キーマン4人が語る、マイクロソフト流スタートアップ・コミュニティとの付き合い方 #MSVJP

SHARE:
bar-panel-featuredimage
左から:澤円氏(マイクロソフトテクノロジーセンター センター長)、池照直樹氏(Dynamicsビジネス本部 テクノロジーストラテジスト)、加治佐俊一氏 (業務執行役員 最高技術責任者)、砂金信一郎氏(Microsoft Ventures Tokyo 代表)

本稿は、5月29日から2日間に渡り開催された日本マイクロソフト主催のカンファレンス、de:code と同時開催となった Microsoft Ventures Meetup の取材の一部である。2日間のプログラムの最後のセッションでは、モデレータの砂金(いさご)氏曰く、「日本のマイクロソフト社内で、最もキャラクタの濃い人物を上位から並べたら、このような顔ぶれになった」という面々が、マイクロソフトがスタートアップ・コミュニティに何を提供できるか、何を期待するかについて議論した。

登壇者は、

  • 日本マイクロソフト株式会社マイクロソフトテクノロジーセンター(MTC) センター長 澤円(さわ・まどか)氏
  • 日本マイクロソフト株式会社 Dynamicsビジネス本部 テクノロジーストラテジスト 池照直樹(いけてる・なおき)氏
  • マイクロソフト ディベロップメント株式会社 代表取締役社長 兼 日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 最高技術責任者 加治佐俊一(かじさ・しゅんいち)氏

…の方々、モデレータはMicrosoft Ventures Tokyo 代表 砂金信一郎氏が務めた。

スタートアップ・コミュニティを支える、インターン出身者の存在

kajisa
加治佐俊一氏

加治佐氏が社長を務めるマイクロソフト ディベロップメントは、マイクロソフト製品を使う開発会社の支援や技術の取りまとめを行っているマイクロソフトの子会社だが、毎年夏期には多くのインターンを採用している。インターンとはいえ、各人には担当プロジェクトがアサインされ、社員さながらに本気でプロジェクトに従事することが求められるので、インターン期間を終える頃には、彼らの多くは、普通に英語でプレゼンテーションできるようになるのだそうだ。

一説によれば、有名大学に入り、マイクロソフト ディベロップメントでインターンし、グーグルに就職する、というのが黄金のキャリアパスという話さえあるらしい。もちろん、大学卒業後に大企業に就職するのもよいのだが、そんな中からも、自分のスタートアップをローンチしている人も出て来ているので、このインターン制度がスタートアップ・コミュニティの人材育成に役立てている、というのが加治佐氏の見解だ。

マイクロソフト ディベロップメントでは今後、学生により多くの機会を提供するため、インターン枠を拡大し、夏期だけでなく冬期や通年でインターン制度を展開することも検討中とのことだ。

スタートアップ・コミュニティを活気づける上で、大学生にスタートアップという選択肢を持ってもらうことは重要であり、インターンはそれに気付いてもらうきっかけとして、絶好の機会ということができる。

スタートアップが〝箔を付ける〟ためのお手伝い

Microsoft Dynamics のテクノロジーストラテジストを務める池照直樹氏のことを、筆者も今までに何度となくテレビや雑誌で見ることがあったが、その都度、彼の肩書きは変化していた。事実、オラクル、コカコーラなど数々の有名外資系企業を渡り歩き、マイクロソフトに入社する前は自らも企業経営を実践していた人物だ。オラクルではベンチャー向けの投資ファンドマネージャーを務めていたので、大企業とスタートアップ、起業家と投資家の対極的な双方の視点を持つ、類まれな存在と言っていいだろう。

そんなバックグラウンドに裏打ちされた言葉には、彼の見た目の圧倒感を凌ぐ説得力があった。

スタートアップがプレゼンテーションをする上で、大企業とのアライアンスというのは重要な要素。かつてファンドマネージャーをやっていたとき、起業家に「何が一番欲しいか」と聞いたら、箔を付けたいという人は多かった。これは小さなスタートアップにとっては大きなこと。我々が提供できる機会もぜひ使ってもらって、箔を付けて、スタートアップには大きく育ってほしい。

