徹底した育成プログラムで次世代の起業家を輩出する:ファウンダーインスティテュート関西第一期デモデイ

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シリコンバレー発の起業家育成プログラムのファウンダー・インスティテュート。8月7日に、ファウンダーインスティテュート関西第一期生のデモデイが開催された。

厳しいカリキュラムが課される育成プログラム

そもそも、ファウンダーインスティテュートとはどういった起業家プログラムなのか。

創設者は、シリアルアントレプレナーでNASDAQ上場経験もあるAdeo Ressi氏が2009年からスタートしたプログラムだ。いまでは、6大陸、33カ国60都市以上で開催されている。Adeo Ressi氏ら本国がすべてを展開しているのではなく、それぞれの地域でプログラムを実施したい運営ディレクターたちが集い、フランチャイズモデルによって本国からのサポートや情報共有などを行ないながら運営している。

ファウンダーインスティテュートの特徴は、綿密にカリキュラム化された起業家育成プログラムと言っていいだろう。何と言っても、特徴的なのは卒業条件として「会社の登記」というのが明確に示されているのだ。4ヶ月間のプログラムでは、週一回のコーチングとメンタリングを実施。夜間のプログラムのため、会社員でも会社に務めながら自身のビジネスアイデアを検証・改善することができる。

4ヶ月間のカリキュラムには、世界共通のサポート教材が運営者には提供され、ビジョンとアイデア、市場調査と顧客開拓などを調査し、メンターレビューを行う。多くの起業家は、メンターレビューを受けてサービスをピボットしたり、より成長見込みのある市場へのシフトなどを行う。

他にも、法務と知的財産、販売戦略、ブランディングとマーケティング、資金調達の基礎、MVP開発とランディングページによる見込み顧客の開拓とユーザーからのプレオーダーなどの課題が求められる。カリキュラム以外にも、毎週20時間を超える課題が参加者には課せられ、必要な達成目標に達しない場合や課題をクリアしないとプログラムから強制的にドロップアウトさせられる、という徹底ぶりだ。そして、プログラム卒業の最後には、会社登記をし、プログラム中にサービスをローンチしたり卒業後にベータ版をリリースすることが求められるのだ。

これまで過去5年間で、世界で1116社のプログラム卒業企業を輩出し、卒業した企業の42%がシードラウンドなどの資金調達に成功。世界中のネットワークをもとに3000人以上もの起業家がメンターとして参加しており、さまざまな分野のスペシャリストからのアドバイスをもらうことができる。今回の関西のメンターも、エバーノートのフィル・リービン氏や『リーン・スタートアップ』のエリック・リース氏が参加している。他にも、多くの起業家がメンターとして参加しており、こちらから一覧を見ることができる。

ファウンダーインスティテュート関西を運営しているのは、みやこキャピタルベンチャーパートナーの藤原健真氏、サンブリッジグローバルベンチャーズ グローバルベンチャーハビタット大阪マネージャーの牧野成将氏だ。

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「今回の関西のプログラムには、50名以上の応募が集まったが、本国の綿密な審査やIQテストなどの知能チェックなど、さまざまな試験をクリアした20名がファウンダーインスティテュート関西のプログラムに参加している。さまざまなチェックをクリアした起業家たちを、私たちマネージャーも日々厳しい課題を課せながら、集中的なプレッシャーを与え、アイデアステージにある起業家を次のステージに育てることが目的です」(藤原氏)

IMG_0985_2ファウンダーインスティテュートは、位置づけとして、Startup weekendなどのような起業家イベントの次のステージである「アイデアステージインキュベータ」という位置づけだという。ここで育成された起業家たちが、Y Combinatorやや500Startupsなどのプログラムに参加し、シードラウンドなどを獲得し事業を成長させていく、といった位置づけだ。

プログラムスタート時には20名だった参加者も、次第に課題などをクリアできないなどからドロップアウトが生まれ、最終的には5名の起業家がプログラムの卒業生となった。

プログラム参加者に投資は行わないものの、プログラム卒業後のボーナスプールとして株式の3.1%をストック・オプションとしてファウンダーインスティテュートに渡す、ということも条件となっている。その3.5%のうち、さらに15%がファウンダーインスティテュート本体、25%がその地域の運営ディレクターたち、30%が起業家本人、そして30%がファウンダーインスティテュートに参加したメンターたちだ。この株式が、ファウンダーインスティテュート自体の資金となっており、卒業した起業家が活躍することが起業家本人も、育成したファウンダーインスティテュートに関わるすべての人たちにとっても意味のあるものだ、という位置づけだという。

