月額課金はLTVを意識しろ−−クックパッド加藤氏が語る「プレミアムサービスをグロースハックするために必要なこと」

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安定したサービスとして成長させるために、グロースハックの考えをもとに施策を打つことが大切だ。月額課金制を採用しているサービスは、いかに有料会員を日々獲得していくかを考えなければいけない。月間2000万ユーザを超え、160万以上のレシピを抱えるクックパッドは、プレミアム会員は100万人を突破し、今なお会員が増えているサービスの一つだ。同社で会員獲得のために活躍しているのが、プレミアム会員事業部部長の加藤恭輔氏だ。

同氏がMOVIDA SCHOOLで語った「プレミアムサービスをグロースハックするために必要なこと」についてまとめた。

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グロースハックの「開発」と「訴求」

グロースハックの領域として、「開発」と「訴求」がある。開発は、MVP(実用最小限プロダクト)を作って価値検証を繰り返しながら、少しづつ作り上げていく。アイデアの段階から検証していき、次第にデザインやプロダクトに落とし込んでいこう。

訴求では、検索エンジンによるオーガニック検索経路のサイト訪問、ユーザのサイト訪問数の頻度増加、ブックマークやアプリのダウンロード、有料機能の無料版お試し利用、有料会員化、継続利用というプロセスがあり、特に有料機能のお試し利用以降にどういった施策をしていくべきかを、実際に私が取り組んできたことをもとに話していきたい。

サイト内の有料会員流入を高めるための施策を打つ

有料会員化に向けては、サイト内からの流入とサイト外からの流入、決済情報登録のなし・ありの二軸で考えてみる。サイト内流入では、ユーザに属性別にサービスをオススメする機能を実装し、プレミアム機能を7日間無料で体験してもらうことができる。決済情報を登録をしたら、さらに7日間は課金せずに解約可能にするといった特典も用意している。

その結果、属性別のアプローチは当初の想定よりも効果が薄いことがわかった。登録後一定期間は課金せずに解約できる機能は、思っていた以上に効果があった。そうしたことから、登録ページをN秒以上閲覧したが登録に至らなかった人に対して、オススメを表示するなどの違った対応をとっている。

サービス相互の会員送客でプレミアムの認知を高める

サイト外からの流入に対する訴求は、Yahoo!プレミアムさんなどの外部サービスとの連携で、相互の会員限定のサービスの無料クーポンの配布を行った。対象者限定で、プレミアム会員登録をしたら一定期間無料で利用できるサービスを提供し、その後クレジットカードで決済して登録いただいた方には、さらに2ヶ月分の無料クーポン配布を行った。

これらの施策は、大幅な会員登録には寄与しないが、プレミアムサービスそのものを知ってもらうという認知拡大に寄与した。また、決済情報を登録するクーポンを通じて、クレジットカード登録が促進できた。

決済手段で粗利ベースのLTVは異なる

クレジット登録はとても重要なポイントだ。一度登録することで継続的な顧客として関係性を構築することができ、継続利用が長くなり結果としてLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)が高まる。

キャリア決済では、携帯の機種変更などによる一時解約が発生し、必ずしも再登録してくれないユーザが発生してしまう課題がある。クレジットカード登録は、決済手段の中で最もコストが低い方法だ。

クレジットカード登録はユーザにとって手間がかかるため、登録せずに離脱する比率が他の決済手段に比べて高い。だからこそ、無料クーポンなどのインセンティブを付与することで、登録を促している。

月額課金はLTVを意識しろ

月額課金サービスの最大のポイントは、LTVの最大化だ。LTVが増すほど、CPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)が高くなってもメリットが大きく、顧客獲得の施策の幅を広げることができる。また、長期的に見れば経営を安定化することができるため、最も意識すべき指標の一つと言える。

招待機能は、インセンティブプランを考えること

現有料会員からの招待で、二ヶ月無料で利用可能になる招待機能をつけたが、現時点ではほぼ登録に寄与しておらず、インセンティブプランの再設計が必要だと考えている。UberやDropboxなど、友達を招待すると使える容量が増えたり割引が使えたりする仕組みはとてもうまく、参考にしていきたいと考えている。

ステップを踏んだABテストを行うこと

ABテストは、メルマガPR、ウェブ登録ページ、その後にアプリ導入という三段階で施策の実施が、最も安全にテストが行うことができる。それぞれのステップで反応が良かったワーディングは、社内ブログなどで共有しながら、サイトのトーン&マナーや大枠の方向性を確認しながら進めていくことが大切だ。

地味な事をコツコツと

登録導線のABテストは、一見地味だが着実に成果をだす。しかし、やり続けてもCVRはある一定程度の数値から横ばいになる傾向があるため、状況に応じて次の施策に切り替えるなどの判断が必要だ。

スマホユーザには、ストレスを与えない導線を確保する

スマホの導線は、シンプル、スムーズ、スピーディの三つに気をつけること。とにかく、ユーザに対してストレスを与えないようにすることが重要だ。

最も高価の高い施策を常に実施すること

グロースハックは、登録に至る段階的な設計と、会員獲得へとつながる施策図をつくることが大切だ。また、大量のテストができる基盤をつくり、さまざま施策を打ちながら仮説検証を行おう。グロースハックで一番忘れてはいけないことは、施策が地味か派手かではなく、どの程度効果があったのかを見極め、効果の出る施策を打ち続けることだ。

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