モバイルゲームへの投資は、ハリウッド映画のヒットに賭けるようなもの?

mark-bivens_portrait本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens によるものだ。フランスのスタートアップ・ブログ Rude Baguette への寄稿を、同ブログおよび著者 Mark Bivens からの許諾を得て、翻訳転載した。(過去の寄稿

The Bridge has reproduced this from its original post on Rude Baguette under the approval from the blog and the story’s author Mark Bivens.


筆者が山手線で見かけた、HayDay の車内広告。
筆者が山手線で見かけた、HayDay の車内広告。

先日東京に出張したとき、モバイルゲーム業界に関わる何人かのビジネスパートナーや投資家に会う機会があった。モバイルゲームはここ数年、投資業界において、私がヨーロッパで集中している投資テーマの一つだ。

毎度ありがちな議論が展開される。モバイルゲームは依然として投資可能な領域なのか? モバイルゲームは映画産業のように、ヒット作を狙うだけのビジネスになってしまったのか?

偶然にも、先週のエコノミスト誌に、ハリウッドが多くの産業にどう影響を与えるべきか、という意見記事が掲載されているのを見つけた。知識経済においては、才能豊かな人材を集めることが重要になる。人々から創造力を削ぐことなくベストなものを引き出さなくてはらない。新製品が世に出るまでの時間は以前に比べて短くなり、新製品を素早くバズらせるには、専門的な能力が求められる。

マーケティングの価値や、短期間で消費者の関心を集める可能性について懐疑的な企業は、ハリウッドの映画産業が、いかにして、ほぼ毎週のように新しいブランドを生み出しているかに着目すべきだ。重要なのは、マーケティングをプロジェクトが一段落してから考えるのではなく、常にプロジェクトの中核に据えるべきということだ。(エコノミスト誌から引用)

失敗可能性の克服、リテイクという映画の継続的な改善(ピボットし続けるという点で、リーン・スタートアップのようなもの?)、雇用が不安定であるにもかかわらず、素晴らしい生産性を保っている点において、ハリウッドのこれらの特徴には、新しい世界経済で成功するために必要なものがすべて揃っている。

映画の量産が、アメリカが世界を独占している数少ない産業分野の一つであることを考えれば、スタートアップが市場の可能性を追求する上で国境を超えたいという思いは、ハリウッド的だと捉えることもできる。さらに、多くの産業で勝者総取り的な風潮があることで、ヒット作の生産に照準が合わせやすくもなる。

テック業界では、ハリウッドのヒット作を生み出すメタファーは、モバイルゲームの業界に当てはまるのではないだろうか。この仮説は正しいだろうか。

私の考えでは、それは正しくもあり間違いでもある。

モバイルゲームのデベロッパが、ヒット作次第で生きもすれば死にもするのは紛れもない事実だ。King は Candy Crush のヒットにより36億ドルの企業価値を持つ上場会社となった。これは、ソルト・ウォーター・タフィー(キャンディ)よりも速く、毎年5億ドルを稼ぐようになったという〝甘い〟話だ。(Candy Crush のようなサクセスストーリーをもう一度作り出せるかどうかという疑問については、同社のひどい株価を見れば明らかだろう。)

ミクシィについて考えてみよう。同社は、日本国外のネット界ではあまり知られていないが、Facebook が日本のソーシャル・ネットワーク分野を寡占するまで、日本版 Facebook と言われていた会社だ。ミクシィの株価は絶望の下降をたどっていたが、昨年、モンスターストライクというモバイルゲームのヒット作を開発し、株価を28倍に戻して息を吹き返した。

モバイル技術が発達している以上、それにつれて、モバイルゲームも洗練されたものになり、従来のコンソールゲームに近い形へとモバイルゲームの開発コストも上昇していく、というのは理にかなった話だ。(私のインフォグラフィックを参照してほしい)。

いい作品であっても数週間しかスポットライトを浴びられない映画のヒット作品とは対照的に、モバイルゲームは数ヶ月にわたってプライムタイムを占有できる。このことは、Angry Birds の数年に及ぶヒットぶりを見れば明らかだ。あるいは、私の大好きなガンホーのパズル&ドラゴンズは2012年2月に日本で紹介されたが、依然上位成績を保っており、2014年初めから毎日450万ドルを稼ぎ出している。

映画とモバイルゲームのもう一つの違いは、映画では、ウィル・スミスやトム・クルーズといった俳優を出演させることで、最低限の映画館入場客を担保しリスクを軽減できることだろう。

投資家にとっては、マネタイズ方法に長けた人の手によって、長期間にわたり売上を回収できる可能性が加わることで、ゲームがヒットするかどうかの不確実性は、モバイルゲームを最先端のリスク報酬ビジネスへと進化させることができる。

モバイルゲームへの投資は、成功すれば投じた資金をすべて回収することができる。しかし、馬(=ゲームデベロッパ)が干し草を食べるのに必要な、ゲームの開発や提供にかかる高いコストを盲目的に供給し続けられるだけの財力が必要だと言える。