モバイルやB2Bは成長するか?2015年の東南アジアEコマース業界を動かす10のトレンド

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本記事を執筆したMoursalien氏はaCommerce社の広報責任者である。同社は東南アジア地域におけるEコマースサービス提供を行う企業であり、この地域の物流の障壁を取り除くことをミッションとしている。

東南アジアにおけるEコマースの成功の条件は、時間と空間の連続性を飛び越えることではない。しかし、この地域の状況を考えたとき、映画『Interstellar』の登場人物 Joseph Cooperの台詞を思い出す。「過去に最大の成果があってはならない。私達の運命はこの先にあるのだ」くさい台詞だが、的を射ている。この数年で、この地域は目覚ましい進歩を遂げたが、オンライン販売という旅はまだ始まったばかりだ。

Alibaba社によるシンガポール SingPost社への2億4900万米ドルの投資、インドネシアのTokopedia社は1億米ドルの出資を受け、またマレーシアLazada社が2億5000万米ドルの出資を集めた。この数年の間に東南アジアには、新興国市場のなかでも最大級の資本投下が行われた。

Ardent Capital社のCEOであるAdrian Vanzyl氏は、「インターネット関連事業の投資において、今までにないほど1億米ドル規模の投資が東南アジア地域で見られている」と話す。

しかし、このような資金流入があったにもかかわらず、成長が予測されていた分野で、それが実現しなかったものもある。例えばモバイルでのEコマースだ。昨年1月、タイでLine社が行ったフラッシュセールでは、オンライン上で商品がものの数分のうちに売りつくされた。これは、今後の成功が約束されているような結果だったが、その後に予想されていたほどの爆発的成長はみられなかった。多くの東南アジア人を対象とした新しい販売チャネルが誕生したが、私達のビジネス分析チームの結果によると、モバイル端末を通して実際に買い物をするのと、インターネットを閲覧する割合は、いまだ後者に大きく偏っているそうだ。また、aCommerce社にとって、シンガポールはすでに飽和しきった市場であることが明らかになり、インドネシアやタイほど利益を得られるものではなかった。

しかし、膝についた土を払い、背中を叩いて励ますのはやめて、しっかりと前を見据えるべきである。これから、皆さんに2015年の東南アジアにおけるEコマースの業界予測を紹介する。これらの予測は、2014年1年間に得た私達の一次情報源(投資家やエグゼクティブのインタビューおよび社内のデータ)および二次情報(記事やレポート)に基づく。

1. M&Aの年: B2CのEコマース市場における統合のはじまり

2014年が、この地域に空前の資本流入が起きた年であるなら、2015年、スタートアップ企業は東南アジア地域での大規模なオーガニック成長を狙って、自社の資金やキャパシティをすり減らす年となるだろう。なぜか。特にインドネシアやフィリピンのような群島国家におけるB2C販売は、資本力がものをいい、規模の経済で利益が生じるものだからである。

2015年およびそれ以降、これらの条件によって、B2C分野においての統合が進行することが予測される。次に、継続した資本流入によりB2C企業は、成長を加速させるために業界内での買収や合併を必要とすることになる。B2CにおけるEコマース業界はまだ細分化されているが、Lazadaのような早期参入者は豊富な資金のおかげで業界の先頭を走り、規模の小さい企業にとって競争をより厳しいものにしている。

企業同士のアライアンスが組まれるだろう。タイでは、競争力を維持するために、Whatsnew、Wear You Want、MOXY等の企業がそれぞれ他社と提携し、Eコマース連合を構築し始める模様を私達は目撃した。これらの協力関係が統合へと向かうのは時間の問題である。もうひとつの例として、Lazadaは自社のLZD white labelブランドを持ってファッション業界に参入した。彼らがZaloraと連携を組まないはずがない。流入を一つのサイトに集約し、一つのユーザベースのアクティブ率を高めるマーケティングを行うことで得られる規模の経済と節減効果を考えてみよう。(情報開示:Lazadaタイ法人とWear You WantはいずれもaCommerceの顧客である。後者はArdent Capitalの子会社である。)

