15日、東京郊外にある柏の葉スマートシティで、アジア・アントレプレナーシップ・アワード2014が開催され、シンガポールのウエアラブル・スタートアップ T.Ware がグランプリを受賞した。
このイベントは、地元のNPOやインキュベータ、東京大学や三井不動産らを中心に年に一度開催されており、アジア各国から将来有望なアイデアを持った起業家が一堂に会し、3日間をかけて、ネットワーキングを楽しんだり、メンタリングを受けたりした後、ピッチ・コンテストで優勝の座を争った。
本稿では1位〜3位までに入賞したスタートアップを紹介しよう。
【グランプリ・1位】T.Ware(シンガポール) 賞金300万円
T.Ware は空気による圧力によって、擬似的に包容されたかのような感覚を着用者に与えることができる、ウエアラブルなベスト「T.Jacket」を開発している。セラピスト、大学研究者、精神科医と共同開発しており、感覚探索症や感覚過敏症に苦しむ人を助ける。
圧力はスマートフォンから遠隔で制御可能だ。感覚処理障害(SPD)、自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、アルツハイマー型痴呆症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの悩む人々の症状の改善に効果がある。
【2位】Gissco(タイ) 賞金100万円
エンジン部品などの作成に用いられる、金型鋳造法をダイガストと呼ぶ。通常のダイガストでは、金属を高温で溶解して液体にし、鋳型に流し込み冷却して固形化するのを待つ。しかし、この過程で製造中の部品にひび割れが生じることがしばしばあり、こぼれ率が30%にも上る。
Gissco が開発した方法では、金属を溶解する段階でその液体を空気泡で撹拌、semi-solid(仮訳:半固体)の状態にゲル化する。これにより、鋳型に流し込んだときに素早く固まり、ひび割れが生じにくくなる。こぼれ率は10%にまで改善される。高温溶解する必要がなく、素早く固形化するため冷却に要する時間も短くなり、全体として部品製造の生産効率が著しく向上する。
【3位】YouthsToday(マレーシア) 賞金50万円
YouthsToday は、ブランドが運営するイベントにユーザが登録・参加することで、景品・交換ができるプラットフォーム。ブランドにとっては、バイラルに影響力のあるユーザを味方につけることで、コスト・パフォーマンスの高いマーケティングが実施できるメリットがある。景品には、H&M のバウチャー、スターバックス・コーヒーのバウチャーなど多数用意されている。
現在はマレーシアのイベントのみを対象に運営されているが、今後はアジア諸国、ヨーロッパ、ひいては、アメリカなどにもサービス提供地域を拡大して行きたいとのことだ。
このイベントのスコープはアジアの起業家を対象にしたピッチ・コンテストであり、日本を含む各国のスタートアップが参加していたが、残念ながら日本のスタートアップはファイナリストに残ることができなかった。アジア各国の現地インキュベータや大学など研究機関が推薦する形で、エントリするスタートアップが選ばれるため、イベントに参加する以前の段階で、既に技術やビジネスモデルが確立されていたり、ビジネスがマネタイズできていたりするケースが多いようだ。
とかくデジタルなもの、インタンジブルなものに傾倒しがちなアジアのスタートアップ・シーンだが、このイベントでは技術を礎にしたアジア出身のスタートアップに数多く会うことができ、貴重な機会となった。毎年概ね5月上旬にエントリが締め切られるようなので、次回のアジア・アントレプレナーシップ・アワード2015への登壇に興味のあるスタートアップは、ぜひ来春、イベントのサイトをチェックして挑戦してみてほしい。
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