3Dプリンタだけじゃない! ハードウェア外装を作る装置まとめ


ハードウェアの製造やプロトタイピングには色々な装置が使われます。この記事を読む層の方であれば、真っ先に3Dプリンタが頭に浮かぶでしょう。

しかしハードウェアの製造やプロトタイピングにおいては3Dプリンタ以外にも様々な装置が使われます。(むしろ製造現場だと3Dプリンタを使う事例は今のところあまり聞きません)

というわけで今回はハードウェアの外装に注目してそれらに関わる装置であるこれら4種類を紹介します。「ハードウェアビジネスをやりたい!外装作りたい!でもどうやって作るかイメージ沸かない!」と思い立った方には参考になるはずです。

  • 3Dプリンタ
  • 射出成形機
  • プレス加工機
  • CNC工作機械

3Dプリンタ(素材を下から積み上げて成形 〜縄文土器スタイル〜)

3Dプリンタにはプラスティックや液体樹脂、金属など作った様々な方式がありますが、共通している原理は「物体の一番底から少しずつ層を重ねていって形を作る」というもの。下から少しずつ重ねていくので完成には比較的長い時間が必要です。

しかし3Dデータさえあれば金型など高価な初期投資をせずに物体を作ることができるのも3Dプリンタの長所です。よって、現状は製品の生産というより、製品の設計や試作の段階で力を発揮しています。

3Dプリンタには様々な方式があります。具体的には光造形や粉末焼結積層造形などです。加えて、使用できる素材のバリエーションや色付け、印刷した物体の強度など様々な分野で技術発展が進んでいるので今後の改良にも注目できる装置です。

    メリット:1個から安価に製造できる。
    デメリット:他の方式に比べ大量生産には向かない。

射出成形機(素材を型に流し込んで成形 〜鯛焼きスタイル〜)

同じ外装を大量に作りたい時によく使われるのが射出成形機です。身の回りにあるバケツからノートPCの樹脂製の外装まで、樹脂製の製品には大抵この射出成形機が使われます。

射出成形の仕組みは鯛焼きの製造工程、つまり「金型に小麦粉を流し込んで焼く」という様子を考えるとイメージしやすいでしょう。樹脂の射出成形の場合は「樹脂を金型に射出して流し込み、圧力をかけて成形する」というものです。射出成形のための装置である「射出成形機」は、国内でも住友重機械などいくつかのメーカーが製造しています。

射出成形においては、金属製の金型を用意することで同じ形状の物体を早く大量に製造できます。金型を適切に設計することで複雑な構造の物体も作ることができます。一方で金型の設計や製造には、ケースバイケースですが約数十万円以上のコストがかかります。加えて、射出成形の原理上、製造する物体の突起や横穴を最小限にするといった設計に関する細かい注意が必要になります。

    メリット:一度金型を作れば、短時間で大量に製造できる。
    デメリット:1個作る場合にも金型を作る必要がある。複雑な形状にすればするほどコストは上がる。

プレス加工機(素材を型でくり抜いて成形 〜パイ生地スタイル〜)

樹脂を射出する射出成形装置のように、金属の板に金型をプレスすることで金属を整形する装置がプレス加工機です。型を使って、パイ生地を抜いたり形を整えたりする工程を考えるとイメージしやすいかもしれません。

プレス加工機の仕組みは、金属で出来た金型に平たい鉄板を置き、圧力をかけて成形するというものです。下の写真はアイダエンジニアリング株式会社製のプレス加工機です。

初期のMacbook airの金属製の筐体もこういったプレス加工機を使って製造していたそうです。射出成形同様、金型があれば早く大量に物体を作ることができます。金型がコストが必要なのも同様です。

    メリット:一度金型を作れば、短時間で大量に製造できる。
    デメリット:1個作る場合にも金型を作る必要がある。複雑な形状にすればするほどコストは上がる。

CNC工作機械(素材をドリルで削りだして成形 〜彫刻スタイル〜)

MacbookなどのApple製ノートPCの筐体は一塊のアルミを削りだして作っているそうです。こうして「ユニボディ」という名で知られている頑丈な外装が完成します。

そのユニボディを実現させるためにAppleが選んだ装置がCNC工作機械です。設計図を装置に入力すると装置が自動的に金属を削ったり穴を開けたりして成形していきます。鉄の塊を彫刻のようにロボットの腕がドリルで削り上げるイメージです。

削りだすには3Dのデータがあればいいので、その点は3Dプリンタと似ています。金属の塊を1つずつ削りだすので加工の時間は射出成形に比べると時間がかかります。

CNC工作機械については3Dプリンタ同様、個人向けの製品もいくつか販売されています。主に石膏の加工をするものが中心のようですが、ドリルを変えることで金属の加工も可能です。

    メリット:金型などの初期コストがかからないので、設計変更が比較的容易。
    デメリット:1個作るまでに時間がかかる。

機材は作りたいもの、数量に合わせて適材適所に活用する

外装一つとっても色々な装置が使われるのがおわかりいただけたでしょうか。

3Dプリンタの話題になるとハードウェアクラスタの方々からは「3Dプリンタは◯◯で◯◯だから製造に使えないから◯◯だよね」といったポストが大量投入されるのが私のTwitterのタイムラインですが、世の中には3Dプリンタ以外にもこういった様々な加工機があるわけです。それらは手法や使える素材、所要時間や製造スピードなどが異なるので適材適所で活用することが重要です。

もちろんハードウェアスタートアップを始めるためにこれらの機材を全て購入する必要はありません。プロトタイピングや製造の過程ごとに、それら素材加工を請け負う企業に依頼する形となります。それらの依頼も以前よりもコスト面、スケジュール面でハードルが下がっている傾向にあります。

「ハードウェアビジネスをやりたい!外装作りたい!」と思い立ち設計などの作業をする際には「何を作りたいのか」を明確にした上で、製造を請け負って頂ける会社さんや周囲のアドバイザーの方々と議論しながら「どう作ればいいのか」を落としこんでいくのがいいでしょう。

一方で「何を作りたいのか」をよりリアリティを持って検討するためにも、現状存在する様々な手法を知っておくことは重要です。既存の手法にとらわれすぎて作りたい製品の価値が下がるのは問題ですが、作りたい製品を確実に作り上げ出荷するためには既存の手法に関する最低限の知識は不可欠です。

Web関連の技術同様、ハードウェア製造の分野も技術は常に発展し選択肢は増えています。現状大量生産には向かないとされることが多い3Dプリンタも将来はわかりません。今後もその手の情報を見かけたら随時紹介していく予定です。

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