「自動運転車はこのセンサーがあればできちゃうんです」ーー日本のものづくり系スタートアップが語る「世界に勝つ方法」 #MSVJP

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Googleカーと同じ仕組みなんですが、実はこのセンサーさえあれば、自動運転ってできるんですーー

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これはあるイベントセッションでのひとコマで、先日インテル・キャピタルからの出資を発表したZMP社がさらりと紹介した自社の事例スライドだ。ぜひこちらの動画をご覧頂きたい。

あれだけ世界中を驚きに包んだGoogleの自動運転の技術と同様のものも実はここにある。ただ、このセンサーはひとつ1400万円もするそうで、ZMP社では 既存センサーを使って自動運転を実現しようとしているのだそうだ。

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5月29日から2日間開催されているMicrosoft Ventures Meetupで、私たちTHE BRIDGEはセッション企画ということで「Internet of Things(以下、IoT)」をテーマに選ばせてもらった。

登壇したのはCerevo代表取締役の岩佐琢磨氏、Sassor取締役の宮内隆行氏、ZMP代表取締役の谷口恒氏、日本マイクロソフト乗務執行役員CTOの加治佐俊一氏で、モデレーターとしてMicrosoft Ventures Tokyo代表の砂金信一郎氏がマイクを握った。

冒頭、砂金氏はひとつのスライドで進行を始めた。

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マイクロソフトとしてはこれらのバラバラのカテゴリ、ビジネス領域のものを「データ」で繋ぐという点にビジネスチャンスを考えている。「各社をデータで繋ぐと面白いものが見えてくるかもしれない」(加治佐氏)というように、例えばNestなんかは家庭の温度調節から得られるデータで燃料費の変動を予測しよう、というアイデアも聞いたことがある。

ではこのIoTというものはどう捉えるべきなのか。これについては私も過去、岩佐氏らと話をしたことがあるが、ハードウェアの形から辿る方法もあれば、ビジネスモデルから考えるアプローチもある。この分類は大変難しい。

実際、岩佐氏もここでは「ネットに繋がる全て」が対象になると話しており、「クラムシェル型、ハンドセット、タブレット、サーバーなどの形になってるもの以外は全てIoTとしてよいのでは」と、この分野のカバー範囲の広さを説明していた。

「Internet of Thingsと言われる分野は広大なブルーオーシャン。例えば靴に3Gモジュールが入ってればIoTだし、その広い海の中にぽつぽつとグラスのようなものやウェアラブルのようなものがある程度。そういうイメージ」(岩佐氏)。

つまり、ビジネスチャンスはいくらでもある状況なのだ。谷口氏も「ネットに繋がるのはもう当たり前。IoTってワードもアナリストとかが付けただけで、意識しなくなる」と、この「バズワード」の補足説明をしていた。

また、宮内氏が言及していたモノとモノとの会話(M2M)は興味深く、マシン同士の会話インターフェースの研究や展開がさらに進めば、本当に人の手がどんどんかからない世界が広がる。「今はまだThing(モノ)の段階。Things という複数形になって初めてIoTの世界と言えるのでは」と付け加える。

セッションで面白かったのは、やはり彼らが日本発で世界とどう戦うか、という視点だ。

砂金氏とは企画段階でも「日本のものづくり」については欧米やアジア諸国に比較してアドバンテージを感じつつも、現実にある「ある種のギャップ」はどこにあるのか、ということが話題になっていた。

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壇上で岩佐氏は、日本のものづくりが世界に勝てる要素として人材と、ブランドがあると話す。

「例えば、この会場でイタリア製と中国製のバッグをふたつ並べてどちらでも持っていってください、としたらやはりなんとなくイタリア製を選ぶ方が多くなると思うのです。別にそのふたつに品質の差があるかどうかは分からなくても、です。

同じように日本には楽器や車、家電にも同様のブランドがあってそういった先輩たちが作ってきた強みを使わない手はないんです」(岩佐氏)。

岩佐氏はさらに、このブランドを築いてきた人材のノウハウは継承されていて、その二つが世界に勝つためのキーになると話していた。

でも実際は世界的に韓国メーカーが押してきてる現実もある。これが前述の砂金氏との会話での「もやもや」なのだが、例えば、他国のメーカーがCerevoの出した製品の完全なコピーを作って一気にマーケティングをし、安い価格でばらまかれたらどう対抗したらいいのだろうか?

この砂金氏の質問に「本当にさくっとそれをやられたら負ける」と岩佐氏。やはりそれは怖い戦法なのだ。

「だからやられる前にシェアを取っておくことが大切なんです。例えばGoProなんかはまさにその戦略で電撃戦を制したパターン。 欧米人って見せ方がうまい。あまりよくなさそうなものでもこれはグレートだぜ!って持っていくんです」(岩佐氏)。

ただ、この回答に砂金氏は「私たち…外資系なのですが」とちょっぴりはにかんでいた。

さておき、ウェブサービスオンリーのビジネスと違い、IoT関連は具体的なハードウェアを伴うため、とにかく資金力が必要になる。この点は投資サイドも動き方が変わってくるだろう。

<参考記事> 20億円規模のものづくり系ファンドもーー #IVS で聞く、Cerevo新体制が描く「国産ものづくりの未来」とは

また、谷口氏はさらに先を見据えて「ネットに繋がるのは当たり前なんですよね。それよりもRを乗っけてROT(ロボットオブシングス)にして、あらゆるものをロボット化して付加価値を高める必要がある」と、技術による差別化こそ日本が世界に勝てるキーになるとしつつ、「あまり大手がやらない技術をベンチャーが取り組んで、一緒にやれば勝てるのでは」と大企業とスタートアップの共闘を呼びかけていた。

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