IVP LP Summit(前編)〜北京・TechTemple発、2014年新進気鋭のスタートアップ5選

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TechTemple(科技寺)玄関に掲げられた、入居スタートアップの表札。

夏の暑さも一段落した9月下旬、Infinity Venture Partners(以下、IVP と略す)の LP Summit に参加するため北京にいた。IVP は日本に加えて中国にも多くの投資先スタートアップを擁しており、LP Summit は、彼らのファンドの出資者に対して、中国での投資動向を伝える機会として定期的に設けられている。

筆者は前々回の北京前回の深圳に引き続いて3回目の参加となるが、前回の訪問以降、新たに IVP のポートフォリオに加わったスタートアップや、これまでに取材したスタートアップのその後のアップデイトを中心に紹介したい。

今回も会場となったのは、北京中心部のインキュベーション・スペース「TechTemple(科技寺)」だ。TechTemple がオープンしたのは昨年のことだが、この TechTemple の精神を引き継ぐ形で、五反田の freee のオフィスの一角にも「TechTemple Tokyo」が設置されたことは記憶に新しい。

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TechTemple(科技寺)外観。
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TechTemple(科技寺)館内。

オープンしたての一年前に比べると、装飾が施され、館内中央にあるコーヒーショップのメニューも格段に増えたようだ。TechTemple からは既に多くのスタートアップが旅立っており、後編で紹介するが、以前はここに拠点を置いていた中国のテックニュースメディア 36Kr(36気)も、社員の増員で席が足らなくなり、は中国の秋葉原「中関村(Zhongguancun)」近くに移転して、36Kr 自らが新たなインキュベーション・スペースの運営を始めている。

OrderWithMe


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OrderWithMe はビジネス向けのグルーポンとも言えるビジネスだ。アメリカの小売店舗から注文を集め、それを中国から買い付けできる仕入サイトである。中小の店舗はもとより、これまでに自転車、ホームアクセサリー、屋根工事業者などの業態の業界団体と契約しており取扱量を増やしている。OrderWithMe は2011年に開催された TechCrunch Disrupt Beijing でピッチコンテストの優勝の座に輝き脚光を浴びたが、その後、IVP が OrderWithMe への投資に至った経緯は、TechWave に掲載された湯川鶴章氏の記事に詳しい。

OrderWithMe はもともとテキサスで始まったビジネスで、中国では生産業が盛んな杭州に拠点を置いているが、近々アメリカ本社をラスベガスに移転し、有名投資家らから資金を調達する見込みだ。ラスベガスと言えば Zappos が拠点を置いていることで有名だが、改めて調べてみたところ、ネバダ州やラスベガス市の政府による誘致努力も功を奏し、多分野にわたるスタートアップが集まってきているようだ

康大預診

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康大預診は、女性向けの健康アプリで、音声チャット(録音投稿)で医師に質問ができる。回答してくれるのは、上海の三甲医院(三等級で甲乙丙の「甲」、すなわち最上位のレベル)に勤務する、婦人科、産科、小児科、皮膚科の経験5年以上の医師たちだ。

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康大預診 創業者兼CEO 陸偉明氏

創業者兼CEOの陸偉明氏によれば、中国の病院には等級付けがあるが、北京・上海・広州・武漢などの大都市圏を除くと、へき地では医師のレベルが格段に落ちる。一方、上海では病院の診療費は1回14元(約250円)だが、このうち医師の収入となるのは10%(約25円)程度だ。市民はより治験のある医師に症状を相談したい、一方、医師は副業により収入を増やしたい、双方のニーズがこのアプリ上でうまく結びついた。以前であれば、医師は製薬会社から賄賂をもらうこともできたが、政界などでも汚職が一掃されようとする中それさえも危うい。医師にとっても、康大預診は〝渡りに舟〟なのだ。

サービス時間は朝8時から夜の22時までで、ユーザが質問を投稿してから15分間以内に医師から音声による回答が得られる。上海を拠点としているが、ユーザは中国全土に分布しており、ユーザ一人あたり平均4.5回サービスを利用している。リアルタイム・チャットではないため、医師は複数のユーザに同時に対応できるため効率がよく、ユーザが急増してもボトルネックにならないということだ。

一昔前の日本もそうだったが、医療サービスのレベルが発展途上(医療レベルが低いわけではないが、医療ニーズの需給バランスがよくない)の国においては、病院においても診療までに時間がかかることが多い。康大預診は中国を市場に選んでいるが、他の多くの国々でも、この種のサービスは大いに可能性が見出せるだろう。

Yeahka(楽刷)

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中国版の Square / Coiney である Yeahka(楽刷)であるが、深圳での LP Summit の際にも取り上げているので、前回からのアップデートを中心に取り上げたい。

