LINEがスタンプなら、WeChat(微信)は写真プリントで攻める?——ポラロイドをヒントに開発されたWelomo(印美図)

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2008年にポラロイド社がインスタント写真フィルムとカメラの生産を中止したとき、この愛らしくも古風な技術が消えてしまったことに、世界中が嘆いた。間違うことなかれ、スマートフォンやデジタルカメラは、ダサくてクオリティの低いポラロイドに比べて、本当に私たちの生活を豊かにしてくれた。しかし、ポラロイドは古いだけあってそのミステリアスな姿を保ち続け、今日に至るまでアーティストスタジオや Tumblr ブログで生き続けている。

多くの企業がポラロイドの魅力をデジタル化、現代化しようという希望をもって現れたが、顕著に成功した企業はまだない。しかし、広州を拠点とする中国のスタートアップ Welomo(印美図) は一歩先を行っており、同社の設立者はその成長をもたらしたのは WeChat(微信)だと自負している。WeChat は中国のほぼ全てのスマートフォンに搭載されている人気のモバイルメッセンジャーだ。

自撮りプリンタは、新たなガチャガチャ?

友人とカフェにいたとしよう。写真を何枚か自撮りして、料理と共にポーズを撮ったとする。その場で自撮りした可愛い写真をバッグに忍ばせることができたら、クールだと思わないだろうか?

Welomo のプリンタがすぐそばにあればそれは可能だ。Welomo のプリンタ画面でQRコードをスキャンすると、Welomo のサービスアカウントを自動で WeChat の連絡先リストに追加してくれる。印刷する写真を選び、手元にあるWelomoプリンターの4桁のコードを入力してチャットルームスペースへ。プリンタが写真を大量コピーしてくれるので、それを友人にあげたり、カフェの壁に貼り付けたりすることも可能だ。

もちろん、ここで重要なのはプリントアウトされた自撮り写真ではない。これがバイラルマーケティングに利用できるということだ。8000元(約13.6万円)で購入できる Welomo のプリンターを所有する企業は、写真のレイアウトをカスタマイズすることができる。お店のために1台購入し、写真の下の隅の WeChat 公式アカウントを示すQRコードの隣に会社のロゴを配置する。そうすることにより、自撮り写真が名刺に早変わりするのだ。

できあがった名刺は、また健全な収益を生み出す。Welomo を置いている企業は顧客に写真を無料で提供することもできるが、Welomo は1枚あたり3元(約50円)を「推奨価格」として提示しており、WeChat に組み込まれた決済サービスを通して支払うことができる。このビジネスで、カフェの店長が億万長者になることができるわけではない。しかし、いくらか追加の収入を得ることができ、それはスーパーや映画館の表においてあるガチャガチャよりは確実なものだ。

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Welomo の共同設立者 Chance Jiang(蒋嘉之)氏は Tech in Asia に対し、価格の柔軟性がプリンタの用途を広げるのに役立ったと述べている。これまでに、中国全土に広がる火鍋料理チェーンの Haidilao(海底捞)から通信会社の China Unicom(中国連通)といった企業が Welomo プリンタをマーケティングやエンターテイメント用途で購入している。

Haidilao はもともとはプリントサービスを無料で提供し、客が友人とコンテンツを共有できるアドオンになると考えていました。ただ、後になって、このプリンタがその費用をまかなうだけの売上を上げられるとわかったのです。(Jiang 氏)

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さまざまな面で、Welomoは WeChat の競合である LINE の「誰もが決済でき、誰もがメリットを享受できる」ビジネスモデルを彷彿させる。LINEでは、大企業はスタンプを顧客に販売するために通常1セット0.99米ドルを LINE に支払う。その結果、企業は口コミマーケティングの効果と、初期投資を回収できる程度のの収入を得る。

つまり、LINE は収益を得ながらにして、ユーザ・エンゲージメントを強め、ユーザは、友人に見せびらかすことができる、バーチャルな商品を手にできるという仕組みだ。Welomo との違いは、企業がアカウントでなく実体のあるプリンタに投資し、またデジタルのイラストでなく実体のある写真を顧客に販売するということだ。

自身の運命をプリントする

Welomo は、中国の WeChat トレンドの波に乗っているが、この会社をもともと考案した共同設立者であるMike Huang(黄昱釗)氏は、いわゆるオンライン・ツー・オフラインの技術で立派なバックグラウンドがある。華南理工大学を卒業する前の2003年、彼はフィーチャーフォンで洗濯機が管理できる会社を始めようとしたことがある。このプロジェクトはさまざまな理由で頓挫したが、Huang 氏はそれで終らなかった。中国物流業界をとらえた企業向けの無線対応プリンタで最初の成功を味わったものの、よりビッグで消費者向けのものの制作をすうることにした。

初期版の Welomo は今のビジネスモデルに似ていたが、ひとつ大きな違いがある。Huang 氏とチームメイトは、最初 Welomo のプリンタを iOS と Android で動くネイティブアプリとして作り上げた。2012年にWeChatがAPIをサードパーティーの開発者に公開したとき、彼らのチームも考え直してその流れに乗った。WeChat のブレインである Allen Zhang(張小龍)氏が Welomo に接触を試み、彼らを深圳にある Tencent(騰訊)のオフィスに招いたときに、初めてこのメッセージアプリが Welomo のビジョンの核となったのだった。

