熱狂的なファンを前に、秒速で完売するXiaomi(小米)がインドで直面するジレンマ。そして、その対応策は?

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XiaomiのRedmi 1Sが明日インドで初めて販売される。Flipkartでの数量限定フラッシュセールでは4万台を販売する計画だが、既に20万を超える人が登録しているとXiaomi IndiaのトップであるManu Jain氏がTech in Asiaに語った。

4万という数字は販売初日の販売台数としては小さな数字ではないが、Xiaomi IndiaのFacebookページには、熱狂的なMiファン達が需要と供給の大きな開きに失望したことを投稿している。

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Mi 3の販売一時停止

インド市場は価格に大変敏感であり、ということは、言うまでもなく、消費者はこの価格破壊を行う中国のスマートフォンメーカーがコストパフォーマンスの高いガジェットで彼らの欲求を満たしてくれることを待ち望んでいた。これがXiaomiを苦境に陥れている。

先週、Xiaomiは2万台のMi 3を2秒で完売した。このようなフラッシュセールは6度目で、20万人がオンライン販売を待っていた。Mi 3を入手できずに失望したファンは、すぐにMi 3のオンラインフォーラムで不満を書き込み始めた。ほどなく、XiaomiはMi 3の販売を一時停止し、Flipkartはオンライン販売のための事前登録を停止した。

Manu Jain氏によれば、このMi 3販売一時停止は、Redmi 1Sの販売に集中するためだという。「今後数週間にわたり弊社はRedmi 1Sに集中するため、Mi 3は入手できません。数週間後に、状況がよりクリアになってデータが得られたときに、最終の受注を行う予定です」とJain氏は語った。

Xiaomi副社長のHugo Barra氏は現在Jain氏とともにインドに滞在している。バンガロールでのRedmi 1Sのローンチイベントにおいて、彼らは、インド市場が同社を熱烈に歓迎してくれていることに大変驚いているとし、「9万台以上のMi 3が、7月23日の発売以来、5回のフラッシュセールで販売されてきました。これは弊社が予想していた3か月分の販売数量をはるかに超えています」とBarra氏は語った。

Xiaomiは3か月分の需要を事前に見積り、中国の部品サプライヤーはその予定にしたがって稼動している。したがって、同社がこの予想外の需要に直面し慌てふためいていても驚くことはない。Mi 3の販売一時停止は、商品の品薄を乗り切るための唯一の手段なのだ。

Xiaomiがインドで直面するジレンマ

Xiaomiは非凡なビジネスモデルの上に成り立っている。同社のスマートフォンはほぼ原価で販売されている。インドにおいて、Mi 3は13,999インドルピー(231米ドル)で、Redmi 1Sは5,999インドルピー(99米ドル)でそれぞれ販売されている。同社は広告宣伝に一切の費用をかけていない。この市場は、従来は広告が主力となっており、インドのスマートフォンメーカー(地元のMicromaxからSamsung、Motorola、そして最近のAlcatelに至るまで)は新製品のローンチに当たって、マーケティングと広告宣伝に多額の投資を行ってきた。それと正反対に、Xiaomiは、口コミ、ソーシャルメディア、そしてテック系ブロガーがバズをつくり同社のスマートフォンの販売につながることを狙っている。

しかし、Xiaomiがインドに同社のFacebookページを作成するやいなや、投稿は過熱した。数か月前には同社のことを知りもしなかった人々が、Mi 3の最先端スペックと価格が明らかにされると同時に、事前登録に殺到したのだ。これがインド市場というものだ。

しかし、Xiaomiが新規市場に参入する際は、市場に奇襲を仕掛けるのではなく、まずは小さな動きから試してみる。これは同社の長期的戦略の1つだ。

「弊社はスマートフォンの売上で利益を得ようとはしていません。スマートフォンはただの出発点です。弊社はデバイスからつくられるエコシステムにより長期的な利益を得ようとしています。KindleやFire Phoneを作り、コアであるeコマースを成長させる技術に投資するAmazonと同様です。同じように、弊社のスマートフォンは消費者との接点であり、最終目標ではないのです」(Barra氏)。

