるためには、おそらくまだ見えていない課題もあるかもしれない。

そうした課題について、実際に福岡で活動してる起業家への取材や、活動を推進している行政の中の人が考えている課題について明らかにする必要がある。

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