拡大するWeChat(微信)帝国:Tencent(騰訊)が2014年に出資・買収した事業リスト

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最近Alibaba(阿里巴巴)によってトップの地位を奪われたものの、Tencent(騰訊)は現在中国で第2位の規模を持つインターネット企業である。そして同社は中国で最も積極的に投資を行うベンチャーキャピタリストでもある。Alibabaは大企業に巨額の投資をして誌上を賑わせているのに対し、Tencentはできたばかりのスタートアップに対して初期投資を行うことに手を染めている。

Tencentが驚異的な取引の数々により妥当な配当額を受け取らなかったという訳ではない。同社は今年だけでおよそ30もの投資ラウンドに携わっており、その半数はシード、シリーズA、もしくはシリーズBの投資ラウンドだった。これは1ヶ月に平均3回の投資を行っていることを意味する。以下は、ITJuzu(IT柚子)のデータベースと私たち独自のアーカイブを元にざっと年度順にまとめた投資リストだ。

Futu(富途)

この金融系テックスタートアップは、株式市場の投資家、金融ニュースサイト、そして金融通向けのリアルタイムトレードアプリを開発している。Futuは1月にTencentからはっきりとした額ではないが「数千万元」もの資金を受け取ったとされている。

China South City(華南城)

この香港上場企業は中国全土に及ぶ大規模な物流と流通センターを展開・運営しており、原料から製品まであらゆるものを流通させている。Tencentは今年1月に香港ドルで15億ドル(1億9300万米ドル)、9月に8億ドル(1億300万米ドル)と、2回にわたってChina South Cityに膨大な額の投資を行った。現在は13%の株式を所有している。

Didi Dache(嘀嘀打車)

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1月に行われたこのシリーズC投資ラウンドは、今年続けて行われた大規模な2回の投資のうちの最初のものだった。このタクシー予約アプリはTencentから1億米ドルを調達し、Alibabaが支援する競合Kuaidi Dache(快的打車)との熾烈な争いに対抗するための資金力を得て中国市場で勝利を収めようとしている。両社ともに後に引くことはなく、Tencentは12月にさらに7億米ドルを投資して、DidiはUberに次ぐ世界第2の多額資金を調達したタクシーアプリになった。

Renrendai(人人貸)

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Trustbridge Partners(摯信資本)とTencentは1月に行われたこのピアツーピア貸出サイトに対して資金を折半し、1億3000万米ドル相当のシリーズA投資ラウンドに出資した。そう、このシリーズAラウンドは私たちが知っている限り中国で今年最大規模のものだった。その後Edai、PPDai(拍拍貸)、Dianrong(点融)などといった企業が多数現れて、中国で急成長しているピアツーピア貸出市場の分け前にあずかろうとしたが、Renrendaiは依然最大手であり続けている。

Linktech Navi(科菱航睿)

AlibabaがAutonavi(高徳)の株式の大部分を買い入れたほぼ同時期に、TencentはLinktech Naviを買収している。このオンラインマッピング・ナビ企業は1月にTencentに買収された(金額は非公表)。

Mob Arts(芸動)

QQとWeChat(微信)はTencentのポートフォリオの中でも際立ったソーシャルプロダクトだが、Mob Artsは中国最大のゲーム企業としての強みがある。TencentはMob Artsに対して「数千万元」もの投資を1月に行っており、その後7月にこのゲーム企業はQunxing Toys(群興玩具)によって14億4000万元(2億3200万米ドル)で買収された。同社は現在3つのモバイルゲームを保有しており、また新たに1つが開発中である。

Xinyi Network(刷機大師)

Xinyi Networkはスマートフォンユーザ向けにいくつかのツールを制作しているが、その主力製品はAndroid携帯をRoot化し、異なるOSバージョンをインストールできるアプリである。Tencentは2月に「数千万元」もの金額をシリーズBラウンドで同スタートアップに投じた。

Ly.com(同程)

Ly.com、別名17Uは、中国最大の旅行・観光予約サイトの1つである。2012年にシリーズBラウンドを主導した後、2月にTencentは5億元(8070万米ドル)のシリーズCラウンドも主導した。その2ヶ月後にCtrip(携程)という中国の旅行サイト大手はシリーズDラウンドでLy.comに対し2億米ドル投資した。

