日本で外国語を習得するのは本当に骨が折れる。理由は簡単、周りに話す人が少ないからだ。
私の拙い海外経験でもアジア圏の友人は中国、韓国、シンガポール、どこでもスムーズに英会話をしてくる。私も四苦八苦してようやく日常会話の「下」ぐらいはできるようになったが、やはり一番学習できたと感じたのは滞在時だったと思う。
私の英語スキルのカミングアウトはさておき、一番困るのはボキャブラリの部分、特にその表現が本当に使われているのかどうか、という部分かもしれない。いくら単語帳アプリで暗記したとして、本当に使って良い表現なのかどうかわからないことが多いのだ。特にアジア系の方と会話するとき、お互い第二言語だったりするので、難しい表現は間違いなく会話をややこしくする。
そんな時、ちょっとした表現をネイティブスピーカーに聞けるサービスをLang8が公開している。「HiNative」というもので、2月頃からウェブ版をテスト、10月の中旬にiOSアプリを公開し、最近ではPCからもウェブ版(インターフェースはモバイル)を利用できるようになっている。
利用は無料で、ソーシャルアカウントなどを持っていれば登録はすぐに終わる。但し、残念ながら日本からはアプリを使うことができない。ユーザーはこれまでに1万人を獲得しているが、そのうち半数は10月中旬にアプリを公開して以降の登録者で、Lang8代表取締役の喜洋洋氏によれば、アメリカ、中国、ブラジル、イギリスの順で多いという状況になっているということだった。サービスの概要は上記の動画を見れば分かるだろう。
ユーザーは自分の言語圏、学習したい言語などの情報を登録し、Q&A形式で質問したい項目を登録する。そうすれば登録している他の海外ユーザーがその質問に答えてくれる。Lang8を知ってる人であれば、これが同じコンセプトで作られていることがよく分かるだろう。


例えば日本人がある表現をどのように言った方が自然なのかを聞いた場合、ネイティブスピーカーや英語に精通したユーザーがこんな風に教えてくれている。
また、海外言語圏のユーザーに答えてあげるのも学習機会として使える。おそらくこのシチュエーションは外国圏の方が来日して全く読めなかったのだろう。写真を撮影して他のユーザーに聞いている。こういうコミュニティ的な要素も使っていて楽しいし普段から英語を使う機会にもなる。そう、普段から使うことこそがやはり大切なのだ。


残念なのは日本からはアプリをダウンロードできないことだ。喜氏には何度も聞いたのだが、現在は海外向けにしかアプリ公開していない。理由はユーザーバランスだ。
日本ユーザーは英語学習に対して極端に旺盛な興味を示すらしく、一度に多くのユーザーを流し込んでしまうと、日本語での質問が増えすぎてしまう傾向にあるという。結果として海外ユーザーはこれが日本語だらけのサービスに映ってしまい、参加する気持ちを萎えさせる。もちろんそうなると回答も返ってこなくなってしまう。
これは私たちがびっしりと中国語だらけのサービスにログインしにくいのと理屈は似てるかもしれない。海外圏から日本語だらけのコミュニティに参加するのはかなり勇気のいることなのだ。

英会話サービスに関しては古くからの英会話教室もあるし、最近ではSkype英会話も安価で手軽だ。しかし両方ともやってみるとわかるが時間という物理的な拘束が発生する。オンデマンドで学習サービスといえば、英単語やディクテーションなど、ボキャブラリや文法にフォーカスしたものが多い。英会話アプリとなると私たちの記事で反響の大きかったOK Pandaがあるが、これもユニークな質問に答えてくれる、というものではない。あくまでカリキュラムがベースだ。
そう考えるとこのHiNativeはかなりユニークなポジションを獲得できる可能性があると思う。しかし、前述の通り、ユーザー獲得の段階でもう少しアイデアがあればという気持ちにさせる。ちなみにストレートに英語学習者を獲得したOK Pandaは約8カ月で45万人の獲得に成功している。もちろん、サービスの方向性などが違うので比較は難しいが、市場性を考えると大変惜しい。
大変よいサービスなだけに、この課題をクリアして世界中にHiNativeのコミュニティを拡大していって欲しい。
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