アイディアの実現にこそ価値がある−−Lean Startup Japan和波氏が語る「起業家が持つべき意識の変革」

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斬新なアイディアを着想するだけではなく、そのアイディアを実現可能な形に落とし込み、事業として継続する形へと作り上げることが求められる。そのためにも、アイディアをブラッシュアップしながら、どう無駄のないアクションを行うかが重要だ。

Lean Startup Japanの和波俊久氏は、日本におけるリーン・スタートアップの事例研究や普及活動を中心に起業支援を行っている。また、企業向けの新規事業開発のコンサルティングを通じて企業内にリーン・スタートアップの考えを浸透させ、日本社会に起業文化を広める活動をしている。

同氏が語る、起業家が持つべき意識変革についてまとめた。

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日本にシリアルアントレプレナーを増やすこと

世界には、シリアルアントレプレナーと呼ばれる2回目や3回目にチャレンジする人たちがいる。そして、2回目以上のほうがビジネスを作る能力は高くなる。日本では依然として起業率は低いため、起業家人口を増やすことは確かに大きな目的だ。しかし、人数を増やすことにも限界がある。一人の人間が複数回の起業ができるようになれば、さまざまな可能性を秘めている。そのためにも、アントレプレナーマインドを持った人を育てることが大事だ。

リーン・スタートアップの考えが浸透することで、起業の循環システムが広がる

失敗は誰もがするものだ。だからこそ、失敗を受け入れる仕組みが必要だ。そこにリーン・スタートアップの考えが必要になってくる。リーン・スタートアップを理解する企業が増えれば、リーン・スタートアップを経験した起業家は大企業から見ても価値のある人材だと認識される。それによって起業の循環システムが形成され、失敗しても再挑戦しやすい環境にできあがる。

変化するやりたいことに対して、適切な“やり方”と“はかり方”を見出すこと

リーン・スタートアップとは、やりたいことが決まっていない新規事業を成功させるためのプロセスだ。そのためには、やりたいことをいかに言語化するかが大事だ。往々にして、やりたいことは刻一刻と変化する。変化するやりたいことに対して、顧客開発やMVP(実用最小限プロダクト)、ピボット、スモール・バッチ、仮説検証、ユーザ・フィードバックなどの方法を模索し、KPIを設定し、それを明確に測定する方法を見出すことで、やりたいことの実現可能性を高めていく。やりたいことの実現のために、“やり方”と“はかり方”を作ることがリーン・スタートアップの考えなのだ。

失敗の経験は万人共有

いままでの成功者は自身の成功体験を述べるばかりだったが、成功方法は十人十色だ。エリック・リース氏の『リーン・スタートアップ』やスティーブン・ブランク氏の『アントレプレナーの教科書』は、共通する失敗や「こんなやり方はやめよう」といった今までとは違った視点から書かれた書籍だ。彼らは、失敗の経験はみんな同じであり、「成功する前に資源を使い果たしてしまう」と言及している。ベンチャーの最大資源はお金とモチベーションとサポート。これらの資源を長く保ちながら、まるべく早く成功へと導く、という二つの課題を叶えるための手法がリーン・スタートアップと言える。

事業アイディアはフリマ化しているからこそ、アイディアの実現に価値がある

クラウドとモバイルといった環境の変化が、リーン・スタートアップ普及のきっかけとなった。それまで、ウェブサービスを始めるためには、起業準備や環境整備のために莫大な資金が必要だったが、今やその多くが無料かもしくは安価で用意することが出来る時代へと移り変わった。この環境の変化により、アイディアを世に出すことに必要なコストが下がった。つまり、アイディア自体に価値がなくなった時代であり、「事業アイディアのフリマ化」と言ってもいい。だからこそ、そのアイディアを実現することや継続することに価値があるのだ。

アイディアに時間を費やすのではなく、作り始めることに時間を費やすほうが成功の確率は上がる。それが、リーン・スタートアップが必要とされる理由なのだ。

多くの人が自分事だと自覚できる病気を作り出すこと

多くの起業家は、薬という解決策を提示するだけで、その薬が何に効果があるのかを明確に提示していない、もしくは顧客がその薬の必要性を理解していないといったことが往々にしてある。顧客自身が持っているニーズを把握できていない状況では、どんなに素晴らしい薬を出しても意味がない。そこで、病気(マーケット)も同時に作り出すことで、顧客が気づいていないニーズを明確にすることで病気に自覚できるようになり、新しい顧客開発を行うことができる。

グルーポンの例をあげると、個人で購入していることが損をしている(病気)という課題を作り、共同購入(薬)という解決策を導き出したからこそ、成功への道筋を作り上げることができた。スタートアップの仕事は素晴らしい薬を作ることではなく、多くの人が自分事だと自覚できる病気を作り出すことでもあるのだ。

思い込みを捨てよう

思い込みを捨てて、顧客から学ぼう。自分のアイディアだけでは失敗するということを知ろう。さきほどベンチャーに必要ものの一つにモチベーションと述べたが、モチベーションは自身の思い込みによってその強さが左右される。しかし、思い込みが強ければ強いほど自身が持っている考えをそのままマーケットにぶつけても顧客からは理解されずらい。ビジネスは、自分の頭の中のものをいかにマーケットから欲しいと思わせるか。そのためのポイントを見出すことが事業を作ることだ。思い込みを捨て、顧客からのフィードバックに従ってプロポジションを修正することが求められる。

真のフィードバックを重視し、実験と検証を繰り返すこと

アイディアをどのように進めていくか。そのためには、徹底的に無駄を排除して実験と検証を繰り返すことだ。無駄がないと思える状態を、いち早く作り上げるための体制を作ることが、リーン・スタートアップの根底にある。自分に都合のいいフィードバックに惑わされることなく、自身の顧客との真のフィードバックを重視すること。そうでないと嘘で塗り固めた仮説検証ばかりすることになる。

アイディアから構築、製品、測定、データ、学習、そしてアイディアへといったリーン・スタートアップの循環を強く頭に刻み込むことが大切だ。

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