CeBIT 2014に見るスタートアップ・トレンド〜ドイツ最大のITカンファレンスの内覧会から(2/2)

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早くも暦は3月を迎えた。再来週10日~14日までの間は、ドイツ・ハノーバーで CeBIT 2014 が開催される。

CeBIT のスタートアップ・コンペティション「code_n」には60カ国450社からのエントリーがあり、うち50社が参加することになる。先日そのプレビューイベントが開催され、イベント期間中に会場を賑わすことになるスタートアップが報道陣向けに公開された。THE BRIDGE では前編としてそのいくつかを取り上げたが、本イベントの開幕を約1週間後に控え、加えて出展予定の興味深いスタートアップをお伝えしたい。

動くおもちゃが簡単に作れる Kinematics

筆者も幼少の頃、「○年の科学」とかを購読していて付録のキットを楽しみにしていた口だが、最近の子供たちは、どのような科学雑誌で学んだり遊んだりしているのだろう。

ベルリンに本拠を置く Kinematics は、いわゆるスマートトイを制作するスタートアップだ。Power Brain と呼ばれる心臓部、Twister と呼ばれる駆動部を組み合わせ、レゴブロックを組立てる要領で、あらゆる種類の動くおもちゃを作る楽しみを子供たちに与えてくれる。できあがったおもちゃは、Bluetooth 経由でスマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスから操作することができる。

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見学者の中からは価格に対する質問が出されたが、セットの種類によるようで、1セットは数百ドル程度とのこと。ただし量産体制には移行していないようなので、あくまで参考価格のようだ。子供たちに IoT (Internet of Things)に興味を持ってもらうための入り口と考えれば、この商品は買いかもしれない。

指紋が読み取れるタッチスクリーン Fiberio

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インターネットの時代にセキュリティを確保する上で、生体認証は有効な手段だ。しかし、一時期は銀行のATMに静脈パターン・リーダーが設置されたり、一部のラップトップには指紋リーダーがついていたりしたものが、今ひとつ一般的に普及しないのはなぜだろう。筆者はその疑問に対する明確な回答は持ち合わせていないのだが、おそらく、コストの問題か、使い勝手の問題かのいずれかだろう。

Fiberio は、スクリーンパネル上で指紋認証を可能にするソリューションだ。操作している人が誰かを認識できるので、これが銀行ATMなどに採用されれば、暗証番号やログインなどの認証プロセスはもとより、キャッシュカードさえ必要なくなる。空港でのチェックイン、コンビニエンスストアのマルチ情報ターミナル等で、個人情報を投入するまでもなく、ユーザ個別のカスタマイズされた画面の表示が可能になるだろう。

日々の仕事を通じて、エコロジーを支援できる ecotalk

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ドイツは環境保護に対して意識が高い国だ。十年以上前、初めてドイツを訪問したとき、確かメルセデス・ベンツの本社があることで有名なシュトゥットガルトでのことだったと思うが、ゴミを出すときに十数種類以上の分別を求められて、衝撃を覚えたのを記憶している。契約する電力会社を一つ選ぶにしても、隣のフランスから輸入された原子力由来の安い電力を購入できたり、割高ながら自然由来のグリーン発電の電力が購入できたりと、エコロジーのコンセプトを日常の中に感じることができる。

ecotalk はビジネス向けのテレカンファレンス・ソリューションだが、サービスの提供に必要な電力がすべてグリーン電力で賄われており、テレカンファレンスを使った利用時間にあわせて、植樹が実施される。サービスに特別な技術が使われているというわけではないが、日常のビジネス活動の中から、企業はごく自然に環境保護に参加できることが評価され、CeBIT で優秀スタートアップに与えられる Startup Me Up 入賞の称号を獲得した。とかくビジネスモデルやスケーラビリティを追い求めるスタートアップ業界において、ソーシャル・アントレプレナーシップの一つの方向性として注目に値する。

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危険を事前に察知し、安全な運転を促す Continental のインテリジェントカー

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Continental は、当地ドイツ・ハノーバーに本拠を置く世界4位の自動車部品メーカーだ。Continental では、IBM や Cisco といった大手IT企業と共同で、インテリジェントカーのソリューションを開発している。例えば、アウトバーンを走行中に車載カメラなどから前後左右の車の状況、運転手の意図を読み取り、イルミネーションや振動で注意すべき点を教えてくれる。実際の動作については画像や文章では伝えにくいので、機会が許せば、ぜひ会場のスタートアップ・ブース「code_n」に設置されるデモカーの試乗を体験してもらいたい。

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日本では近年、多くの自動車メーカーが接近時の自動停止や車間保持機能など、数々のインテリジェント機能を自前で開発し実装してきた。車のインテリジェント化が進むにつれ、自動車メーカーは自らの守備範囲を超えて広範な技術の網羅を求められるようになり、コストやリソースを効率的に使うという観点からも、今後、他社との共同開発は増えて行くのだろう。ただ、ITS(高度道路交通システム)周辺のサービスの実現については、ホンダテラモーターズスマートドライブによるビッグデータを使った事例など、日本の自動車メーカーやスタートアップの方が、数歩先を行っている印象を持った。


本稿で紹介したのは CeBIT 2014 に出展・登壇するスタートアップ50社のうちのごく一部だ。実際に自分の目で確かめたいという人は、ここからチケットを購入できる。

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