Asia Leaders Summit 2014: スタートアップにとって、グローバリゼーションとは何か?

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左から:Fritz Demopoulos(Qunar.com)、Paul Srivorakul(Ardent Capital)、
Ryu Kawano Suliawan(P.T. Midtrans)、
高宮慎一氏(グロービス・キャピタル・パートナーズ)、金田修氏(游仁堂)

これはシンガポールで開催されている、Asia Leaders Summit 2014 の取材の一部だ。

「スタートアップは、グローバルであるべき」とよく言われる。THE BRIDGE の仕事に携わっていて興味深いのは、日本語の「グローバル」という言葉が「世界展開」という言葉と少しニュアンスが違うように、beSUCCESS の韓国語記事などを訳していても、「グローバル」という言葉に特別な思いを託そうとする、寄稿者の意図を伺い知れることだ。

語弊を恐れずに言えば、日本のスタートアップにとって、グローバルになるとは、シリコンバレーにオフィスを作ること。韓国のスタートアップにとって、グローバルになるとは、日本語か中国語でサービスを展開すること。東南アジアのスタートアップにとって、グローバルになるとは、自分のホームマーケット以外の東南アジアの国の言葉(例えば、タイのスタートアップがインドネシア語で提供するなど)でサービスを展開するか、シンガポールにオフィスを構えること。でも、世界に200弱の国があることを考えれば、全然グローバルではない。

「Keyman’s Talk: Building global company from Asia」と題された、この日最後のセッションでは、広義でグローバルな展開を遂げた5人のスタートアップ経営者が顔を揃えた。

  • Fritz Demopoulos、中国の航空券割引購入モバイルアプリ「Qunar.com(去哪兒、NYSE:QUNR)」共同創業者
  • Paul Srivorakul、Ardent Capital 共同創業者兼 Executive Chairman
  • Ryu Kawano Suliawan: P.T. Midtrans 共同創業者兼CEO → 関連記事
  • 高宮慎一氏、グロービス・キャピタル・パートナーズ CSO → 関連記事1関連記事2
  • 金田修氏、游仁堂 共同創業者兼CEO(中国で各種オンラインビジネスを展開)

モデレータは、Incubated Fund の創業パートナーである本間真彦氏が務めた。

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アメリカ出身で、北京に長年住む Fritz は、Qunar が公開会社であるので、立場上あまりセンシティブな発言はできないと断った上で、Qunar は中国市場の規模が十分に大きかったことから、ローカルからビジネスを成長させることを選んだと語った。その道を進む上でよきパートナーとなったのが Baidu(百度)であり、Qunar は Baidu に2011年に買収された後、2013年に NYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場を果たした。

アメリカと同様に中国市場は世界的に見ても十分に大きいことから、Fritz の視点からすれば、中国で企業が成長することは、イコール、グローバルに成長していると解釈できるのだと話す。

例えば、シンガポールとインドネシアなど、特性が似ている国への海外展開は意味があるだろう。中国の企業は、資本に対して十分なアクセスが提供されているとは、まだ言いがたい。おそらく、中国市場で勝つためのスキルは、他の市場で勝ち抜くのに必要なスキルとは違うものだろう。

バンコクを拠点に Ardent Capital や、最近シンガポールにも進出した aCommerce を切り盛りする起業家兼投資家の Paul は、自身のビジネスで一国のみならず、アジア地域全体に展開する理由は、企業価値を上げるためだけではないと語った。彼は2012年、アドネットワーク AdMax を、Komli というメディア企業に売却している

バリュエーションは、買ってくれる側のビジネスに依存する。AdMax のときは、我々が東南アジアでアドネットワークを持っていて、Komli がインド/アメリカの会社だったので、彼らはそこに価値を見出してくれた。AdMax では6つの国に進出していたが、シンガポールから得られていた売上は、全体の1割ほどだ。