当社は WeChat と接続した初のハードウェア会社です。Zhang 氏は私たちチーム全員をオフィスに招待してくれ、私たちの製品を精査するために Tencen tから主要なメンバーを全て連れてきました。彼はどのように WeChat が関連機器に接続するのか非常に関心があり、「御社のデバイスを WeChat に接続できるよう、元々あったアプリケーションを忘れてみてはどうだろうか?」と尋ねてきたのです。1週間後、私たちは元々あったアプリのすべてを削除し、 WeChat の API に直接接続しました。それは私たちにとって大きな出来事でした。

Welomo は他のスタートアップ同様、慌ただしかった2013年を過ごした。ファッションブランド業界との提携、数々のPRイベントやスタートアップ向けのピッチイベントに参加し、その結果スタートアップチームはその年、600万元(約1億円)の売上収益を記録した。

Welomo の2013年の好調な業績により、Tencent が行った WeChat の将来に関する自己評価にも好影響を与えているとJiang氏は信じている。同チームは深圳に本社がある大手インターネットサービスの Tencent と密接な関係を維持しており、同社がアプリを活用したeコマースを導入した後に、WeChat における初期の店舗出店者の1つでもあった。この店舗は大きな成功を収め、開店6日目にして同社は WeChat 単独で100万元(約1,700万円)の売上を記録した。

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WeChat の次の目標はハード進出

Tencent にとって Welomo はWeChatの店舗としてだけでなく、WeChat を携帯とはいえ多種多様の機器を互いにつなぐネットワーク構造として活用したという意味で代表選手のような存在である。Tencent が得意としてきた分野は、常に人と人とをゲームやメッセージサービスを活用しインターネットを通じてつなぐことであった。ならば、機械同士をつなぐことを考えてもいいではないか。

スマートハウスの領域は世界中で徐々に進化している中、Google はいわゆる「モノのインターネット」の座を射止めそうである。しかし中国ではまだ解禁になったばかりだ。また最近は、中国のテック大手がいとも簡単に提携し製品をローンチするので、現在主導権や規格等を握っている企業にだけ目を向け、今後どこが勝ち組になるか判断するのは難しい。Baidu(百度)は、自社のクラウドプラットフォームを活用しホームセキュリティーカメラ健康関連デバイスをローンチし、一方の Alibaba(阿里巴巴)は、「モノのインターネット」の開発初期段階のプラットフォーム「Alink(阿里物連)」を最近ローンチした。Tencentが15%の株を保有するJD(京東商城)は、スマートハウス関連製品の製造や販売を促進するプログラムを先週ローンチした

同業他社に比べ、Tencent は スマートハードウェア向けの商品を誇らしげに大々的に発表するのは比較的遅い。しかし、WeChat に接続できるハードウェア機器向けの特別なAPIを今週(原文掲載日:7月7日)発表し、その大きな一歩を踏み出した。発表の一環として WeChat の「ショッピングページ」で5つの活動を記録するリストバンドを紹介し、ユーザがネイティブアプリではなく WeChat の公式アカウントを通じて個人データをチェックできるようになった。当然、データは WeChat Moments(微信朋友圈)機能を使って友人と共有できることで、体験したことにソーシャルな要素を組み込むことができる。

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Tencent は、人同士を繋ぐことから人と機器を繋ぐことを完璧に行わねばならないと Jiang 氏は述べている。

経営幹部と接することで、彼らが自身のネットワークを戦略にしていることが理解できた。「彼らはただ大きなダムを作っている」ということわざがある。全ての水がダム内に貯まれば、その全てをどう利用するかは彼らが決めることができる。つまりその水とは、ハードウェアであり、eコマースでもあり、何にでも置き換えることが可能だ。彼らはユーザエクスペリエンスを完璧に理解しており、ユーザプライバシーを尊重している。もちろん、Alibaba も Baidu もこの強みを持っている。Baidu はハード系のテクノロジーや検索により長けている。Alibabaはバイヤーとセラーのネットワークを構築した。しかし、Tencent は、全ての人が揃った形になっている。まるで Facebook のようだ。

こうしたことから、Welomo は今のところ、メッセージアプリケーションを広めることで消費者を集めていくハードウェア企業としての路線を変更することはなさそうだ。

私たちからすれば、企業ビジョンはいつでも、ソーシャルネットワークによってブランド確立の手助けをする企業に向けて、デバイス同士をつなげていくことにある。デバイス同士の接続によって、そしてもちろんWeChat のもつネットワークによって、モバイルコマースの可能性をより探っていくということだ。だから今私たちが開発しているのが何かをお話することはできないが、わくわくするようなモデルをまさに考案している最中だということだけは約束する。

Welomo はこれまでブートスラップで事業を行ってきており、現在はシリーズAラウンドの資金調達中である。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】

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