キモノをもっと身近に:京都と東京の2拠点で営む「西村兄妹キモノ店」の西村美寿穂さん【後編】

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「キモノをもっと身近に:京都と東京の2拠点で営む「西村兄妹キモノ店」の西村美寿穂さん」の後編をお届けします。【前編】はこちらをどうぞ。

Nishimura-Kyodai-Kimono

お客様一人一人と向き合って、足場をしっかり築くこと

この10年間でお店は順調に成長し、2008年にはロンドンコレクションなどにも登場する第一線で活躍する「ELEY KISHIMOTO」デザインのゆかたを制作し、新宿伊勢丹、有楽町マルイなどで販売した。同年には、加藤ミリヤとコラボレートした【KATO MILIYAH 振袖 by Kawi Jamele】も制作。

コラボレーションなど着物を軸に仕事の幅を広げていく一方で、自分たちの足場をしっかり築いて行くことを意識するようになった。外に発信することに注力するフェーズから、今は根を深くする時期だと。そのため、東京では着物を訪問販売したり、キモノを着て楽しむ場を提供したり、一人一人のお客様とより向き合うための売り方が中心。

美寿穂さんにとって、ご両親は同じ呉服屋として、また経営者として大の先輩。中でも特に見習いたいのはお客様に対する姿勢。年中、24時間、お客様のことを考えるということ。着物屋というのは特殊な商売で、そのお客様との関係はただの売り買いを越えたものなんだそう。

「呉服屋さんっていうのは、お玄関から入らせていただいてお座敷でお商売ができる仕事なんですよ。お玄関から入らせていただくのも一つ職業の特徴だと思います。お客様やご家族のことを伺って初めて、お着物をおすすめできる。だからご家族のことは本当にいろいろ教えていただきます。他の職業ではありえないことかもしれないですね。」

京都の地の人に認められたという喜び

そんなお客様とのやり取りにはさりげない気遣いや心配りが求められる。そもそも着物はこんな場で着たいという機会があって新調することが多い。慶びの機会なら、お目出度い柄の帯を締めて出迎えたり、お客様に振る舞うお菓子もそれに合う華やかなものを用意したり。

また、普段から季節の変わり目など機会を見つけては手紙やハガキなどを送ることも忘れない。着物屋とお客様の関係というのは、長く続くことを前提に築かれているもの。だからこそ、通う着物屋に選んでもらうことのハードルは高い。

「京都でお商売をするのは難しいって言われるんです。京都の方は商売に対してシビアで、まずはずっと観察をするというか。京都でお商売できればどこでもできるって言われるくらい。

だから、地の人がちゃんとお買い物に来てくださった時はちゃんと認めてもらった気がして本当に嬉しかったです。だんだん名簿に京都の人が増えていったのを見た時は、良かったなと思いましたね。」

忙しい現代人に届ける「キモノ」という癒し

キモノを身近にというコンセプトのもと、この先、結婚してもキモノ伝道師としての活動を続けて行くと話す美寿穂さん。キモノはあくまで身につけるツールに過ぎない。色んな人が和文化に興味を持ったり、生活の中に和文化を取り入れたりするきっかけを提供していきたいと話してくれた。

2013年10月で、めでたく設立10周年を迎えた西村兄妹キモノ店。これから積み重ねる新しい10年では、キモノという日本文化を海外に向けて発信したいという想いも。実際、既にドバイや中国など海外からのお客様の来店も多く、40、50万する着物を購入していく外国人も少なくないそう。友人の紹介や、Facebookやブログなどの情報を見ての来店も増えている。

「今は着物って晴れの時だけに着るものですけど、ワードローブの中に当たり前のように着物という選択肢がある世の中にしたい。着物を着ると少しおしとやかになれたり、背筋が伸びたりするんです。

歩幅も小さくなってゆっくり進むことで、普段見過ごしてしまっているものが違う視点で見えたり、ゆとりが持てたり。着物を着ることで得られる効果って、今の人にすごく癒しになると思っています。」

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