シンガポールが公立学校にプログラミングの授業を導入、経済活性化を図る

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シンガポール国内インターネット産業を担う国家機関、Infocomm Development Authority of Singapore (IDA)は、公立学校にソフトウェアのプログラミング授業を積極的に導入し、授業内で生徒にコンピューターコードを書く機会を与えることを検討している。このニュースは先日のGood Morning Singapore(中国語)で最初に伝えられた。

テクノロジー産業が急速に変化しているなか、同機関はプログラミングの授業を数か月以内に国内に導入していく意向で、世界トップレベルにあるシンガポールの経済力を維持することを目指している。

「IT技術は広く行き渡っており、シンガポールの競争力を高めるために重要な媒体となってきていることを私たちは皆実感しています。」

と、IDA政府主席情報部のアシスタントチーフエグゼクティブであるJames Kang氏は語る。

実はプログラミングや3Dプリンティングといったテーマは、既にIDAの援助でいくつかの学校では課外授業として盛り込まれているので、これから導入予定のプログラミング授業がこれまでの取り組みとどのように違っているかは明らかではない。

同機関は現在、生徒たちにどうやってプログラミングを教えていくべきかを教育省と話し合いを重ねているところであるとTech in Asiaに語ってくれた。よって、プログラミング授業が正式にカリキュラムに組み込まれるのか課外授業のままになるのかは未定であるという。

Straits Times紙によれば、約1,500名の生徒がIDAの学校プログラムで「上級コンピュータコンセプト」の授業を受けた。Radin Mas小学校、Nan Chiau高校、Greenviewセカンダリースクールでは3D設計ソフトウェアや3Dプリンターを使ってプロトタイプを作る授業が行われた。

一方、Hwa Chong InstitutionやDunman高校では、ティーンエイジャーにプログラミングの授業を行った。このうちDunmanでは、ウェブアプリの作成や統計・科学的リサーチで人気の言語であるPythonを教えた。

こうした学校はすべて、シンガポールの学校教育制度の中でも中流から上流層に位置づけられるものばかりだ。特に数学と科学に関しては、シンガポールの学校は世界でもトップランクにあり、とりわけHwa Chongはエリート学校として有名だ。

定職につくには、こうした技術的なスキルを有していることがますます重要になってきており、こうした上流の学校以外の生徒にもプログラミングの科目を選択する機会を提供することで、職業機会を均等化することがIDAに期待されている。

プライベートクラスが続々とスタート

シンガポールでは、昨今IT技術に関する教育を提供する機関が大幅に増加している。こうした機関では様々なワークショップが提供されており、3Dプリンター技術やハードウェア修理、アプリ作成などそのテーマは多岐に渡る。しかし、こうした教育産業自体が次世代のインターネットマーケティングのスキームの一部として組み込まれているのは、憂慮すべきことだ。

IT技術教育を提供するKore Infotechによると、現在IT技術を有していることは非常に有益だと考える親がますます増えており、また子供にできるだけ早い段階で基礎的な知識を身につけさせたいと希望しているという。同社では、過去2年間でこうした授業への参加者が1年当たり30%も増加している。

Good Morning Singaporeとのインタビューにおいて、トレーナーの1人が語ったところによると、「親御さんは子供たちがプログラミングに触れることを望んでいます。それによって、子供たちがより早い段階でキャリアを選択することがいっそう容易になるのです。工科専門学校や大学の学生がたくさん受講しに来ていますが、彼らは大学で初めてプログラミングを体験し、非常に難しいと感じています。」

同社は2年前に子供向けクラスを始めた。子供向けクラスでは、簡単に理解できるコーディング言語を用いて子供たちがプログラムを作成できるSimpleという特別なプログラムを使用している。近い将来、このコースを学校に売り込む計画である。

ITリテラシーとハッキング技術(違法なものではない)がますます重要になっているのは、シンガポールだけの話ではない。世界中で同じ現象が見られる。アメリカではSilicon Valleyの有力者だけでなく連邦政府もHour of Codeというコンピュータ科学や理数系教科(STEM)の普及を促進する取り組みを推進している。

こうした国でIT技術教育が促進されている大きな要因の1つに、技術に優れた人材不足が挙げられる。これこそ技術系スタートアップの現場に不可欠なものであり、単なるシステム管理者ではなく製品クリエイターの人材不足である。両国とも厳しい移民政策をとっており、結果的に自国内でこのような人材を創出することに力点が置かれるようになったと言える。

シンガポールにおいて課題となっているのは、IT技術の専門性を高めることではない。技術者になるという進路が取り組む価値のあるものだと若者に理解させることこそが大きな課題だと言える。というのも、現在は法律や金融、医療などの社会的地位の高い職業への進路が途絶えた際に、ようやく候補に挙がるのが技術者という職業だからだ。

【原文】

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