Jack Ma(馬雲)氏 vs Jeff Bezos氏:正反対の世界2大eコマース億万長者

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1990年、Jack Ma(馬雲)氏は抗州電子科技大学で学生たちに英語を教えていた。24年後、彼が中国一の資産家になるとは一体誰が想像できたであろうか?

同じ年、Jeff Bezos氏はニューヨーク拠点の投資管理会社であるD.E. Shaw & Co.で働いていた。プリンストン大学においてコンピューターサイエンスと電子エンジニアリングの学位を取得し首席で卒業したBezos氏が、最終的にはテクノロジーの世界に行き着くであろうということは、疑う余地がなかった。

何年か後、2人は同じような会社名を思いつくことになった。Bezos氏はCadabraというマジックという意味の名前がいいと思った。Ma氏は、「開け、ごま」の合図でドアを開きたいという希望を込めてAlibaba(阿里巴巴)がいいと思った。しかしeコマースとマジックということ以外に2人が似ている要素はなかった。

こうしたストーリーは、2つの考え方、そして2人が設立した企業の成り立ちを示している。その後彼らは道のりの途中でしばしば互いに出くわすことになる。AlibabaのIPOからわずか1ヶ月しか経っていない今、オンライン小売の将来を担うことになる2人の創設者と企業について詳しく見ていくことにしよう。

顧客優先?

Amazonは顧客のことを気にかけることで有名だ。実際、Amazonの企業文化のあり方を決める際Bezos氏はそれを主力スローガンに掲げ、また間違いなくそれが最も大事な規範になっている。Bezos氏は顧客を中心に考える創設者だ。

「弊社には、良くしてくれる顧客が沢山おり、顧客のことを気にかけるのに適した企業文化が根付いています。弊社がインターネットの世界でこの6年の間に他の競合より成功した理由がもし一つあるとすれば、それは顧客満足体験に対し、レーザーの如く焦点を当てたことです。そのことは、どのビジネスでも本当に重要なことだと思います。口コミの影響が非常に大きいオンラインビジネスでは間違いなく重要です」

しかしJack Ma氏は少し違った考えを持っている。Ma氏はAlibabaが9月22日にニューヨーク株式市場に上場を果たした数分後、CNBCのニュースキャスターたちに「第一にお客様、第二に従業員、そして第三に株主」と述べた。キャスターたちが理解していなかったのは、Ma氏が考える顧客とはBezos氏の言う顧客と同じ日常的な消費者ではないということだ。Ma氏にとって顧客とは同社のTaobaoとTmallマーケットプレイスを利用する中小企業のことである。2013年にスタンフォードで話した際、Ma氏はこの点をはっきりと説明した。

「Alibabaは、消費者寄りの企業ではありません。[…] 弊社は消費者寄りの企業になるための適切なDNAを持ち合わせていませんでした。世界は目まぐるしい勢いで変化しており、消費者のニーズを的確に捉えることは難しいです。中小企業の方が顧客のニーズをよく理解しています。弊社は一緒にビジネスを行っているパワーセラー(優良販売業者)や弊社に賛同してくれた中小企業の顧客を支援するために、彼らに権限を与えています」

Amazonの中小企業との関わり方を追究していくと、その違いは非常に明白だ。2006年、Amazonはドイツでナイフを販売している創業200年の会社の売上を減速させている。2007年AmazonがKindleをリリースした際は、9.99米ドルの販売価格を発売当日まで出版社には発表しなかった。ちょうどこの年から、消費者は出版社のHachetteから本を購入し辛くなっている。その理由としてForbesは次のように説明している。

「Amazonは納入業者の利鞘の中から、意図的により多くの部分を、低価格を売りにする形で消費者に還元したいと考えている」

つまりAmazonは独占主義的な大企業のようにビジネスを行っているのだ。

そのような考え方がAlibabaには全くないことが分かる。Amazonの企業理念とは正反対である。以下、2011年スタンフォード大学での講演でJack Ma氏が伝えたかった内容だ。

「インターネット時代においては、大企業的な考えた方は通用しないと私は思っていますし、賛同もできません。大企業的な考えた方とは、賛同しなければ潰してやる、という考え方です。私はその考え方は好きではありません。エコシステムに共感しています。[…] 皆、お互いを助け、繋がり合うべきだと私は信じています。

それがエコシステムです。Taobao(淘宝)はものすごい速さで、ものすごい大きさになりましたが、だからこそ私は心配しています。この業界や競合にもビジネスチャンスを提供すべきだと思っています」

