IVP LP Summit〜中国・深圳のハードウェア専門インキュベータ「HAXLR8R(ハクセラレータ)」を訪ねて

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2014.4.1

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香港から程近い中国・深圳は、かねてから世界の工場の異名を持つ。この地には、EMS (Electronics Manufacturing Service) と呼ばれる電子製品の生産受託会社がひしめきあい、大手・中小の電機メーカーはもとより、近年では「ハードウェアをやるなら、深圳に行け」というのが、スタートアップ界の合い言葉だ。

3月18日からの3日間、筆者は Infinity Venture Partners(以下、IVP と略す)が開催した LP Summit に帯同する機会を得た。LP Summit は年に数回、IVP が LP(ファンド出資者)を対象に投資先スタートアップを直接紹介する機会で、今回はハードウェア・スタートアップが集まる街、深圳で開催されることになった。(前回の北京での LP Summit の様子はこちら

LP Summit での紹介された興味深いスタートアップの数々については追ってお伝えする予定だが、本稿では LP Summit の見学の一環で訪問した、深圳に拠点を置くハードウェア・スタートアップ専門アクセラレータ「HAXLR8R(ハクセラレータ)」を取り上げる。IVP は HAXLR8R や同じ運営母体である大連のインキュベータ Chinaccelerator(中国加速)と、数年間にわたって協業関係にあるのだそうだ。

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筆者が初めて深圳を訪れたのは20年程前のことで、当時、香港はまだ中国に返還されておらず、深圳と香港の国境は、物乞いの人々がひしめくカオスだったのをよく覚えている。今や深圳は、GDPベースで北京・上海・広州に続く中国第4の経済都市だ。その深圳の中心部、目抜き通りにある高層ビルの10Fに HAXLR8R はオフィスを構えている。

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HAXLR8R のオフィスに入ると、ファウンダーでマネージング・ディレクターを務める Cyril Ebersweiler とゼネラル・パートナーを務める Benjamin Joffe が我々を迎えてくれた。Cyril はアイルランドに本拠を置くファンド SOS Ventures の投資パートナーで、Benjamin は宇宙葬スタートアップ Elysium Spaceの記事でも紹介したように、アジアのスタートアップ・シーンを語らせれば右に出る者は居ない。

起業家が晴れて審査を通過し HAXLR8R に入ると、最初の一週間は互いの交流を深めるために、簡単なプロトタイプを作る機会が用意されている。参加した起業家は所属チームに関係なく、出されたお題に基づいて何かを制作するのだ。ここで出会った起業家同士が新たなチームを形成するケースもあるだろう。

以降、30日、60日、90日のタイミングでデモデイが開催され、その都度、他の起業家や投資家かからの意見を受けて、プロダクトが研鑽され、ビジネスがピボットしてゆく。コピーキャットの追随を許さないようにする観点から、最後のデモデイが開催されるまで、インキュベーション・プログラム参加中のスタートアップが取り組むプロダクトの内容は、原則的に外部非公開となっている。我々も今回の訪問で多くの興味深いスタートアップや彼らのプロダクトに出会えたが、その詳細をここに書けないことをご容赦いただきたい。

HAXLR8R オフィスから見える深圳市街。大気汚染が心配なところが、Benjamin によれば、サンフランシスコよりも空気はキレイらしい。
HAXLR8R オフィスから見える深圳市街。中国と聞くと、とかく大気汚染を心配しがちだが、Benjamin によれば、サンフランシスコよりも空気はキレイらしい。

しかしながら、前回のインキュベーション・バッチを終えたスタートアップから話を聞くことができた。アメリカ出身のスタートアップ Helios は、iOS アプリと連動してハンドル部が色を変えて点滅するシステムを開発している。目的地をセットしておけば、進むべき方向のウインカーが点滅するので、運転者はGPS やカーナビを凝視する必要がない。

Helios
Helios

HAXLR8R は、深圳の製造業者との調整などもコーディネイトしてくれるので、Helios のように、インキュベーション期間を終えた後も、深圳に留まり作業を続けるスタートアップが少なくないようだ。そのようなスタートアップのために、HAXLR8R はオフィススペースの一部を彼らに開放している。

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HAXLR8R のオフィスは 10F と 11F の2フロア。上階はプログラム参加中のスタートアップと事務局のスペース、下階はプログラム卒業スタートアップの活動やイベントのスペースとなっている。

HAXLR8R のインキュベーション・プログラムに参加するスタートアップの出身国を見てみると、約半数をアメリカが占め、残りはヨーロッパとアジアからやって来ている。これまでに2回のバッチが実施されているが、日本から参加したスタートアップは、電力の見える化サービスを提供する Sassor のみだ。HAXLR8R の参加スタートアップからの視点にもスポットを当てる観点から、THE BRIDGE では近日、Sassor の HAXLR8R 体験談も取り上げる予定だ。

HAXLR8R の Cyril と Benjamin は共に日本で生活したことがあり、日本語が堪能であり、ハードウェアに強い日本のスタートアップのインキュベーション・プログラムへの参加を切望している。次回のバッチは7月16日から開始、エントリの締切は5月25日だ。本気でハードウェアを志す起業家におかれては、この機会に挑戦してみてはいかがだろうか。ハードウェア・スタートアップが集まるこの街で、プロトタイピングとハードウェア・ビジネスのノウハウを体得し、貴重な経験に出会えるだろう。

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