モノの売り買いだけではない、スケールメリットのある仕組みづくりを:大阪スタートアップたちの課題

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福岡のスタートアップ都市宣言や、IVSで優勝したあきっぱ!が大阪発スタートアップなど、地方都市によるスタートアップの動きは、近年盛り上がりを見せている。

大阪市が運営している大阪イノベーションハブも、運営場所であるグランフロント大阪にて、連日スタートアップのピッチやミートアップ、勉強会やハッカソンなどのイベントを企画している。

今回、大阪イノベーションハブと吉本興業が連携し、東京で大阪発のスタートアップたちがピッチを行うイベントが開催された。「ツッコまれピッチ!」というイベント名のもと、6社のベンチャーがプレゼンをする中、司会者の吉本興業の小藪氏や審査員が随時「つっこみ」を入れながら、人間的な魅力やビジネスプランのポイントを見出すユニークな形式だ。

審査員には、イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役の山本一郎氏、よしもとアドミニストレーション代表取締役副社長の中井秀範氏、吉本興業社長室の木村深雪氏、特別審査員にさくらインターネット代表取締役社長の田中邦裕氏が登壇している。

ここでは、登壇したなかから注目のベンチャーをいくつか紹介する。

XS:「みちグル

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全国1030の道の駅を網羅した情報サイト「みちグル」とECサイト「みちグル市場」を運営している。道の駅を通じた地域の魅力を発信し、地域の埋もれた商品を全国に届けながら、地域集客のハブとしていく。サービスをスタートさせて数ヶ月がたち、道の駅というローカルな場やそこに集まる人たちへのリーチを求める企業にとって、サンプルやマーケティング調査などさまざまな場としての価値があることから、企業提携などが進んでいるという。

山口 譲二氏:「アニマルエンパシー」

犬の心拍パターンから、犬の気持ちを可視化するデバイス。毛皮の上からでも測れる高性能な心拍センサーをもとに、リラックスやストレスなどをデバイス上で表現する。10年以上前から、バウリンガルなどの心理系デバイスが流通してきたこともあり、さらに、今後はデバイスの小型化やIoTなどによるネットとの接続によって、動物とのコミュニケーションの新しい可能性が切り開ける。現在は、まだテストプロダクトながら、実際の犬に取り付けてデータをとったりと、実証実験を繰り返している。今後は、実用性にまで開発を行い、事業として進めていきたいと語る。

ATR Creative:「ちずぶらり

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地図を、スポットではなく、エリア全体のコンテキストをもとに検索を行う地図アプリだ。従来、地図アプリでは住所や店舗名などをもとに検索を行うため、ピンポイントとなってしまう。しかし、旅行先などではピンポイントの場所だけでなくエリア一帯の情報を知ることに意味がある。そこで、イラストマップなどをもとに新しい地図のあり方を模索している。1300年前の奈良時代の歴史ストーリーを体験できる地図アプリ 『なら平城京歴史ぶらり』が2014年度 グッドデザイン賞を受賞などし、全国の自治体観光マップや世界のマップ提供者と提携したり、ユーザが面白がる面白いコンテンツやエリア情報を集めるための企画を実施している。世界のローカル地図を集めたビジネスを展開していきたいという。

モノの売り買いだけではない、ビジネスモデルや仕組みづくりを考えること

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6社のプレゼンでは、優勝をATR Creativeの「ちずぶらり」、特別審査賞のさくらインターネット賞は、山口 譲二氏の「アニマルエンパシー」が受賞した。

審査員である山本一郎氏からも、コメントをもらった。

「今回出ていたプレゼンターたちは、どれも面白くて素晴らしい内容だった。ビジネスとしての可能性もある。こうしたいくつものベンチャーがでてきたのはいいことだ。しかし、大阪全体に言えることだが、「地盤沈下」している、とでも表現できるかもしれない。今回のベンチャーもそうだが、スケールさという点ではもうちょっと足りない。目の前にあるビジネスモデルに固まっている。もっといえば、一メーカーから脱却できていない。モノを売って、買ってもらって、という仕組みが大阪の人は染み付いている。」

製品をつくり、それを販売する。たしかにそれも一つのビジネスモデルだが、市場自体は国内に限定されていたり、仕入先の難しさ、販売先、リーチ顧客数などの限界はたしかにある。目に見えないサービスそのものや、仕組み自体を作り変えるようなものが大阪から出てくる可能性はあるのだろうか。

大阪に限らず、世界を視野に入れているスタートアップならば、より大局的な視野をもって、ユーザに対して新しい価値を提供できるためのサービスを見出さなければいけない。近年のスタートアップや起業に対する盛り上がりと同時に、本当にユーザに対して価値を提供できているのかどうか、そのサービスやどの程度のスケールが生まれるのかを、改めて考える必要はあるのかもしれない。

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