Dianping(大衆点評)

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その他に有名な投資として、TencentはDianpingに10億米ドルほどを投じて20%の株式を取得した。DianpingはYelpとGrouponを1つにしたようなもので、 ローカルなお店一覧のレビューとグループ購買サービスを提供している。このシリーズEラウンドにより、DianpingはWeChatに統合された。

JD(京東商城)

Tencentが今年行った投資で最も際立っていたのはJDへのものだろう。JDは中国最大のダイレクトセールのマーケットプレイスでAlibabaに次ぐ中国最大級のeコマースである。JDが中国最大のeコマースIPOを行う2ヶ月前(後にAlibabaが最大のIPOとなる)、Tencentは2億1400万米ドルを投じて15%の株式を取得した。Dianping同様、JDは現在はWeChatに統合されている。

Maimaibao(買買宝)

Tencentのeコマースへの投資はJDで終わらなかった。同じく3月、同社は低価格フィーチャーフォンユーザ向けのモバイルコマースサイトに1億米ドルを投じた。2GネットワークでアクセスするWAPモバイルサイトを利用しているようなインターネット接続が遅れている地方にも手を伸ばしている。

CJ Games

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今年Tencentが中国以外の企業に投資したのは大物企業だった。5億米ドルを投じて28%の株式を取得したのは、モバイルゲームデベロッパーのCJ Gamesだった。この韓国のゲームスタジオはカジュアルかつ繊細なロールプレイングゲームを制作している。そのうちのいくつかは韓国で人気のメッセージングアプリKakaoTalk(Tencentが株式を一部取得している)と統合されている。

Leju(楽居)

物件ポータルなくしてインターネット企業大手のポートフォリオは完璧と言えるだろうか?このオンラインツーオフラインの不動産サービスプロバイダーは中国250都市の物件を掲載・販売している。E-House(易居)の子会社であるLejuは3月、Tencentから15%の持分取得の見返りに1億8000万米ドルを調達した。4月にIPOを行った後、9月にはアメリカのカウンターパートであるZillowと提携した。

Navinfo(四維図新)

この企業向けデジタルマッピングサービス企業が設立されたのは1997年のことである。Tencentは5月に中国最大のマッピング企業の1つであるNavinfoに1億8700万米ドルを投じて11.3%の株式を取得した。Linktech Naviの件と同様、この投資はAlibabaがAutonaviを買収したことに呼応する動きであった。

175Game(擎天柱)

175Gameは5月にTencentからシリーズBラウンドとして1億5000万元(2420万米ドル)を獲得した。このゲームスタジオはPCクライアント、ウェブベース、およびモバイルゲームを制作している。

Whisper

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Tencentはこの匿名告白アプリの3600万米ドルの投資ラウンドに参加した。しかしこれはWhisperが中国にやってくるということは意味しない。というのもTencentは2013年にも中国ユーザのためにローカライズする計画なしでSnapchatに投資を行った過去があるのだ。

58.com(58同城)

58.comは中国最大のオンラインクラシファイド広告サイトであり、Ganji(赶集)が唯一のライバルである。昨年10月にIPOを行い、その後6月に19.9%の保有権をTencentに7億3600万米ドルで売却した。9月にさらに1億米ドル分の株式を購入したTencentの持株は24%に増えた。58.comの広告は最終的にWeChatに何らかの形で統合されるはずだが、まだ実行されていない。

Picooc(繽刻普銳)

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TencentとJDは2100万米ドル規模のシリーズBラウンドを主導した。このハードウェアスタートアップはおそらくそのスマート体重計で有名であろう。同社はフィットネスリストバンドと血圧モニターを含む新しいガジェットを近々ローンチ予定である。

Edaixi(e袋洗)

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EdaixiはO2Oランドリーピックアップアプリで、中国のランドリーチェーンRongchang(荣昌)によって運営されている。中国のランドリー界のUberとも言えるこのアプリは7月にTencentから320万米ドルのシード資金を、その後11月にはさらに2000万米ドルの資金を受け取っている。ユーザはこのアプリを利用してオーダーを行う以外に、企業の公式WeChatを通じてピックアップのオーダーをすることもできる。