その独特の風貌から、パネルでは〝キリスト〟の愛称で呼ばれていた MTC センター長の澤氏は、スタートアップに提供できるファシリティやノウハウについても語ってくれた。

sawa
澤円氏

私のいるテクノロジーセンターも、夜は空いていることが多いのでぜひ使ってほしい。会場の造作の都合上、(ディスカッション・スペースというより)演者となって聴衆に喋るという形にはなるのだが、その分、プレゼンテーションには向く施設だ。

自分は、BizReach や Luxa の顧問もやっているのだけれど、そういうところでも、業界別の作法とか、今までに自分が体得したテクニックを多く提供している。そういうサンプルがたくさんあるので、起業家にシェアしていきたい。

企業活動において、大企業からの信頼を得ることは大きな価値である。経営者ならこの原則を頭のどこかに常に持っているだろうが、自らが目指すビジネスに邁進しすぎると、ついつい忘れがちだ。「たとえ、箔をつけるためだけでもいいから、自分達の名前や場所を利用してほしい」と言ってもらえるのは、非常にありがたい申し出だ。

相手を儲けさせれば、自分も儲かる

この数十年間、マイクロソフトに限らず、日本に参入してきた外資系IT企業の成長は、パートナーセールスの歴史である。自社製品を売ってくれる良きパートナーを見つけ、日本企業に積極的に営業展開してもらう。そのためには、自らの利益については半ば顧みず、パートナーにメリットを還元する必要があった。

ビジネスモデルにもよるだろうが、スタートアップのような企業が単独で販売チャネルを大きく拡大するのは難しい。ビジネスを成長させる上で、他社とのアライアンスやパートナーシップは必然だが、これを成功させる上での秘訣を池照氏が語ってくれた。

iketeru
池照直樹氏

私がスタートアップをしていたとき、マイクロソフトからも多くの支援をもらった。なぜなら、私がモノを売ったら、マイクロソフトが儲かったから。これは非常にシンプルなことだ。

自分が儲けたいという話はとりあえず横に置いて、どうすれば相手がハッピーになるか、相手が何を求めているかということを考えていると、そのアライアンスはすごくうまくいく。その利益は結果的に自分に返って来る。スタートアップの経営者は、ぜひそれを考えるところにエネルギーを費やしてほしい。

一方が他方を助けるというスキームだけでは、そのアライアンスの関係は長続きしない。相手が儲けることで自分も儲かるという形。相手を儲けさせるという観点をスタートアップは忘れがち。それで結果的に自分が儲からなかったら、そういうビジネスモデルを作れなかった社長がダメなだけ。(全員笑)

これは、スタートアップ・コミュニティでしきりに言われる〝Pay it forward〟、あるいは〝損して得取れ〟の商人精神に通じる考え方だ。


モデレータの砂金氏によると、マイクロソフトの社内でも、以前に比べ、スタートアップ・コミュニティに対して、いろいろな活動をすることは自由に行えるようになった。しかし、それでも、大企業の枠組みの中でスタートアップ向けの活動を行うには、さまざまな社内調整が求められることは想像に難くない。de:code の中で Microsoft Ventures Meetup を開催した意義について、彼は次のように強調した。

de:code は本来、マイクロソフトのエンタープライズ・ユーザ向けのイベント。その一角に、スタートアップ向けのイベント(Microsoft Ventures Meetup のこと)を持って来たのには意図がある。

マイクロソフトはエンタープライズ・ユーザとも付き合いがあり、スタートアップとも付き合いがある。その両者をうまく引き合わせられるのは、自分達にできることだと考えている。

ビジネス界では、しきりに「オープン・イノベーション」という言葉も聞かれるようになった。マイクロソフトのみならず、日本の多くの大企業がスタートアップとの試みに挑戦してくれることを願ってやまない。

----------[AD]----------