資金なし、技術なし、計画なし

これら2つの巨大企業のビジネス哲学をさらに掘り下げてみると、かなりの相違点があることがわかってくる。Ma氏が2013年に再度スタンフォードでスピーチした際に、Alibaba創業時の特異な点をいくつか語ってくれた。

「無知な者は恐れを知りません。弊社の成功の裏側には3つの要因があり、それは非常に重要な点です。まず、お金がありませんでした。次に、技術を理解していませんでした。さらに、計画を立てることはしませんでした」

Alibabaは、50,000元、約8,150米ドルで事業をスタートさせた。一方、Amazonをスタートさせた際Bezos氏は両親から30万米ドルを受取っている。

Ma氏は起業家としての人生を歩む前は英語の教師だった。Bezos氏は、アイビー・リーグの大学を卒業している。

計画を立てないMa氏(その件は、こちらで詳しく述べている。)とは対照的に、Bezos氏は慎重に計画を立てる人物だった。彼は2009年、Zapposの買収後の短い動画ビデオで、「とっておき」の話を聞かせてくれている。リストには以下のテーマが含まれている。顧客のことを気にかけること。考案すること。長期的な視野に立って考えること。Bezos氏は次のように語っている。

「顧客のために何か考案したいと思っている企業は、長期的な視野に立って物事を考えようとする覚悟が必要です。実際、そんなことができる企業は思っている以上に多くはありません。弊社が手がける取り組みのほとんどは、企業の利益に結び付くまでに5年から7年はかかっています。[…] 真価が認められなくても、それを許容する位の度量が必要です」

しかし、これらのテック系大手は何らかの方法で成長している。現在Ma氏の純資産額は218億米ドルに達し、世界長者番付で37位に入っている。Bezos氏の資産額は305億米ドル相当で21位に入っている。

エピローグ:Alibaba、Amazon、金、人間性の向こうに見えるもの

それでは、この2人の男たちは稼いだお金をどこに費やしているのだろうか?彼らのビジネス哲学と手がけているビジネスとを紐解いていくと、この2人の真の関心事が見えてくる。Bezos氏は、2013年のとある対談で好きな本について聞かれると、サイエンスフィクションが大好きだと答えた。これは彼が個人資産から5億米ドルを超える投資を行っているBlue Originという企業と無関係ではないだろう。これは彼の50億米ドルをも超えるポートフォリオ(*1)の中でも最大級のものである。

Blue Originは、惑星防衛や宇宙ロケットといった領域での調査プロジェクトを行ってきている。これは、「将来、周回軌道に乗る2~300万もの人々のためにコロニー、宇宙ホテル、アミューズメントパークを建設したいのです」と語る、Bezos氏が生涯をかけて追いかけている夢なのだ。最近のレポートによれば、Bezos氏自身も宇宙に行けるようにトレーニングを行っているかもしれないというのだ。

Ma氏はJet Li(李連杰)氏と組んで太極拳の学校を開設した。そう、信じられないかもしれないが、Jack Ma氏は太極拳のマスターなのだ。

「今日はひどい日で、明日は更にひどい日。でも、明後日こそは美しい日なのです」。

こんな彼の話からは道教と仏教の影響がにじみ出てくる。Ma氏は瞑想も毎日欠かさない。Maのこれまでの話からは、内面の啓発、そして決意に対するMa氏の強い関心が一貫して窺える。これらは間違いなく彼の太極拳の修練によって支えられているものだ。

結局のところ、AlibabaかAmazonかという話は、太極拳のマスターと宇宙飛行士の夢を追いかけてやまない者たちの物語なのかもしれない。


  1. Bezos氏の投資ファームは、ウェブサイトにポートフォリオの一覧が掲載されおり、それによると、投資先はUberからBusiness Insiderなど多岐に渡っている。これに対しMa氏はフィナンシャルソフトウェアのHundsun(恒生)ビデオコンテンツサイトのWasu Media(華数伝媒)、そして物議を醸したAlipay(支付宝)の買収などに資本を投じてきた。さらに詳しく見ると、Ma氏はYun Feng Capital(雲鋒基金)、Zhejiang Alibaba E-Commerce Co.(浙江阿里巴巴電子商務有限公司)、そしてZhejiang Finance Credit Network Technology(浙江融信網絡科技有限公司)の3社を通じてさらに大きな投資を行っていることに気づくだろう。3社のうち後に挙げた2社はウェブサイトを公開しておらず、情報もあまり出回っていないため、Jack Ma氏の手がける投資は謎のベールに包まれている。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia
【原文】

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