Scaled Interface

元Google社員2名によって設立されたScaled Interfaceは、サードパーティーデベロッパー向けに彼らのアプリとサービスを機能させることができるクラウドを基盤とした人工知能と機械学習ツールを現在構築している。Tencentはこのスタートアップの500万米ドルのシードラウンドに参加している。Scaled Interfaceはその後11月に、さらに800万米ドルもの資金をKhosla Venturesから調達している。

Kuakao(跨考)

Kuakaoは大学のコースと検定用の試験準備サイトである。このスタートアップは8月にTencentからシリーズBラウンドで3000万元(480万米ドル)を調達した。

Wanda(万達)

TencentとBaidu(百度)は映画館チェーンで最も良く知られている企業グループDalian Wanda Group(大連万達集団)とともに8億1400万米ドルでジョイントベンチャーを設立した。この3社のゴールである店舗内モバイル決済機能の導入を加速させることが目的である。Wandaが株式の70%を所有し、BaiduとTencentが残りの持ち分を等分している。WeChatユーザはWeChat決済もしくはTenPayを利用してWandaの施設内でのサービスや品物を購入できるようになる予定だ。

eJiaJie(e家洁)

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TencentはShanda(盛大)と共同で、家事代行者マッチングサービスを提供するO2Oスタートアップの第2次投資を主導した。この位置情報サービススタートアップは顧客の家を掃除してくれる時給労働者を見つけてくれる。現在10の都市で営業中で、年末までに30都市への拡大を目指している。9月のシリーズAラウンドは400万米ドル規模だった。

AltspaceVR

アメリカ拠点のこのバーチャルリアリティー企業は、Oculus Riftが成功を収めた無難なゲーミングアプリには手を付けず、よりソーシャル要素の強い体験を選択した。ユーザはバーチャルスペースでつながることで、ウェブ上でどんなものでもシェアできる。例えば、映画を見るための独身男性の部屋のソファを世界の反対側にいる友達とシェアすることができる。TencentはGoogle Ventures、Dolby Family Venturesらとともに、AltspaceVRの520万米ドルのシードラウンドに参加した。

DXY(丁香図)

DXYは医師その他医療・ライフサイエンス専門家のために中国最大のオンラインヘルスケアコミュニティを運営している。医薬品検索アプリや医師相談アプリなどヘルスケア関連のアプリをいくつか開発している。Tencentは9月にシリーズAラウンドで7000万米ドルをDXYに投じた。

Woqu(我趣)

Woquはオンライン旅行代理店で、アメリカ旅行を希望する中国人旅行者に特化したサービスを提供している。ビザ、アトラクションチケット、SIMカード、保険、ホテルの予約など中国人が旅行する際に必要なものを全て取り揃えている。Tencentは9月、Woquの2000万米ドルのシリーズBラウンドをMorningside Capitalとともに主導した。

Sinopec(中国石化)

中国最大の国営石油企業は、セールスとマーケティング部門をTencentと他24の投資家に1071億元(174億4000万米ドル)にて売却した。各企業は2.8%まで持株を保有することができるが、Tencentのはっきりとした持株数は明らかになっていない。Sinopecの民営化への試みには、モバイル決済、ビッグデータ、そしてナビゲーションにおけるTencentとの協力体制が含まれる。

Red Dot(紅点)

Red Dotはインターネットラジオスタートップで、視聴者に聞いてもらうための自分の放送番組を誰でも制作することができる。同スタートアップは9月にシリーズAラウンドでTencentから300万米ドルの資金を受け取っている。ネイティブアプリとWeChatアカウントアプリの両方があり、これらによってアマチュアDJの人気は後押しされるだろう。

Guahao(挂号)

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Tencentは10月にこのヘルスケアスタートアップの推定1億米ドル規模のシリーズCラウンドを主導した。このモバイルアプリは患者を医師とつなぎ、予約、最近の検査結果のチェック、病院への支払いをすることができる。同アプリは国内900以上の病院に対応し、3700万人の登録ユーザがいる。

CLS(華彩)

