キヨのシリコンバレー探訪記は連続起業家の小林清剛氏がシリコンバレーでみつけた「気になる」スタートアップをインタビューする不定期連載です。毎回おひとりずつ、小林氏がみつけたスタートアップのサービス紹介とファウンダーの素顔に迫ります。
初回は北米拠点でパーソナルモビリティの開発、販売を推進するスタートアップWHILL代表取締役の杉江理氏。500Startups(以下、会話中は500と表記)に採択されたジャパニーズ・スタートアップの挑戦をキヨが聞いてきました。(本文中の敬称略)
別にシリコンバレーに憧れてきたわけじゃないです
小林:こんにちは。今日はどうぞよろしくおねがいします。まず最初にWHILLについて教えていただきたいのですが。
杉江:次世代の一人乗りパーソナルモビリティを開発して販売しています。全ての人の移動を楽しくスマートにするというのがミッションですね。
小林:現在拠点をこちら(サンフランシスコ)に置いてますけど、何かメリットってあるんですか?
杉江:ユーザーが多いからですね。マーケットが(日本に比べて)8倍近くあります。はじめ日本でやったとしてもいずれはアメリカに行くだろうと考えていたので、じゃあ最初からアメリカでやった方がいいだろうという判断です。それに問い合わせが多かったのもこちらなんです。なので、自然な流れですね。
またアーリーアダプターや新しもの好きが圧倒的に多いですし。逆輸入で展開した方がいいだろうという判断もありますよ。
小林:こっちでオフィス作って苦労してる点は?
杉江:えーっと英語ですかね(笑。
小林:私も苦労してます(笑。
杉江:やっぱりベーシックに会社設立とかは大変でしたね。全くわかんなかった。そこは苦労しましたね。 ただ、幸運なことに500に入ったので、弁護士やどの銀行開設がよいかなどそのあたりは紹介してもらえました。
小林:確か500ってB2Bが多くなかったですか?ものづくり系はあまり聞かないような。500でものづくり系やって役だったこととかありました?
杉江:あんまりないですね(笑。ただ、ネットワークはすごいものがあります。北米に「ジャパニーズ」がやってくるわけです。なんなのこいつら、ってなる。でも500に入ることで何者でもない僕らが何者かになれた訳です。500ファミリーの一部てあるとその後ろ盾の大きさはすごいものがありました。DemoDayで投資家にプレゼンするわけなんですが、資金調達に500に入っているというだけで会ってくれる確率が高まるんです。
小林:印籠みたいなものですね。
杉江:そうです。投資家にしてみれば「ひとつクリアしてるんだ」という感じなんでしょうね。
小林:日本人には厳しいですか。
杉江:日本人というか、海外から来る人には信用を求めますね。まあ、アメリカ人に対してもそうですが。
小林:特許関連も結構大変と聞きますし。
杉江:特許については最重要課題で取り組んでますね。CTOの福岡(福岡宗明氏)は元オリンパスで特許関連の事もやっていたので彼と国際特許事務所と一緒にやってます。安全性は特に注意してて、インターナショナルスタンダードの国際的な安全基準があるんですが、それをしっかりとって「安全で壊れない」というレピュテーションにしてます。
唯一有利なのは僕らがつくっているということでしょうね。ジャパニーズ・エンジニアリングってこっちではレピテーション高い。壊れないとか性能がいいとか。そんなイメージがまだまだある。プロモーション用の動画を作ったんですが、アメリカ人がジャパニーズ・エンジニアリングって書けっていいましたからね。それ以外に日本人であるメリットはないかもしれません(笑。
小林:なるほど、おもしろい。
杉江:さらに地産地消っていうのでしょうか。メイド・イン・USAでジャパニーズ・エンジニアリングというのがこちらでは最高らしいです。
小林:エンジェルリストでみると20人ぐらいのAngelから投資をいただいているようですが。
杉江:比率的に半分が日本、4割がアメリカ、1割が台湾という構成ですね。こちらにネットワークがある人、マニュファクチャリングに強い人、という僕らが必要なところを埋めてくれる人にAngelになってもらっています。
小林:投資家たちは500のネットワークからきたんですか?
杉江:500やYC(アクセラレーターのY-Combinator)のポートフォリオからハードを探してくるらしいんです。
小林:500で驚いたこととかってあります?
杉江:DemoDayに備えてピッチやるじゃないですか。あれ、めちゃくちゃ練習するんですよ。たった3分のために。
500のmentor の名前がずらっと入っている日付シートが送られてきて、一人ひとスロット名前を入れて予約してみんなの前でピッチするんですね。それが1カ月続きます。ネイティブアメリカンもめちゃくちゃ練習します。デイブ(500Startups創業者のデイブ・マクルーア氏)には散々「おまえのピッチはクソだよね」って言われる。
お前の会社のビジネスの強みはなんだ?チームか?、マーケットはデカいのか?プロダクトのトラクションはあるのか? 30秒以内に3つ言えっていきなり指さされて。言えないと「帰れ」とか普通に言われる。
しかも英語でピッチしてたら突然「日本語で喋れ」って言われるんです。お前の英語クソだからって。当然周りだれも日本語わからないじゃないですか。それで分けも分からず日本語ピッチするとデイブは「日本語の方がいい」っていうんですね。なんで?って聞くと「自信があるようにみえる、英語でそうみえないのは練習してないからだ」って言うんですね。
小林:理にかなってる(笑。
杉江:これはデイブとも話するんですが、サンフランシスコ、マウンテンビュー、ニューヨークでDemoDayやるんですけど、極論そこで資金調達しないと会社が死んじゃうんですよ。じゃあ練習した方がいいよねってなるんです。
小林:他のスタートアップがアメリカに来るときのアドバイスってありますか?
杉江:アメリカとかこだわらずにユーザーが多いところでやった方がいいですよ。僕、あんまりシリコンバレーへの憧れとかなかったですし(笑。まずはそれを見極めてからですね。
◉後半へつづく。明日公開です
インタビュワー紹介
小林 清剛
1981年生まれ。2004年、大学在学中に会社を設立。食料品の輸入事業で大手通販会社・メディア等の販路開拓に成功。2005年、株式会社イン・ザ・カップを設立して代表取締役就任。珈琲豆や器具を販売するコーヒー通販サイトを運営。2009年、株式会社ノボットを設立して代表取締役社長就任。2011年8月ノボットをKDDI子会社の株式会社medibaに売却。2013年12月よりChanoma Inc.を設立し、米国でスタートアップ中。数社のVCやスタートアップのアドバイザーをしている。
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