グローバル時代におけるキーワードはローカル。世界展開を目指すベンチャーが語るこれからのトレンド #bdash

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本稿は、B Dash Camp 2014 Summer in Fukuokaの取材の一部。

「米国スタートアップエコシステムの現状とトレンド」と題したセッションは、Noom 共同創業者兼CEOのSeaju Jeong氏、
Correlation VC managing DirectorのTrevor Kienzle氏、Uber Japan 執行役員社長の髙橋正巳氏、モデレーターにScrum Ventures General Partnerの宮田拓弥氏が登壇した。

新しく就任したUber Tokyo髙橋氏が登壇

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Uber Japan 執行役員社長の髙橋正巳氏

本セッションで注目だったのは、先日Uber Tokyoの社長に就任した髙橋氏だ。前職はサンフランシスコでソニーに勤務していた同氏。登壇当日は、一日限定の「Uber Ice Cream Truck」キャンペーンの開始でもあった。

「Uberは、日本においては交通網が発達しているなか、利便性、信頼性、透明性といった視点から、既存のタクシーとは違った立ち位置でいる。本日行ったUber Ice Cream Truckもそうだが、人と何か、点と点をつなぐことの本質を伝え、ユーザへの満足度を高める一貫として行っている」

Uberライクなデリバリーサービス系が注目を浴びるなど、ライフビジネスの可能性はNYも含めて世界において盛り上がりを見ている。Uberも、日本のようなハイヤーサービスだけでなく、「Uberx」という事業を通じて、プロのタクシードライバーだけでなく、一個人によるP2Pドライブを提供している。日本よりもタクシーが捕まりづらいNYでは、ユーザへの満足度と個人に対する雇用創出を作り上げている。

もちろん、一個人のサービスだとクオリティの差がでてきたりクレームや安全性などの課題があるため、登録に際してのフィルタリングやレーティングシステムやコメントなどによるスクリーニングを厳しくしていることにも言及した。

「先日には香港でもローンチした。ユーザの需要だけでなく、空き時間を効率的に活用したいハイヤータクシー会社などからの要望もきている。日本においても、新しいエコシステムを作り上げるように今後展開していきたい」

表示されるタスクに従って、日々の食事や運動などを記録していくことでダイエットを実践できるダイエット支援アプリの「Noom」。起業当初から、世界に展開するためにNYに拠点を構えて一から営業を行い、いまや、昨年末の辞典で1800万以上ものユーザを抱えるまでとなった。2月には日米の複数のVCからシリーズAラウンドで700万ドルの資金調達を行った

「NYは多様な人材の宝庫。はじめから世界を視野にいれたビジネスをするためには、適材的な場所で始めるべき。創業した5年前に比べて、いまは調達しやすい環境」

西海岸と東海岸のスタートアップ文化の違い

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Correlation VC managing DirectorのTrevor Kienzle氏

Correlation VCは、共同投資として他の投資家と一緒に投資したり、一回目の投資が終了したスタートアップに対して投資するというスタンスを取っている。さらに、投資の際に言われる「起業家の質」や「事業内容」などといった質的な評価ではなく、データアナリティクスによる成長分野や企業の売上などの企業利益などをもとに投資判断を行っているという。共同投資というスタンス、データアナリティクスによる投資判断という視点から、5つのドキュメントをもとに2週間という短い期間による投資判断を行うという。

「主観も必要だが、ある程度のプロセスを簡略化し、早い決断ができるようにすることで投資の回転を早くすることができる。この運用をもとに、同規模の一般的な投資会社よりも平均リターンを上回る実績になっている」

全米のスタートアップに投資しているCorrelation VC。さまざまなデータをもとに、西海岸と東海岸における起業の動きの違いについて語った。一般的にサンフランシスコやシリコンバレー、そしてGoogleやFacebookなどの巨人がスタートした場所として見られがちだが、もちろん、成長せずに終了したスタートアップも数知れずいる。実は、イグジットや平均リターン総額においては、西海岸と東海岸発のスタートアップでは実はほぼ同額だというデータがあるという。Correlation VCの投資先の数も西海岸と東海岸はほぼ同数程度だと語る。

「西はイグジット価値高いが失敗も多い。東はイグジット低いが資金の効率性高い。それぞれのローカルにいる大学やローカルな経済圏によって思想や考えの違い、能力を持った人たちは違う」

サンフランシスコやシリコンバレーだけが起業のトレンドではないと語るTrevor氏。闇雲に西海岸に行っては失敗すると指摘し、ローカルの大学の研究や人材が確保できる場所を見定め、自社のステージやどういった人材がほしいのか、どういったところに行くべきか、といったことを考えた拠点を構えるべきだと語る。

事実、NYではメディアやコマース、ファッション、ヘルスケア系サービスが集まるなど、よりローカル圏に寄ったサービスなどが多い印象だ。グローバルという言葉のなかにも、それぞれのローカル圏があつまっていると考えると、そのローカルにどういった人材がいるのか、大学や研究施設が集まっているのかに注目することで、地域地域のエコシステムを作りやすいのだろう。

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Noom 共同創業者兼CEOのSeaju Jeong氏、

Jeong氏も、起業からNYで活動してきた、数多くの投資家と会いながらネットワーキングを築いたことの苦労が、今に活きていると語る。NYにいる世界のさまざまな投資家と会う中で、ビジョンが明確化され、より世界に届くためのサービスコンセプトを磨きあげることができたと語り、リスクを取ってでも自分が行くべき場所に行くことの重要性を指摘した。そうした経験から、よりサービスに対するローカライズの重要性を考え、UXの観点からも、noomはローカル市場に100%耳を傾けたサービス設計を行っている。

髙橋氏も、Uberというグローバルサービスを展開しているものの、ローカル圏の重要性を語る。事実、日本とNYやサンフランシスコなどにおけるタクシー事情の違いや、それぞれの国々における法律を考慮したサービス設計を行っている。世界のさまざまな事情を見聞きしながら、よりそのローカルに合ったサービスを提供していきたいと語る。

「10年前20年前に比べて、最近は日本に帰国するたびに「NYで経験したあの経験ができれば」とも思うことは多い。Uberがより生活の一部となっていくように目指したい。さまざまな選択肢をユーザに提供し、ユーザの自発的な選択と経験を通じて新しい価値や文化ができてくると考えている」

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左から、モデレーターの宮田氏、Trevor氏、髙橋氏、Jeong氏

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