最大の強みは、「違いを愛していること」:世界から人権問題をなくすために活動するNGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の吉岡利代さん【前編】

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Yoshioka-Rio

世界最大規模の国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」の、東京オフィス創設メンバーである吉岡利代さん。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、世界90ヶ国以上の人権の実態を調査し、「世の中から人権問題をなくす」ことを目指して活動する団体です。

幼い頃にTVで観たある映像をきっかけに、「世界を少しでも良くしてから死にたい」と子どもながらに思ったことが全ての始まり。右向け右の日本的教育から、多様性が謳歌される地へと自ら出て行くことを高校生の時に決意。自分の強みは、そんなアメリカの地で身に付いた、「違いを素晴らしい」と思えることだと話してくれました。

国際協力や国連の仕事には、活躍する女性の姿が多く見受けられます。実際、ヒューマン・ライツ・ウォッチも、400人を超えるメンバーの半数以上を女性が占めるほど。「女性ならではの感性や気づき」を活かして活躍する吉岡さんへのインタビューです。

世界から人権問題をなくす「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」

三橋:吉岡さんと出会ったのは、数年前の友人宅での鍋パーティでしたよね。ご無沙汰しています。

吉岡:そうですね。その後もちょこちょこお会いしていますが、ゆっくり座ってお話をするのは今日が初めてかもしれません。

三橋:お元気そうで何よりです。今も、国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(Human Rights Watch)」で働いていらっしゃるんですよね。日々の仕事がどんな感じなのか、正直あまり想像がつかないんですが。

吉岡:そうですよね。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、世界90ヶ国の人権問題を調査して、その問題解決のために政府や国連に働きかけすることを主な活動とするNGOです。

三橋:吉岡さんがヒューマン・ライツ・ウォッチに参加されたのはいつですか。

吉岡:日本オフィス立ち上げの時からですね。現在の日本オフィス代表の土井香苗は2008年までの数年間にニューヨークに留学していて、その間に本部で仕事をしていました。その後、国際的に見ても人権分野でポテンシャルを持つ日本にオフィスを開くことになって。私たちは、「政策提言」と呼ぶ政府への働きかけを主に行っています。

三橋:政策提言というのは、日本の政府に働きかけるっていうことですか?

吉岡:具体的には、外務省と国会議員への働きかけです。ミャンマーやスリランカなど日本が援助する各国が抱える人権問題の解決に向けて、協力してもらうことが目的です。これまでは援助するだけで、国のあり方や人権問題に関して特に口出しをしてきませんでした。開発への関与で持つ発言力を、もっと活用しようと日々働きかけています。

三橋:どんなケースがあるのか、例を教えてもらってもいいですか。

吉岡:例えば、オバマ大統領と安倍首相が面会するのなら、北朝鮮の人権問題に日米で協力することを提言したり、ASEANのサミットで東南アジアの首相が来日すれば、現地で起きている少数民族への差別解決に向けて一言言ってもらうようお願いします。

三橋:最終的には、国会議員や外務省の判断になるんですよね。

吉岡:そうですね。ただ、ここが肝でもあるんですが、日本政府や安倍内閣の方針や外交政策に基づいて、より良い外交や国際的な影響力を発揮するための戦略的な伝え方などを提案させていただくんです。

三橋:外交戦略にもとづいて、思わず発言したくなるような伝え方をアドバイスするところが腕の見せ所だと。

吉岡:先ほどお伝えしたように、ヒューマン・ライツ・ウォッチには世界各国に調査員がいるので、現地のことを深く理解しています。現地の人や協力者とのネットワークもあるため、最新の状態が把握できるんです。そうした情報と絡めて、効果的な施策に結びつけています。

三橋:現地にも人を派遣しているヒューマン・ライツ・ウォッチだからできることなんですね。オフィスは世界中にあるんでしょうか。

吉岡:オフィスは、ワシントンDC、ロンドン、ジュネーブなど世界中にあります。グローバルでスタッフ数は400人ほどで、東京のオフィスには5名のスタッフがいます。学生インターンも常時5名ほどいます。団体は35年以上活動していますが、東京はちょうど今年4月で設立から丸5年を迎えました。

強みは、違いを愛していること

三橋:吉岡さんは、今のお仕事のどんなところにやりがいを感じますか?すぐには結果が出ない長期戦の中で、モチベーションとどう向き合うのか聞きたいです。

吉岡:やっぱり、何かが変わったという時、また被害者の方に直接会って話を伺ったりすると、やっていてよかったなと心底思います。あと、ゴールを共有した仲間の存在が大きいですね。調査員がいる場所によっては命の危険と隣り合わせの生活です。近いところに仲間や被害者がいることで、許せないという強いエネルギーに変わるのかもしれません。

三橋:そうした国際協力や国際NGOで働くことに向いている人だったり、望まれる素質ってあるのでしょうか。

吉岡:他の仕事にも共通すると思いますが、柔軟性かな。私たちはリソースの少ないベンチャーなようなもので、ルールがあまりないんです。何が起きるかわからないし、こうやるべきというやり方も定まっていない。そんな環境の中で、身体を柔軟に曲げながら自主的に行動できるかどうか。そして好奇心があるかどうかですかね。

三橋:柔軟性、どんな仕事においても大切ですよね。では、吉岡さんご自身の強みってなんでしょう?

吉岡:違いを愛していることかもしれないです。多様性が大好きで、人はそれぞれ違っていいと思っていること。だから、どんな人でも受け入れられるし、違いが面白いと思えます。私にとって、これまで最大のターニングポイントはアメリカ留学ですが、アメリカでの生活がこの考え方の基盤になっていると思います。

三橋:なるほど。吉岡さんが、国際協力や、今のお仕事に繋がるようなことに関心を持った一番最初はまだ幼い頃だったと伺いました。

吉岡:そうですね。最初に関心を持ったのは、小学生の頃です。平和な日本のお茶の間で、ルワンダ紛争の難民の姿を見て、世界にはこんなに暮らしが違う国があるのかと衝撃を受けたことを今でも覚えています。それをきっかけに、子どもながらに少しでも世界を良くしてから死にたいと思うようになりました。

三橋:テレビに写った映像がそこまで吉岡さんに衝撃を与えたのは、なんだったのでしょう。すごく強いリアクションですよね。

後編につづく。

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