3月25日〜26日の2日間、東京都内でウエラブル・デバイスをテーマにした国内初のイベント「Wearable Tech Expo 2014 in Tokyo」が開催されている。昨日 Day1 のセッションの中から、ハイライトをまとめた。
Ring
指輪型ウエアラブル・デバイスの「Ring」は、国内初の実機を使ったデモを披露した。プロトタイプということや、会場のネットワーク混雑から少し不安定ではあったが、創業者の吉田卓郎氏が指を上下左右に動かすと、カメラ、テキスト入力などの機能が作動した。
デバイスが小さいため、なかなか肉眼で確認するのは難しいが、発表されている Ring の仕様などについては、この記事を参考にしてほしい。

Sulon Technologies

Sulon Technologies は、3DのAR(拡張現実感)によるゲーム環境を提供している企業だ。今朝、Facebook が Oculus VR(AKQA社)を買収したニュースがテック業界を席巻しているが、Sulon は Oculus と異なり、ゲームを始める前に実際の居る部屋を3Dスキャンするため、VR(仮想現実感)ではなく AR を楽しむことができる。
Sulon は自分達のビジネスのことを Spatial Entertainment(空間を変化させてユーザを楽しませる)と呼んでいるが、今後はこのプラットフォームをゲーム以外の分野にも広げていきたいと語った。
Telepathy 井口尊仁氏 × Cerevo 岩佐琢磨氏

日本のハードウェア・スタートアップ・コミュニティを牽引する2人、Telepathy 井口尊仁氏 と Cerevo 岩佐琢磨氏による対談。洋服やカバンやメガネについて、同じものを身に付ける人がいないように、ウエアラブル・デバイスも制作のハードルが下がることで、ユーザの好みに合わせて、バリエーションが多様化していく。人間の趣向は本来多様なものなので、今後、ハードウェア・スタートアップにとっての可能性は高まるだろう、というのが二人の確信。
井口氏は資金調達の方法についても言及した。岩佐氏は、ハードウェア・スタートアップが他のスタートアップと大きく異なるのは、製造業者に支払うお金が必要という点で、ブートストラップ的にというのは難しい。そこで投資家からの資金調達が必要にあるが、基本的に彼らが聞くのは「作れるか」「売れるか」という二点で、これらを一つずつ潰して投資家を説得するしかない、と言う。
日本で起業家がハードウェア・スタートアップを始めるとき、岩佐氏のところへ話を聞きに行くのが恒例化しているようだが、岩佐氏はノウハウをオープンにすることにためらいがない。例えば、日本のスタートアップに中国・深圳の製造業者を紹介することで、彼らが日本のスタートアップが求める品質を理解してくれるようになると、日本のスタートアップ全体が仕事をしやすくなる。結果として、日本のスタートアップがグローバル・コミュニティの中で、勝てるようになればよい、とメリットを強調した。
Oculus Rift

前述した通り、Facebook に買収されたことで注目を集める Oculus だが、同社は既に日本に進出しており、日産自動車との協業例を紹介した。日産自動車は、デジタル・ネイティブ世代が車についての関心を失いつつあることを理解しており、彼らをエンゲージするためにユーザとの、車のデザインの co-creation を実施した。Oculus Rift を用い、東京モーターショウで来場者にアイデアを提案してもらったところ、14,332 のユーザ洞察と 2,018 の車のアイデアが集まった。
Oculus も Sulon と同じく、ゲームに留まらず、プラットフォームをオープンにしてコミュニティ・デベロッパと協業していきたいとしている。
映画・演劇・アニメ・SF小説の世界から見たウエアラブル

SF小説家 冲方丁氏、映画監督 本広克行氏
映画監督の本広克行氏、SF小説家の冲方丁氏、慶応大学教授の夏野剛氏、Telepathy の井口尊仁氏によるパネル・セッション。
本広氏はウエアラブル・デバイスは安定性などの点で課題が残るが、実際の映画製作にはバックアップを用意するなどすれば、被写体がカメラを意識しないですむ、これまでになかった撮影ができるだろうと述べた。
Wearable Tech Expo 2014 in Tokyo では、本広氏の所属する Production I.G. が作成したアニメコンテンツがイメージ映像として随所に使われていたが、夏野氏はウエアラブル・デバイスの将来は、すべてここ(SFアニメ)の中にあると強調した。
冲方氏はSF作家の立場から、ウエアラブルやモバイルの出現で、ストーリー展開的に主人公を孤立化させることが難しくなったと語った。スマートフォンを持っていると、主人公は誰かと連絡がつかない状況を作り出すことは難しくなる。映画「マイノリティ・リポート」で見られた、有名なスクリーンをスワイプする操作ももはや実用化されつつあり、そのようなシーンイメージを挿入しても、陳腐化してしまって SF っぽく見えないのだそうだ。
ウエアラブル・デバイスの浸透は、アマチュアでも容易にSF的な映像や文章表現を可能にできるという点で、プロの映像作家やテキスト作家はよりアイデアの工夫が求められるようになる。しかし、両方の手が空いた状態で何かを操作できるということは、クリエーションの可能性を無限に拡大させるだろう、というのが4人の共通の見解だった。
Wearable Tech Expo 2014 in Tokyo は本日2日目を迎えている。追って続報をお伝えする予定だ。
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