「業界にこれだけ多くの資金が流れれば、大手企業は買収のことを考えるでしょう」-aCommerce CEO兼Ardent Capital執行役会長、Paul Srivorakul氏

2. デジタル広告代理店は業界に適応するか、撤退する

デジタルマーケティングの広告代理店は、昔からEコマースが成長著しい業界であることを認識していたが、Eコマース向けの製品やサービスを開発して提供するのに今後も苦戦を強いられることが予想される。Sheji Ho氏の記事「5 Reasons You Should Fire your Agency(あなたが代理店契約を破棄すべき5つの理由)」にあるように、広告代理店は適正な収益構造、企業文化、そして才能ある人材に欠けている。

WPP社が、中国でNikeやL’Orealなどブランド企業の、TaobaoやTmallストアの管理運用を行うTaobaoパートナー企業を買収してきたように、デジタル広告代理店はこの状況を打破するために、バリューチェーンの下流へと対象を変更するだろう。aCommerce社が、この流れを確認したのは、Huaweiが伝統的な代理店でなくaCommerce社のマーケティング部門を選択したことや、UberやKiehl’sもまたaCommerce社とパートナー契約を結んだときである。(情報開示:Kiehl’sは当社の包括的な顧客である)単独の企業を買収することと、買収した企業を自社の包括的なバリューチェーンに完全に組み込むことは、まったく異なる次元の話である。

「広告代理店が自分達のDNAを変えない限り、彼らはEコマースの幻影を追い続け、我が社のようにEコマースに特化した代理店にビジネスを奪われることになるでしょう」-aCommerceグループCMO(チーフマーケティングオフィサー)、Sheji Ho氏

3. Eコマースのマーケットプレイスは競争が過熱する

Alibabaの大規模な250億米ドルの新規株式公開(IPO)に触発され、バリューチェーンのさまざまな段階に位置する企業が、自社のマーケットプレイスを構築しようとするだろう。既存のLazadaや楽天に加え、B2C企業のみならず、通信会社、メディア企業、銀行などの参入が予測される。Lazada社CEOのMax Bittner氏によれば、Lazadaで販売される商品のうち70%はサードパーティによるものだという。これらの企業は、自社のユーザー基盤から、通常の付加価値サービス(VAS)以上の利益を生み出す手法を模索している。ソフトバンクが直近行ったTokopediaへの1億米ドルの投資は特に目立つものであったが、このような資本の流入は、すでに混雑しているマーケットプレイスに過剰な競争を生み出すことになるだろう。

「マーケットプレイスのビジネスモデルが過熱するに従い、各ブランドには、商品があらゆるプラットフォームで入手可能となるような、顧客中心のオムニチャネルの展開が要求されるでしょう。販路に関わらず、シームレスに商品を届けるテクノロジーやパートナー企業への投資が、2015年の成功への重要な鍵となるでしょう。」-Srivorakul氏

4. AECが国境を越えたEコマースを加速する

いくつかの大きなトレンドが2015年には国境を越えたEコマースが加速させるだろう。

ASEAN経済共同体(AEC)は境界を取り除き、より発達した物流を介して東南アジア全域で取引と消費が刺激されるだろう。

Amazonやロンドンに拠点を置くASOSのような企業は、シンガポール、タイ、インドネシア等の東南アジア諸国を、アジアにおいて最も成長する市場としている。たとえば、Amazon子会社のShopbopは先日、国境を越えたブラックフライデー(感謝祭の翌日の金曜)およびサイバーマンデー(その週明けの月曜)キャンペーンを、Line社およびaCommerce社とのタイアップにより行った。AECはこのような流れを後押しするだろう。

中国市場の安定にしたがい、AlibabaやJDのような企業はこれまで以上に、東南アジアでの成長の機会を窺っている。

「巨額のIPOを行い潤沢な資金がある彼らには、急速な成長をしなければならないというプレッシャーもあります。他地域への展開は、中国市場で過剰な競争を繰り広げる以外の、実現可能な方法の一つです」-Srivorakul氏