そのため、プログラムを実施するマネージャーたちにも、優秀な起業家を卒業させる義務が発生する。課題提出状況やレーティングなどによっては、ファウンダーインスティテュート自体が中止となる可能性があるなど、参加者も運営者もともに徹底されたプログラム達成基準を求められるという。

こうした、参加者も運営者もともに厳しい状況の中、互いに切磋琢磨しあいながら、ともに作り上げていくプログラムは、まさに起業家育成に特化した梁山泊な場所と言えるだろう。ここから卒業した起業家たちが、今後どのように活躍するのか、期待したい。

ここからは、卒業した起業家5名4社のサービスを紹介する。荒削りなもので、かつサービスをプレローンチしたもの、これからサービスやプロダクトをローンチするものもある。その後の活動にぜひ注目してもらいたい。

輸送の最適化を図るベスロジ

現在も事業者メーカーに務めており、在職中に輸送ルートの見直しを行ってコスト削減を実現したという経験をもとにサービスを開発したという。そこで考えたのが、ベスロジで、輸送ルート別の運賃相場やお試し運送、発送から見積もりまでを仲介する。

コーヒーの美味しさを伝える定期購入サービスCanvas Coffee

Canvas Coffee10年以上バリスタの経験から、一般の人にどのようにコーヒーの美味しさをどのように伝えるか、という課題から、バリスタによるキュレーションとユーザの好みに合わせたセミオーダー、そして好みとはあえて外したコーヒーの三種類を定期的に届けるサービス「Canvas Coffee」をスタートした。現在注目がされているサードウェーブコーヒーなど、高品質なコーヒーのニーズが高まっており、今後は顧客の嗜好データをもとにノウハウや他業界で応用していくという。ウェブだけでなく、もともと実店舗ももつことから、リアルを軸に展開をしていきたいという。

「Crewbase」快適なルームシェアに向けて

ルームシェアの多くの課題は、金銭トラブルかもしれない。そこで、ルームシェアで発生する金銭トラブルを解消するためのサービスが「Crewbase」だ。ルームシェアメイトそれぞれが支払うべき価格を割り出したり、記録と集計を行いながらルームシェア内でのルール設定を作ることが目的だという。最初は家計簿サービスからスタートするが、その後は部屋自体の決済サービスや、最終的にはルームシェアのオーナーと交渉して、ルームシェアに始めからプリセットされるサービスを目指したいという。

同サービスは、プログラムに参加した学生と社会人という2名の起業家が、それぞれに違ったビジネスアイデアを捨ててジョインした。プログラム中にジョインしたチームということも、ファウンダーインスティテュートではありうることだという。

スポーツを愛するすべての人達に向けたウェアラブルデバイス

UP performaいまや、プロの世界はウェアラブルなどを用いたデータスポーツとなりつつある。そうした動きを、一般やアマチュアスポーツにも取り入れようとしてるのが「Up performa」だ。小さくて身につけやすいデバイスを携帯し、位置情報を軸にポジションや動きのヒートマップ、走行距離やスピードなどを測定する。位置情報のデータをもとにデータの直感的な可視化を行っていく。サッカー以外にも、アメフトやラグビーなど、さまざまな対象競技へ拡張させていく。2015年にクラウドファンディングに出品するのを目標に、シンプルなスポーツウェアラブル誰もが使いやすいものを目指したいという。

運営者も参加者も切磋琢磨しながら作り上げていくファウンダーインスティテュート関西。ファウンダーインスティテュート関西は、次回を秋開催に向けてさっそく準備にとりかかっているとのこと。

「関西の起業家文化を醸成し、関西から多くの起業家を輩出したい」と語る藤原氏。その一つのエコシステムとなっていくのかもしれない。ぜひ、関西近郊にいる企業予備軍の人たちは、ぜひプログラムに参加してみるといいかもしれない。

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ファウンダーインスティテュート第一期卒業生とメンターや運営者たち。

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