ECサイト向け購買動機促進サービス「ZenClerk」が正式公開、有名エンジェル投資家4人から資金調達を発表

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2014.12.25

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左から:DoBoken 共同代表取締役 音田康一郎氏、同じく共同代表取締役 桑山礎氏

ZenClerk の名前を目にして心当たりのある読者は、かなり記憶力のいい方かもしれない。ZenClerk のチームは2013年の春、Open Network Lab のインキュベーション・プログラム第6期から輩出されたスタートアップだが、それからおよそ1年半以上の間、ステルスでサービスを開発してきた。そして、それが今日ようやく、日の目を見ることとなる。

東京のスタートアップ DoBoken は今日、ECサイトを対象とした顧客向けの購買動機促進サービス「ZenClerk」を正式に公開した。これにあわせて、川田尚吾氏、杉山全功氏、松本浩介氏、海老根智仁氏という4人のエンジェル投資家に対して、第三者割当増資を実施したことを明らかにした。なお、DoBoken の共同代表取締役である音田康一郎氏と桑山礎(はじめ)氏によれば、事業はすでに黒字転換しており、今回の増資は資金調達の意味よりも、エンジェル投資家らの知見を事業に反映していくための措置とのことだ。

DoBoken はもともと、先ごろ Zendesk に買収された Zopim のような、カスタマーデスクの担当要員が見込客にチャットができるような機能を開発していた。しかし、チャットは運営するECサイト側で要員が張り付く必要がある上に、見込客が必ずしも期待するようなユーザエクスペリエンスを提供できないと判断、2013年後半から割引クーポンを使った購買動機促進サービスに開発のフォーカスをシフトした。

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ZenClerk では JavaScript でできた1行のタグを発行、ECサイト は自社環境にこのタグを埋め込むことで、デスクトップおよびスマートフォンからのアクセスに対し、ユーザの動きを分析することができる。機械学習とデータの解析に基づいて、ベストなタイミングでユーザの画面に割引クーポンを提示、ユーザを一気に購買のアクションに誘導してしまうしくみだ。

アドネットワークやアドテクなどで広告を効果的に出せば、見込客をキャッチすることはできます。しかし、それが販売に至るまでのコンバージョンを改善するしくみはありませんでした。ECサイトは(販売促進を意図した)割引クーポンの使い方に困っていました。

広告で連れてきたお客さんにどう売るのか。どんな人に何を出すのかは、アドネットワークやアドテク・プラットフォームがやってきました。我々はそれを〝いつ出すのか〟ということにフォーカスしています。(音田氏)

ZenClerk で言う「MOMENT」のコンセプトを時系列で表したもの(DoBoken 資料から)
ZenClerk で言う「MOMENT」のコンセプトを時系列で表したもの(DoBoken 資料から)

ユーザがECサイト内をどのように回遊しているかを見れば、ユーザは購入すべき商品を心に決めたものの、本当に買うべきかどうかをためらっている瞬間があることがわかる。この躊躇の兆候を ZenClerk では「MOMENT」と呼んでおり、この絶妙なタイミングでユーザにクーポンを提示することで、商品販売のコンバージョンが飛躍的に上げているのだそうだ。

興味深いことに、ZenClerk では、この MOMENT を迎えたすべてのユーザにクーポンを提示するわけではない。クーポンを提示したユーザ群と、クーポンを提示しなかったユーザ群を意図的に作り出すことで、販売に至ったかどうかのパフォーマンスについて、自動的に A/B テストを実施している。この A/B テストを実施することにより、ZenClerk は MOMENT を検知するアルゴリズムを再帰的に改善、ZenClerk ユーザであるECサイトは ZenClerk 導入による改善効果をダッシュボードでリアルタイムに確認することができる。ECサイトが ZenClerk に支払う費用は完全成功報酬型のスキームで、ZenClerk によって改善された売上に対するパーセンテージで設定されている。

ZenClerk はすでに、大手通販会社でディノスなど複数のECサイトに導入されており、導入先の累積取扱月商は既に150億円を超えているとのことだ。これまで、ECサイトのセルアップと言えば、協調フィルタリングを利用したレコメンドサービスが主流だったが、購入を検討すべき商品の選択肢が増えてしまうという観点では、必ずしもユーザの購入決定に貢献しなかった。ZenClerk を使えば、販売員が行う「あと一押し」の販売促進が、オンラインでも擬似的かつ機械任せで行えるようになる。

ファッションのみならず、ユーザが好みで商品を選ぶようなECサイトには導入の余地があるでしょう。例えば、旅行サイトなどでは、飛行機のチケットは安さやエアラインで選ぶかもしれませんが、家族や恋人と行く旅の場合、宿泊先を選ぶプロセスには ZenClerk は役立てるかもしれません。(音田氏)

先ごろ、台湾で開催された ASIABEAT では QSearch というスタートアップが優勝したが、彼らはユーザを属性ではなく、ユーザの振る舞いをモニタすることで、広告のパフォーマンスを通常の16倍まで上げることに成功している。ZenClerk は、購買のパフォーマンスを上げるという点で、もう一歩踏み込んだプロセスにまで挑戦しているわけで、日本国内のみならず世界的にも大きな需要が期待できるだろう。

この分野では、ECサイトのリアルアイム解析「KARTE」を提供するプレイドが2014年7月、フェムトグロースキャピタル等から1億5,000万円を資金調達している。

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