5. 人材の流入: 海外からの起業家がマーケットを埋め尽くす

現在の東南アジアはおそらく、Eコマースやテクノロジー人材にとって、アジア内で中国とインドに続く最もホットな職場である。一昔前は、バックパッカーや英語教師、最近ではRocket Internet社の赴任者が多く来ていた。そして今、成長著しいEコマース市場に魅せられた人材流入の増加が見られ始めている。少し前は、外国人をこちらから積極的に採用しなければならなかったのに、昨年は東南アジアで働きたいという問い合わせが増えた。このトレンドは、ヨーロッパ経済が依然苦しく、アメリカ経済の完全な回復にはまだ数年を要するという状態の、2015年内のみ続くであろう。この人材流入は、この地域のマーケットの人材需給ギャップの解消に貢献する。また、ここ数年でRocket Internet卒業生らが自ら立ち上げたベンチャーなどの働きぶりからして、この地域における人材の育成とアウトプットの質の向上が期待される。

6. 物流とその他すべてのUber化

Uberはマーケットプレイスのようなものである。Uberはクラウドソーシングであり、購買者と販売者を結びつけるものだ。唯一の違いは、Uberはアプリであるということだが、2015年は、UberとGrabTaxiが配送業務に本格的に参入する年になるだろう。

Amazon社はすでにUberを用いた配送をテスト運用している。Uberはまた、 最近Kiehl’s社およびaCommerce社と提携し、バンコクでUber運転手に Kiehl’sの商品配送を委託している。フィリピンでは、Uberは同国最大の物流企業LBC Express社と提携し、オンデマンドでのクリスマスプレゼントの配送を行っている。GrabTaxiがソフトバンクから2億5000万米ドルの出資を受け、Uberが27億(そう、2億7千万でなく27億)米ドルの資金調達をしているように、この業界での競争は今後過熱するであろう。

それに加えて、Uberは中国Baiduから6億米ドルの出資を受け、アジア諸国への展開を狙う。これらの資金流入により、乗車シェアというコア領域での競争激化は避けられず、また、物流や配送といった別の業務への拡張というイノベーションが加速するであろう。東南アジアほぼ全域において、物流はいまだ発展途上にあり、UberやGrabTaxiのような企業が、既に発展した彼らの本拠地アメリカやマレーシア市場で行う配送より、この地域での配送から生み出される付加価値によって得られる基盤は確固たるものとなるだろう。

「彼らはすでに基盤と技術を持っています。したがって、タクシー需要が十分でないときに生じる余剰時間、特に、オフィス業務時間中など人の移動が少ないオフピーク時間を使って配送を行うことができます。現在のところ、Uber、GrabTaxi、Easy Taxiなどの企業は、同じ顧客を奪い合っています。ある時期に来れば、彼らは市場自体を拡張する必要に迫られるでしょう」-aCommerceグループCOO、Peter Kopitz氏

7. モバイルEコマースは、未熟なUXでいまだ飛躍せず

2014年は、主にメッセージングアプリLINEに牽引され、東南アジアにおいて、モバイル端末がショッピング販路としての可能性があることが証明され、その片鱗を見せた年であった。LINEは、aCommerce社とタイアップし、LINEフラッシュセールなどを行い、モバイルEコマース業界に試験的に参入した。また、日本を拠点とする同企業は最近、LINE Shopというモバイル上での顧客対顧客(C2C)マーケットプレイスをローンチした。LINE Payおよびその他のモバイル決済システムの参入により、モバイル上でのコンバージョン率は今後上昇するだろう。しかし、私達は、モバイルEコマースがデスクトップでのそれを上回るには、まだ数年を要すると予測する。

私達が今年2月にモバイルEコマースの調査結果を発表し、得た事実は、モバイルの主な利用目的はネットを閲覧することだった。タイにおいて、89%のLINEユーザがモバイルでネットを閲覧していたが、実際に購買に結びついていたのはネット上で行われている全ての取引の56%に過ぎなかった。それから10ヶ月が経過し、顧客企業のデータを改めて見てみても、モバイルEコマースの成長予測は限られる。私達の主要顧客の過去30日間の推移を見ても、モバイル上での購買は全体の10%付近で安定している。彼らはモバイルに全面対応したサイトを運用しているにもかかわらずである。

