1989年の日本の時価総額ランキング上位100社は今どうなっているのか

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240105_101666379922895_4508047_o編集部注:本稿はベンチャーユナイテッドのチーフベンチャーキャピタリスト、 丸山聡氏が運営するブログ「No Guts, No Growth.」からの転載記事。国内時価総額ランキングに関して興味深い考察が展開されていたので、同氏に許可を頂き、こちらに掲載させてもらった。

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credit: Thomas Shahan 3 via FindCC

いわゆる日本のバブル景気のピークは諸説ありますが、株式市場としては1989年12月29日の東証大納会で日経平均(225)株価が史上最高値の38,957円44銭を付けたことがピークとなっており、その後の25年間で一度もその値段に近づけていないというのが実情です。

では、そんなバブル景気のピークの時価総額上位100社はどれだけすごかったのかということを検証する必要があるなって思ったりするわけですよ。いまさらですが。でも、25年経っているということは、相当にいろいろなことがあったんだけれども、25年という長期間を経て、それらのトップ企業たちがどうなっていったのかというところは投資をやっていく上ではとっても重要なことかなと。

それで、いろいろと資料をさがしたところ、業績マンさんがまとめていたので、そちらのデータをもとにしてまとめてみたのが次の表になります。

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時価総額1989/編集部注:大きな画像は原文にてご確認ください

※社名変更などはすべてカバーしきれてないですが。。。

ざっと見ても細かくてわからんというご意見もあると思いますが、上位100社の1989年当時の時価総額の合計は308兆円でして、iFinanceのデータによると市場全体の時価総額は590兆円あったようで、そこに占める上位100社の割合は52.2%なようです。上場会社数は調べていたのですが、東証のウェブサイトにあったPDFの資料によると1990年末で1,191社が上場していたようです。

25年経った2014年末には東証1部の上場会社数は取引所の統合などもあったこともありますが、1,858社と比較可能な1990年末に比べて56%増加しています。

また市場全体の時価総額は505兆円で25年前に比べると14.4%減っているだけです。推移でみると2006年に538兆円まで回復しているのがバブルピークに近づいた一番の水準でしたが、その後のリーマンショックなどでだいぶアレでしたが、アベノミクスでここまでは回復していると。

ちなみにITバブルのピークである1999年末の東証1部の時価総額は442兆円です。

そして、いま現在の時価総額上位100社の時価総額の合計は287兆円となっていて、バブルピークに比べて市場全体の時価総額よりも下落幅は少なくなっています。

なお、1989年の上位100社のいま現在の時価総額の合計は183兆円で40%の減少となっています。

ちなみに100位目の企業は1989年は大林組で1.25兆円でしたが、いまは日本ペイントホールディングス(株)で1.1兆円で、その内容を入れ替えつつも日本のトップ100社というのはバブル期よりもしっかりとした株価形成で企業価値を高めていると考えるのがよいのではないかなと。

なお、1989年の特徴はいくつかありますが、いまではずいぶんと少なくなってしまった銀行セクターが上位にひしめいているのが特徴かなと。地銀や信託なども含めて23行がランクインしていましたが、いまや5つのみのランクインとなっています。(みんな金融持株会社なんですが)

また上位100社のうち上場廃止になったのは、完全に廃止されたのが山一證券(廃業)、三洋電機(完全子会社化)、北海道拓殖銀行(経営破たん)、日興証券(完全子会社化)の4社。

また、上場廃止したのちに再上場をしたのが日本長期信用銀行(現新生銀行)、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、日本航空、西武鉄道(現西武ホールディングス)の4社。

ただ、再上場組はどこも時価総額を大きく落としていて、日本航空の50%減が最少で、新生銀行は長銀時代から90%の減少となっています。あと、新生、あおぞら、日本航空の3社はなぜか証券コードが上場廃止時と再上場時がいっしょというところがありました。

金融持ち株会社などの株式移転による経営統合はみんな証券コードが違っているのもなかなか新しい発見ではありましたが。

このほか、経営統合やグループ再編などを行った会社が14社(うち1989年のトップ100企業で現在も残っている社数は3社減少してます)

再上場も含めて1989年の時価総額トップ100社のうち、現在も上場をしている企業は80社。うち時価総額が1989年当時に比べて上昇しているのは僅か15社(経営統合している企業は除いていますが、経営統合した会社すべての時価総額の合計と現在の時価総額を比べると上昇している企業はほぼいなさそうな感じです)

このうち、100%以上(2倍)の上昇をしている企業は以下のとおり

  • トヨタ自動車
  • 武田薬品
  • ファナック
  • デンソー
  • 本田技研
  • ブリヂストン

の6社で、トヨタとホンダは200%超の上昇をしています。

ホンダも経営危機があったし、トヨタもリコール問題があったりということを乗り越えての事業拡大であったわけです。もちろん、全社がリーマンショックをはじめとした世界的な不況期も乗り越えて現在の事業規模まで拡大させているわけですからすごいわけです。