中国で数少ないギャンブルの1つである「宝くじ」はとても人気がある。宝くじ用の機器やシステム、ゲームその他の製造や販売に加え、端末の設置やメンテナンスに関する技術運用を行っている。商品にはビデオくじ、キノ、そしてオンライン宝くじなどがある。Tencentは10月、China LotSynergy Holdings(CLS)の株の7.53%を購入した。金額は明らかにされていないが、発行株式総数から推定するとその額はおよそ6500万米ドルから8700万米ドルであろうとされている。

Koudai(口袋購物)

今年最も見過ごされた可能性のあった投資だが、TencentとTiger Fundは、このモバイルeコマースマーケットプレイスアプリに対する3億5000万米ドルのシリーズC投資ラウンドを主導した。ユーザはWeChatを通じて商品を閲覧したり、そこで商品を購入することができる。また、WeChatにあるKoudaiのアカウントで自らの店を持つことができる。メディアの報道によると、設立して3年の同アプリはモバイル用Taobaoを上回るアクセス数を誇っているという。

Blink(快看)

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Tencentは10月、Sequia、H Capital、ZhenFund(真格基金)、Innovation Works(創新工場)とともに、Snapchat系の写真共有アプリに2000万米ドルのシリーズAラウンドを行った。2言語で使用できるこのアプリでは、写真や短い動画の撮影のほか、絵や文字の挿入、ボイスメッセージの追加ができる。

Huayi Brothers(華誼兄弟)

これはTencentとAlibabaの両社が同じ投資ラウンドに参加した数少ない会社の1つである。北京拠点のテレビ番組映画制作スタジオは、インターネット界の2大会社と中国の他1社から36億元(5億8100万米ドル)の投資を受けた。AlibabaとTencentはどちらも中国の国内外において映像コンテンツのライセンスを買い漁っている。

Renren Kuaidi(人人快递)

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このスタートアップでは採用条件を満たしていれば誰でも地域の配送業者として登録することができる。このクラウドソーシングを利用した配送ネットワークは、シリーズAラウンドでTencentとBanyanから1500万米ドルを調達した。地方配送業界のUberとも言える同社は現在中国主要6都市で営業している。

4:33 Creative Lab

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Tencentは自国市場から抜け出したいと思っている韓国のゲームスタジオにとって、パワーを与えてくれる投資家なのかもしれない。Tencent、Line、韓国の投資パートナーは共同でコンソーシアムを設立し、Tencentは1億1000万米ドルを投じた。多額の資金が4:33 Creative Labに向けられ、ArrowやBladeといったヒット作を生み出した。

Dots

アメリカ拠点のDotsは、TencentとGreycroft PartnersからシリーズAラウンドで1000万米ドルを調達した際、親会社Betaworksから離れた。シンプルだがきれいなこのモバイルゲームスタジオには、2つのゲームで世界中に4500万のユーザがいる。

Aiming

Tencentは12月に日本を拠点とするAimingと契約を交わし、大中華圏に同スタジオのゲームを配信することになった。これがネイティブアプリなのかWeChatでのことなのかは現時点では明らかではない。投資金額も公表されていない。有名なゲームのタイトルとしては、Lord of Knights、Blade Chronicle、Logres of Swords and Sorcery: Goddess of Ancientなどがある。

WiWide(邁外迪)

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WiWideはスターバックス、バーガーキング、いくつかの空港など中国全域で見られる多くのパブリックwifiホットスポットを管理運営している。このwifiプロバイダー・広告プラットフォームは3億元(4900万米ドル)をシリーズCラウンドでTencentとDianpingから12月に調達した。Tencentとの提携により、ユーザは企業のパブリックWeChatアカウントをフォローすることでwifiに接続できる。

Kamcord

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アメリカ拠点のKamcordは、ゲームデベロッパー向けにゲームにビデオ録画機能を追加できるSDKを製作している。このスタートアップは日本に進出しており、来年は韓国と中国にも進出予定である。Tencentは12月に1500万米ドルのシリーズBラウンドに参加した(パズドラメーカーのGungHoが主導)。これはTencentによる2500万のビデオが共有されているKamcordへの2回目の投資であった。

今後、年末に向けて新規投資があった場合にはこのリストをアップデートしていく予定だ。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia
【原文】

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