テラモーターズがネパールに支社を開いた理由——桒原康史(くわはら・こうし)海外営業部長に聞く

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ネパールに開業した、テラモーターズのショールーム。

※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから

日本を拠点とする電動バイクのスタートアップ、テラモーターズは、ベトナムフィリピンインドに支社を開設するなど、この一年間休む間もなく活動してきた。同社は世界中のディーラーとの提携も進めており、先週はネパールでのバイク販売の提携を発表した。確かにネパールは大きな市場ではない。しかし、今週はじめ、私はテラモーターズのオフィスを訪問し、海外営業の責任者を務める桒原康史(くわはら・こうし)氏がネパールが理想的な市場である理由を教えてくれた。

市場参入するか、現地法人や工場をつくるかを判断するには多くの要素があります。確かに、中国には大きな市場があり、インドネシアにも大きな市場があります。しかし、それぞれの市場での競合の存在、提携相手の存在、政府の意向を考える必要があります。我々が支社を構えたところは、いずれも現地の政府が電動バイクの導入に熱心なのです。ネパールが電気自動車に関心を持っているのは、アジアでガソリンが一番高いからです。

欧米の視点から見れば、電化するという決断は環境保護に起因することが多い。しかし、桒原氏は、国別のガソリン価格と一人あたりGDPの対応表を見せてくれた。それには、ガソリンが高くGDPが低い国がリストアップされており、地球の環境保護とは全く関係のないものだった。

すべては、お金を節約するためというわけだ。

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カトマンズで開催した記者会見は満員御礼。

従来のバイクと電動バイクの関税の違いから、テラモーターズはガソリンバイクよりも約100ドル安く電動バイクを販売できることになる。近年ガソリンや軽油が値上がりしているネパールで、同社は今後の展開を楽観視している。[1] カトマンズでの営業開始を発表した記者会見には有名メデイアから約150人が集まった。これは、将来に対する期待の現れだろう。

桒原氏によれば、カトマンズは端から端まで15キロほどの小さな街なので、フル充電で45キロ走れるテラモーターズのバイクがあれば、市内を走り回るのに十分だ。カトマンズの大気汚染は世界でも最悪と言われるほど悪名高く、現地政府はテラモーターズをより歓迎したがるわけだ。

同社はこれからの一年で電動バイク1,000台の販売を目標としており、これまでにディーラーを通じて500台を販売した。市場はネパールではよい状態だが、それでも年間20万台しか売れない小さな市場だ。しかし、まだアーリーステージのテラモーターズにとっては、無理をせずに拡大できる最適な市場と言えるだろう。

同社は現在27人の社員を擁し、現地オフィスのスタッフを募集中だ。

日本企業というアドバンテージ

おそらくテラモーターズで最も興味深い点は、同社が日本企業だということで、どれだけ恩恵を受けているかということだと思う。桒原氏によれば、同社が営業している国々で、同社が電動バイクを販売する最初の会社というわけではないが、日本発ということで、よいサービスを提供するだろうという信頼を得ている。競合他社の多くは、バッテリ性能が悪かったり、品質に問題が生じたりして、すぐに悪評を買ってしまった。

(競合他社は)中国から輸入してバイクに組み上げた後、販売していました。人々は電動バイクに興味はあったものの、その品質に満足していませんでした。日本発の電動バイク製造企業は、我々だけだったのです。人々は日本車や日本製品がよいことを知っています。日本企業が電動バイクを製造するなら、それはよいものに違いないと考えるわけです。

日本の家電メーカー各社の多くが勢いを失っているとはいえ、この国の品質に対する評判は保たれているようで、次々と海外のビジネスパートナーと協力関係に至っている。以前にも書いたように、これが中国が今も克服しようとしているハードルであり、そして克服するにはまだしばらく時間を要するだろう。

アジアから世界へ

同社の海外オフィスに加え、テラモーターズには、シンガポール、トルコ、メキシコ、イタリア、エジプト、ナイジェリアにディーラーが居る。桒原氏自身も、ここ数ヶ月、海外展開に忙しい日々を送っている。

2ヶ月かけてアフリカを巡りました。エチオピア、タンザニア、ケニア、ナイジェリア、エジプト、南アフリカです。少し日に焼けているでしょ(笑)。同僚は、南アメリカ、グアテマラ、ペルー、コロンビアを回りました。三輪バイクが多い地域ですね。三輪バイクを販売できるような、アジア以外の地域にも注力しているところです。

近いうちに、アメリカでもテラモーターズのバイクが見られるのだろうか。桒原氏によれば、アメリカはバイク市場が大きくなく、州によってバイクに対する規制が違うため、今のところ、大きな興味を持っていないとのことだ。

おそらくアジアこそが彼らの主要な市場であり、インドでは確実な前進を見せている。最近、インド最大の自動車ショー「Delhi Auto 2014」に出展したところ、同社の評判は上々だった。カトマンズ同様、デリーも大気汚染問題に頭を悩ませており、インド政府は2020年までに、街を走る車のうち電動バイクを現在の3倍に増やしたいと考えている。

テラモーターズがさらなる成長を見せるのを楽しみにしたい。おそらく、日本で最も面白い最近の日本企業であり、起業当初から海外戦略をうまく取り入れているスタートアップである。

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  1. 桒原氏が示した数値によれば、2012年の石油や軽油価格は10年前の2倍以上だそうだ。最近のメディア報道も、この状態を反映している。

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