なお、1989年は電力や鉄道、建設業(ゼネコン)なども上位100位に名を連ねていますが、それらの企業で現在の時価総額トップ100位に入っている企業は皆無です。(東京ガスと不動産は名を連ねていますが)

商社も長い冬の時代があったものの、1989年に比べて三菱商事、三井物産、伊藤忠商事の3社は現在は20~60%の時価総額の増加がみられます。

現在、時価総額3位であるソフトバンクは1981年の設立し、1994年に店頭登録していますが、株式公開から21年で日本で3番目の時価総額の企業となっていると考えられます。

また、NTTドコモ、JT、JR3社などはバブル期以降に上場しており、現在は上位を占める企業となっています。

現在の時価総額トップ100の社名を羅列すると

トヨタ自動車(株)
(株)三菱UFJフィナンシャル・グループ
ソフトバンク(株)
(株)NTTドコモ
日本電信電話(株)
KDDI(株)
ホンダ
JT
(株)三井住友フィナンシャルグループ
キヤノン(株)
(株)みずほフィナンシャルグループ
(株)デンソー
(株)ファーストリテイリング
ファナック(株)
日産自動車(株)
(株)日立製作所
武田薬品工業(株)
アステラス製薬(株)
(株)セブン&アイ・ホールディングス
東海旅客鉄道(株)
東日本旅客鉄道(株)
(株)ブリヂストン
パナソニック(株)
三菱商事(株)
信越化学工業(株)
富士重工業(株)
三菱地所(株)
(株)キーエンス
三井不動産(株)
三菱電機(株)
東京海上ホールディングス(株)
(株)村田製作所
ソニー(株)
三井物産(株)
新日鐵住金(株)
(株)オリエンタルランド
野村ホールディングス(株)
コマツ
花王(株)
ヤフー(株)
ダイキン工業(株)
日本電産(株)
三菱重工業(株)
楽天(株)
(株)東芝
(株)クボタ
伊藤忠商事(株)
SMC(株)
第一生命保険(株)
大塚ホールディングス(株)
スズキ(株)
(株)リクルートホールディングス
京セラ(株)
(株)豊田自動織機
富士フイルムホールディングス(株)
住友不動産(株)
オリックス(株)
ユニ・チャーム(株)
国際石油開発帝石(株)
MS&ADインシュアランスグループホールディングス(株)
アサヒグループホールディングス(株)
任天堂(株)
HOYA(株)
中外製薬(株)
三井住友トラスト・ホールディングス(株)
マツダ(株)
東レ(株)
ジェイ エフ イー ホールディングス(株)
(株)大和証券グループ本社
東京エレクトロン(株)
セコム(株)
東京ガス(株)
旭化成(株)
大和ハウス工業(株)
住友商事(株)
オリンパス(株)
エーザイ(株)
(株)電通
(株)シマノ
キリンホールディングス(株)
日本航空(株)
(株)りそなホールディングス
ルネサスエレクトロニクス(株)
味の素(株)
小野薬品工業(株)
富士通(株)
アイシン精機(株)
損保ジャパン日本興亜ホールディングス(株)
サントリー食品インターナショナル(株)
いすゞ自動車(株)
(株)NTTデータ
丸紅(株)
第一三共(株)
住友電気工業(株)
塩野義製薬(株)
日東電工(株)
(株)ヤクルト本社
オムロン(株)
JXホールディングス(株)
日本ペイントホールディングス(株)

となっていて、わずか25年で日本という国の経済を構成する主力企業の顔触れは大きく変わったし、1989年に比べてワクワクする企業が増えているなというのが個人的には率直な感想です。

時価総額の大きさだけがすべてではありませんが、利益を出しているからこそ時価総額は大きいという部分もあるし、1兆円を超す時価総額は一過性のヒットやブームだけでは到達するのは難しいので、やはりそこは経営力とか世界で戦ってしっかりと稼げるとかっていうことが必要なんだろうなと思うわけです。

こうした大手企業を凌ぐような利益成長を生み出すためにはどうすればいいか。まっとうな経営だけでは足りないし、だれもやらないことをやり抜く力も必要だろうし、とにかく意思決定と実行のスピードも必要だし、最後に運も必要ではないかと思います。

いまから25年後の2039年末の上位100社がどのような顔ぶれになっているのか。

そこに名を連ねている企業の中で、1社でも多くの企業の成長に携われることができたら、すごくいいなって思って2015年もがんばっていこうと思います。

では、また。

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