「伝統工芸」は、後世に残す必要性やその重要性について語られつつも、厳しい実情が続いている。伝統技術を継承していく役割を担う職人たちを支えるための仕組みづくりに取り組んでいる人々がいる。
ガイアックスが提供しているのは、伝統工芸職人をコミュニティで支援することを目指す「伝統サポーターズ」というサービスだ。「伝統サポーターズ」では、様々な伝統工芸の職人が参加しており、その職人を支えたいと考えたサポーターの人たちが10人以上集まるとプロジェクトが成立。サポーターによる支援がスタートする。
支援と言っても、サポーターが行うのは1人月額500〜1500円という幅での課金のみ。サポーターはリターンとして、年に一回職人から報酬の品やイベント参加券などをもらうという仕組み。このあたりはクラウドファンディングの仕組みに近い。だが、「伝統サポーターズ」では支援の期間に制限はなく、月額の料金を支払うと限定コミュニティに参加することができ、職人と交流することができるようになっている。
クラウドファンディングよりも継続的な支援は可能になりそうだが、1人のサポーターから月額500〜1500円ほどの支援では、なかなか職人の生活費を賄うまでには至らない。職人側のモチベーションにはどのようなものがあるのだろうか。「伝統サポーターズ」のプロデューサーを務める桜井里子氏はこう説明する。
桜井氏「職人の方々は、消費者の方々とコミュニケーションをとることができることに魅力を感じているそうです。日々、技術を磨き、商品を作っていると、なかなか人々とのコンタクトポイントはありません。新しい製品を作ったときにヒアリングしたいという考えもあり、サポーターと交流できるコミュニティにはメリットを感じていてもらっています。
また、彼らにも新しいチャネルを作らないといけないという危機意識はあり、自分や自分の商品の宣伝やプロモーションを兼ねて「伝統サポーターズ」に参加してくださっています」
一方で、職人を支えるサポーター側のモチベーションはどのようなものになっているのだろうか。「職人を支援したい」と考え、実際に課金に至っている人々はどこに魅力を感じているのか。
桜井氏「伝統産業には関心がある人たちも多く、出身の地域に近い伝統産業を応援しようと、特定の地域の伝統産業の職人の方のサポーターになる人も。ただ、伝統産業をなんとかしたいという気持ちよりも、サポーターの方々はアーティストを応援する感覚に近いと思います。
サービスを提供しつつ、サポーターの方々にヒアリングしていった結果、人を支援したいというニーズが高いことがわかりました。そのため、今では職人のストーリーがよくわかるコンテンツを載せることで、人となりが伝わるようにしています」
伝統産業に携わる人々を支えることには価値があると筆者も感じる。だが、伝統産業が衰退している背景の1つには、市場で求められなくなっているということがあると考えられるのではないだろうか。
人々が職人の活動を支えようとしたところで、作り出すものが売れなかったら、とは考えないのだろうか。桜井氏は、そんな筆者の疑問に対して、こう答える。
桜井氏「ニーズがないわけではないと考えています。ただ人々に情報がリーチしておらず、人々が知らないだけ。職人の人から直接購入すると、案外伝統工芸品も安かったりします。こういったことも人々は知りません。知ってもらうことができれば、ちゃんと売れるはずだと考えています」
人々に知ってもらうために、「伝統サポーターズ」はサイト自体のプロモーションはもちろん、「日本の伝統「刀剣」と「竹工芸」を創立400年の由緒あるお寺で学ぶ会」のようなリアルなイベントの開催などの機会を積極的に生み出していく方針だ。桜井氏は、「伝統サポーターズ」の潜在サポーターには、伝統産業に関心がある人々以外に、ハンドメイドクラフトなどに関心がある人々も含まれると考えているという。
自分の手で何かを作る。そこに価値を感じる人は、職人の高い技術にも惹かれることが多いそうだ。ハンドメイド系はマーケットプレイスを中心に盛り上がりを見せている。この流れにのっていくことができるとすれば、今後サービスが成長していく余地はありそうだ。
「伝統サポーターズ」は、3年後までに職人数を1000人、サポーター数25万人を目標に運営していくという。
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