今年2月の段階で15億ドルだった取扱決済額のランレートは、この半年で25億ドルを超えた。その原動力は、Yeahka を営業展開する末端の代理店であり、Yeakha はユーザが支払ったトランザクションからのインセンティブと、Yeahka 端末(700元/約11,500円)を小売店舗に売ったときのキックバックを代理店に支払っている。磁気カード、NFC、ICカードはもとより、最近では AliPay(支付宝)や WeChat Payments(微信支付)にも対応した。BlueTooth 対応でパソコンとも接続可能だ。

最近、Yeahka が特に力をいれているのは O2O サービスで、小売店舗に代わり、Yeahka のユーザに店舗誘導をすることができる。店舗に対しては、このO2Oの集客手数料はカード決済の手数料よりも高く設定されており、この手数料から得られた収益も一部がキックバックとして代理店に支払われる。

代理店にとっては、一つの店舗に Yeahka 端末1台を売るだけで、三つの流れで収入が得られることになるので、より多くの店舗に売ろうとするモチベーションが強く働く。この戦略が功を奏し、年内には Yeahka 端末の導入店舗数が10万軒を超えるとのことだ。

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Yeahka(楽刷)の O2Oサービス。左側3つが消費者向けの画面、右側3つが店舗向けの画面。

Qooco(巧口)

Qooco(巧口) は、音声認識システムを利用した外国語を用いる職業訓練プラットフォームだ。日本にも既に市場参入しているようだが、Qooco もともとホテルの従業員などの職業トレーニング用に開発された。

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Qooco(巧口) CEO David Topolewski 氏

CEO の David Topolewski 氏によれば、中国には多くの国際ホテルが存在するが、従業員が外国語に不自由だと、客がレストランで食事している際にワインを勧めない、カフェでデザートを頼まれているのにコーヒーを勧めない、などの問題が生じ、売上増に結びつかないばかりでなく、客に対するホスピタリティも低下する。言語習得ではなく、むしろ、現場の売上に貢献できる実務的なトレーニング・システムという位置付けだ。運用は、そのトレーニング・システムを導入したマネージメント部門で一括管理できる。

現在、Bunyan Tree、Nikko Hotels、Shangri-La Hotels、Le Méridien、Bvlgari などに導入している。シリーズAラウンドで1,000万ドルを調達し、シリコンバレーにオフィスを設置、職業訓練のプラットフォームをエンハンスする上で、特に企業の社員マニュアルのオンライン化に重点を置き、製品開発やマーケティングを強化する計画だ。2020年の東京オリンピックを見据えて、日本のホテル業や接客業には、特に Qooco を利用してもらえる市場機会が多いのではないかと、Topolewski 氏は期待している。

Aixi(愛洗網)

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Aixi(愛洗網)は、クリーニングのオープンプラットフォームだ。〝オープン〟という言葉に象徴されるように、Aixi 自らがクリーニング業を営んでいるわけではなく、クリーニング屋各社が自由に加入できるサービスとなっている。

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Aixi(愛洗網)CEO 安楠氏

創業者の安楠氏によれば、一般的に、中国ではクリーニング屋はあまり遅い時間帯まで営業していることは無いので、都市生活者にとっては不便である。そころで、Aixi はクリーニングに関わるロジスティクスを提供することにした。ユーザが Aixi 上でクリーニングを依頼したい店舗を選ぶと、Aixi が自宅まで衣類をピックアップしにきてくれる。衣類はユーザが指定したクリーニング店に届けられ、クリーニングが完了すると、Aixi が店舗で衣類をピックアップ、ユーザが指定する自宅や勤務先に届けてくれる。(ピックアップや配達は、実際には Aixi が物流会社にアウトソースされており、ユーザからのオーダー、クリーニング屋から作業完了の連絡を契機に、プラットフォームから物流会社の運転手に「どこからどこへ届けるか」の指示が飛ぶようになっている。Aixi は注力しているのは、基本的にプラットフォームの運用にのみである)。

中国のクリーニング店では、衣類を預ける際に料金をデボジットで支払うと割り引かれるケースが多いが、Aixi においては、デポジットを取らない代わりに、大量の衣類をクリーニングに依頼するとボリュウム・ディスカウントが適用される。同社では洋服以外に、カバンや靴のクリーニングも提供しており、今後、ハンガーに広告を入れて無料配布するなど売上チャネルの多角化を検討している。

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今回はここまで。明日公開する後編では、冒頭で触れた 36Kr や、今、中国で最も注目を集めるスタートアップの動向をお伝えしたい。

なお、IVP では日本のスタートアップ・シーンの風物詩となった Infinity Venture Summit 2014 Fall Kyoto を12月3日〜4日に開催するが、スタートアップが新サービスを発表できるセッション LaunchPad への登壇者を募集している。締切は明日10月31日なので、興味のある人は急いでほしい。