重要なのは、サービスを使ってくれる企業が地域本部からのトップダウンの決裁で採用が決まるということだ。つまり、国際企業というのはシンガポールに東南アジアの地域本部があって、そこのエグゼクティブがあるサービスの採用を決めると、東南アジア各国でもそのサービスを使ってくれるということ。そういう意味では、アジアの複数の国でサービスを展開し、シンガポールに進出しているのは意味があると言える。

aCommerce の拠点をシンガポールにも開設し、シンガポールの大企業の人と会っていると、彼らはしきりにインドネシアでサービスをローンチするのを助けようとか、フィリピンでどうか、などと言ってくれる。おそらく、次はフィリピンに出ることになるが。

Rocket Internet のおかげで(筆者注:これはニュアンスから言って、皮肉の意味もあるように解釈できた)、東南アジアのの人々はEコマースを習熟した。タイはシンガポールよりも人材を確保しやすいが、多くの優秀な人材は、マイクロソフトのような大企業にいたりする。彼らをスタートアップが引き抜く上では、(スタートアップは多くの給料を支払えないので)給料は70%になるけれど、残りの30%は株式で渡すような工夫が必要かもしれない。

※ 以前 Paul とバンコクで会ったときにも、彼は同じような話をしていた

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インドネシアで決済プロバイダ Midtrans を運営する Ryu は、「自分達がやっているのはすごくローカルで、なぜこのパネルに招かれたのがよくわからない」と謙遜しながら、彼のグローバルの定義を次のように答えた。

我々がやっているのは、アジアのお客さんにサービスを提供しているので、彼らがグローバルになるときが、我々がグローバルになったと言えるのだろうと考えている。

しかし、グローバルという意味で言えば、アメリカのハリウッドだろう。インドネシアでビデオショップに行くと、8割はハリウッド作品で2割は韓国作品という感じ。彼らは、アメリカのコンテンツ、文化、ライフスタイルをインドネシアに売りたいのだ。

Alibaba でさえ、アメリカへの市場参入には困難を経験していると聞く。Tokyo Otaku Mode の Facebook ファンが1,400万人だと言っても、ハリウッドの何十億人といるファンの数には太刀打ちできない。

この話を受けて、高宮氏はスタートアップの目指すべきグローバリゼーションについて、次のような考えを披露した。

ハリウッドとは、アメリカの資本主義の象徴みたいなものだが、その市場規模から言って、アメリカと中国が真のグローバル・サービスを創り出せる切符を持っているということはできる。Tokyo Otaku Mode はすごくローカルなもので、グローバル・ニッチをターゲットにしている。ローカルから生まれたニッチが、グローバル・ニッチなビジネスに発展することはあるだろう。

グローバリゼーションとは曖昧な言葉だが、要するにサービスを複数の国に展開していくことだろう。名刺管理サービスを提供する Sansan のような会社は、名刺交換という同じビジネス文化を持つ国々に進出するだろうし、ゲーム会社は Facebook やアプリストアなどを使うだろうし、何を目指すかはビジネス領域によって異なってくるだろうが。

主に中国でオンラインビジネスを展開する金田氏は、中国のテックシーンに関するインサイトを教えてくれた。

市場規模の大きさという点で、中国は世界の中心になるのかもしれない。昨年末発表された、世界のトップ40社に Tencent(騰訊)が入っていた。Tencent は中国市場に特化した会社だ。しかし、アメリカでも多くの産業は国内企業にとって占められている。つまり、市場規模だけで言えば、中国でトップになれれば、グローバルな企業になれるとも言えるだろう。

日本企業は日本から出ようとする。アメリカやヨーロッパでは顕著ではなく、これはアジアでよく見られる傾向だ。Tencent のWeChat(微信)は世界からユーザを獲得しようとしているが、中国というベースの市場があるがゆえに、世界展開を阻んでいる側面はある。ある国で成功すれば、それが世界展開の足かせになるという例は、他にも見受けられるだろう。

筆者の心の中にも、グローバル≒アメリカンの図式は昔から根付いているので、真の意味でグローバルなモノを追究するのは常々難しいと痛感する。世界各国で催されるスタートアップ・イベントに足しげく通い、可能な限りレポートをまとめているのもそのような理由からだ。そんなことを改めて考えさせられるセッションで、Asia Leaders Summit 2014 は締めくくられた。

スタートアップ・コミュニティで仕事をする読者各位にとって、グローバルとは何か(あるいはグローバルは必要ないか)。いろんな機会に意見を教えてもらえれば幸いである。