スタートアップは日本の医療費の問題を解決できるのかーー語られたデジタルヘルスの「今と未来」

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会場には雨のなか200名の参加者が集まった

モノのインターネットの流れに合わせ、大きな潮流を産もうとしている分野にヘルスケア、健康領域のビジネスがある。彼らがカバーする範囲も、従来からのダイエットや健康管理から、スポーツ支援、義手などの福祉機器など幅広い。

グリーベンチャーズは1月22日、健康領域でスタートアップする企業を交えたイベント「Digital Health Meetup Vol.1」を開催した。都内某所の会場にはこの分野に興味のある200名の関係者が集った。

グリーベンチャーズ代表取締役の天野雄介氏

冒頭にグリーベンチャーズ代表取締役の天野雄介氏は「アメリカでは5000億円ぐらいのスタートアップへの調達投資があった。まだまだなので、日本を盛り上げていきたい。今年はデジタルヘルスの元年。多様性あることを伝えたい」と挨拶した。

「米国でのデジタルヘルスケア市場は、オバマ政権に変わってから政策として医療費を削減する方向になり、具体的に予算が付くようになった。結果として2006年に3割だった電子カルテ導入率は8割から9割に増加している」。

こう切り出したのは野村リサーチ・アンド・アドバイザリーの根岸奈津美氏。デジタルヘルス領域で注目するスタートアップのリストを示しながら「利益がまだでていないにも関わらず、株式市場の期待値は非常に高く同業同士での買収も進んでいる」と、デジタルヘルス関連の企業が出揃い、市場の成熟が進んでいる状況を説明した

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では、このデジタルヘルス領域にはどういった分野があるのだろうか。

根岸氏は「医療用画像や電子カルテなどのインフラ、業務効率改善、EHR(生体情報、ウェアラブル)、各データを分析するビッグデータ解析などがある」と分析。さらにこういったデータに注目が集まる背景には生態情報を取りやすくなったデバイスの進化もあるのだろう。

「たとえばグーグルコンタクト。血糖値計測はこれまで指に針を刺さなければならなかったが、目の涙成分で測ることができるようになると期待されている」(根岸氏)。

その他にも例えば、薬に小さなチップをつけ、胃液に反応して出る電波によっていつ服薬したかを通知する仕組みを提供している企業もある。こういうデバイスによって取得されるデータが、薬の処方効果を最大化させる効果を持っているのだそうだ。

一方で日本はどういう状況だろうか。

根岸氏によれば、日本のEHR市場の規模は5100億円。大手医療メーカーが従来仕切っていた市場だ。ここに診療所と薬局をつなぐインフラや、患者のデータをクラウドで管理するなどのビッグデータ市場が加わる。

根岸氏は今後拡大が期待される国内デジタルヘルス市場について、課題を三つ挙げていた。

まず皆保険制度。よい制度でありながら結果として予防よりも医療機関に行けばいいじゃないかという風潮を生んだことが課題という。次に製薬会社の広告規制で「無料での広告モデルができず、マネタイズが難しい」(根岸氏)と、ネットビジネスで当然となったビジネスモデルへのハードルを語る。

最後は個人情報保護法で、医療関連で取得した個人情報の再利用がグレーになっている点を挙げた。この販売が法の網に引っかかると、取得した生体情報などのビッグデータ活用が難しくなる可能性は確かにある。

ちなみにこの辺りの課題は行政機関によるガイドラインの設定が進んでおり「医療データについては数年内に整備されるとみている」という見通しもあるのだそうだ。

そして最後に根岸氏が語っていた課題こそ最大の問題だろう。そう、医療費と税収の問題だ。

「普通に考えて医療費が税収を越える日は近い。制度設計も変わるだろうが、予防医療やプライベート保険などが厚くなる可能性がある」(根岸氏)。

根岸氏は話の途中、自身の予想として「ウェアラブルで生体情報を常に管理して、必要になったらオンライン診断を受けましょうという通知がやってくる。さらにそういう場合はオンライン予約で医療機関を使える」、という世界観を語っていた。

前述の通り、医療費と税収の問題は決して他人事ではない。

もし、デジタルヘルス領域のビジネスが発達して根岸氏が語るような世界観が実現し、「医療費と税収」という大きな課題にチャレンジできるのであれば、スタートアップにとっては挑戦しがいのある市場になるのではないだろうか。