実際に、Xiaomiは自社のことをeコマース企業だと認識している。

Xiaomiはまた、ムーアの法則を活用することに賭けている。Intel創業者のムーア氏が、CPU価格が18か月ごとに半減すると予測したように、Barra氏はMi 3のインドでのローンチイベントにおいて、同社の競争力のある価格は、スマートフォンを1年かそれ以上生産したときに行き着くコストまで徹底的に考慮して設定されていると説明した。つまり、Xiaomiの戦略は、製造原価の低下と、スマートフォンからアクセスされる様々なサービスからの収入増加の組み合わせの上に成り立っているのだ。

同社の戦略は、インド市場の特異性により、困難に直面している。インドでは消費者がスマートフォンを渇望しており、お買い得の製品に対して敏感かつ情報通になっている。また、彼らには独占的な国営電話会社が、時には何年も電話を入手するために順番待ちをさせていた長い経験がある。したがって、Xiaomiの比較的少量のスマートフォンをフラッシュセールで販売するというやり方は、話題とともに批判も生み出してしまっている。

Mi3の事前登録をしておきながら空振りに終わった数千人ものファンは、大失恋したような状態になった。Mi 3の最初の販売以来、Xiaomiと彼らの関係は、愛情と憎悪の間で危なっかしく揺れ動いている。おそらく、もう少しバズが少ない方がよかったのだろう。

これは古典的なジレンマだ。Xiaomiは販売数量を早急に増やすことはできない。しかし同時に、購入を待ち望むファンは定期的な少量販売では我慢してくれない。両者の妥協点はまだ見えていないようだ。

同社は、インドにおいて利益創出の仕組み構築に時間をかけることにしている。既に研究開発センターの発表をしているが、これはBarra氏が中国の後に重要だと位置付けているインド市場において長期的な視野で考えていることを示している。

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Redmi 1Sがまたすごいことになるのか?

この中国のスマートフォンメーカーにとって、明日はまたもう1つの記念すべき日になるだろう。

インドで実際勢いがあるのは低価格スマートフォン市場であり、ここにRedmi 1Sが参入する。Mi 3の実績によって、賢い価格付のスマートフォンの水準が引き上げられたため、このブランドは十分認知されたと言える。「Redmi 1Sは、お母さんやおばあちゃん世代に最適な携帯です。フィーチャーフォンからスマートフォンへの乗り換えをしようとしている方にぴったりです」とBarra氏は述べた。スマートフォンの普及が広がるインドでは、このような利用者は多数いる。

Xiaomiは、100米ドル未満でRedmi 1Sをハイスペックに仕上げている。

  • 4.7インチ、1280 x 720 IPSタッチスクリーン
  • Android Jelly Bean 4.3、MIUI
  • 1.6 GHzクアッドコアQualcomm Snapdragon 400プロセッサ、Cortex-A7コア
  • 8MPメインカメラ、1.3MPウェブカム
  • 1GB RAM、8GBフラッシュメモリ、 64GB microSDカードサポート
  • Dual SIMスロット
  • 3G, 2G, Wi-Fi, Bluetooth, GPS/AGPS
  • 2000mAhバッテリー
  • 寸法:137mm x 69mm x 9.9mm
  • 重量:158グラム

現在のところ、この価格でこれだけのスペックを提供しているスマートフォンメーカーは他にない。Mi 3の経験を通じて、Xiaomiは明日のセールで販売するRedmi 1Sの数量を倍増することにした。しかし、低価格のデバイスにはそれを上回る争奪戦が繰り広げられるのが予想されるため、これでも全く足りないであろう。どのような結果になるかは、Xiaomiだけでなく、ファンや不安げな競合相手にも行く末が注目されている。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia
【原文】

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