ジャーナリストJon Russell氏は今年はじめに、モバイルEコマースの熱狂についてこう話している。「(前略)モバイルがEコマースの先頭を走っているという認識は疑うべきでしょう。スマートフォンへの販路取り込みが成長を続けている以上、将来それは間違いなくおきるでしょうが、今現実になっていることではありません」。主な理由は、モバイル上でのユーザーエクスペリエンスが、まだショッピングに最適化されていないことと、店舗側もEコマース業界に参入し基盤を固めていることとなる年に、すぐにショッピングアプリの開発に乗り出すとは考えにくいことだ。

aCommerce社は実際、多くの顧客ブランドが、高価なモバイルアプリの開発は避け、Eコマースにおいてデスクトップ上のオンラインストアと、モバイル対応サイトを選択しているとした。デスクトップはしばらくモバイルを上回り続けるだろうが、企業は長期的、戦略的視点に立ち、モバイル対応サイトやモバイルアプリ開発など、モバイル対応への投資をすぐに始めることとなるだろう。この領域にはまだ成長の機会が多く残されている。

「東南アジアはモバイル先行の市場であり、そこで競争力を持つためには、我々はモバイルだけに注力する戦略を取る必要があります」-2014年12月、東南アジアに投資を検討している投資家

8. B2BのEコマースが新たな収益に

より魅力的なB2CのEコマースの影に長く隠れていたが、2015年、B2B向けEコマースはいよいよ離陸するであろう。投資家も企業も頭を冷やし始め、B2Cはいまだ過熱してはいるが、競争過多で、利幅の非常に薄い業界であることを認識するであろう。特に、ベストセラー商品のほとんどが利幅の薄いコンシューマ向け電化製品やモバイル端末である新興国市場ではなおさらである。B2Bはクールな商売ではないが、利益は高い。

たとえば中国では、誰もがTmallやJD、そして成長するB2C向けEコマースについて語るが、B2Bについて語る人はほとんどいない。しかしB2Bは今でも中国における、Eコマースの総取扱高(GMV)の75%以上を占めており、中小企業(SME)のB2B取扱高がその3分の2を占めている。また、B2B市場に注目しているのは新興市場だけではない。Amazon社の社長のJeff Bezos氏は、同社B2B部門AmazonSupplyに対して、8兆米ドルという巨額の投資を行い、華やかではないが利益率が非常に高い卸売および流通市場を狙う。

「我が社のB2C向けEコマース顧客企業はこぞってB2Bオンラインショップについてたずねてきます。我々はこれを非常に大きな機会だと捉えています」-Srivorakul氏

9. 代引き取引が、東南アジアで勝ち残るための必須条件

代金引換取引(COD)は、東南アジアのオンライン購買の消費者の2大懸念を軽減する。すなわち、商品の配送と代金の支払いについてである。大多数の消費者は、クレジットまたはデビットカード情報をオンラインで提供することに不安を覚え、また買ったものが届かないことを危惧している。

また、多くの消費者はクレジットカードを持っていないので、現金が唯一の支払い方法となる。銀行やATMでの送金、店頭手続き、PayPal送金などの難しさとあいまって、キャンセル率と離脱率が高まり、代引きが最も現実的な選択肢となっている。ほとんどの東南アジア諸国では、オンライン購買の支払いのおよそ70%は代引きによるものである。店頭手続き、銀行、ATMの場合のキャンセル率が50~70%であるのに対して、代引きでのキャンセル率は5~8%である。

「東南アジアでのEコマースに勝ち残るには、企業はそれがどんなに困難であろうと代引き取引を導入するための投資を行うべきです。Jeff Bezos氏が当日配送をAmazon社のクリアすべき条件としたように、代引き取引が私達の市場にとって新たなスタンダードになると考えています」-Srivorakul氏

10. ドローン配送は必ず実現する

いや、無理であろう。すまない、Jeff(Amazon社長)。

注記:本稿は、当初 aCommerce’s blogに掲載された記事を編集したものです。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia
【原文】

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