HackOsaka 2015: Hack Osaka Award入賞者が決定——関西出身スタートアップに加え、欧州勢が健闘

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2月10日、大阪のスタートアップ・コミュニティ拠点である、大阪イノベーションハブ(OIH)大阪市経済戦略局は、グランドフロント大阪で年次のスタートアップ・カンファレンス「HackOsaka 2015」を開催した。本稿はその取材の一部だ。

HackOsaka 2015 のクライマックスとなる最後のセッション「International Pitch Contest / Hack Osaka Award 2015」では、スタートアップ10社がピッチを行った。入賞上位に輝いたスタートアップと、そのサービス内容について紹介したい。

※ 昨年開催された、HackOsaka 2014 の模様はこちらから。

International Pitch Contest の審査員は、

  • Don Burton(Techstars マネージング・ディレクター)
  • Tim Romero(創業者、投資家、ポッドキャスター、著述家)
  • 堀江愛利(Women’s Startup Lab CEO)
  • Khailee Ng(500 Startups マネージング・パートナー)
  • Allen Miner(サンブリッジ グローバルベンチャーズ取締役会長)

…の5人が務めた。(敬称略)

Gold Prize (Hack Osaka Award 2015) : mClinica(フィリピン・マニラ)

副賞:現金50万円、ボーナスマイル5万マイル×3人分(日本航空提供)、Amazon Kindle(Amazon Web Services 提供)

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(左から)Hack Osaka Award 2015 審査委員長を務めたアレンマイナー氏、MC のダイアン吉日氏、mClinica CEO Farouk Meralli 氏。

mClinica CEO の Frouk Meralli はカナダ出身だが、フィリピン・マニラで活動している。フィリピンの独立系薬局は組織化されていないし、POS も入っていないし、インターネットともつながっていない。したがって、製薬会社が、マーケティングや販売データの確保のために、薬局にアプローチするのは至難の技だ。

mClinica を使えば、薬を買う患者は自身の電話番号を提供するのと引き換えに、薬局で薬を買う際に代金の割引を受けられる。この割引した金額は薬局と精算する形で結果的に製薬会社が負担するが、どの薬局でどのような薬が売れているかの情報を取得することができる。製薬会社や薬局は、患者であるユーザに対して、薬に関するプロモーション情報などを配信することができる。

現在、ロシュやファイザーなど大手製薬会社をクライアントに抱えており、ローンチから6ヶ月間で薬局1,400店舗、患者2,000万人をユーザとして獲得した。昨年10月には、500 Startups、フィリピンの Kickstart Ventures、日本の IMJ Investment Partners から資金調達している

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Silver Prize: Blaze(イギリス・ロンドン)

副賞:現金30万円、ボーナスマイル5万マイル×2人分(日本航空提供)

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Blaze CEO Emily Brooke 氏

夜間の自転車の運転は危険であり、車との接触事故や出会い頭衝突などで、イギリスにおいても多数の事故や犠牲者が発生している。Blaze はシティサイクリストのためのレーザーライトを開発、走る自転車の進行方向前方地面に自転車のシンボルを投影することで、脇道から来る他の人や車に対して注意を促し、事故を未然に防ぐことを意図している。

東京のメーカーのレザーチップを使用しており、通常の利用であれば、バッテリの充電は月に一度でオーケー。イギリスで Kickstarter で5.5万ポンド(約1,000万円)の資金調達に成功し、その後、Index Ventures や Branson Family などから150万ポンド(約2.7億円)を調達した。オンラインでは47カ国に販売、イギリス最大の自転車チェーン店のほか、ニューヨーク近代美術館による MoMA Store では店頭で取り扱いがある。

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Bronze Prize: Up Performa(日本・京都)

副賞:現金10万円、ボーナスマイル5万マイル×1人分(日本航空提供)

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Up Performa CEO 山田修平氏

Up PerformaFounder Institute Kansai から生まれたスタートアップだ。プロフェッショナルのスポーツにおいては、ウエアラブルなどを用いてデータや分析が多用されている。それらのテクノロジーをアマチュアスポーツにも取り入れようという試みが Up Perfoma で、位置情報や動きを表すヒートマップ、走行距離やスピードなどを測定し表示する。

Up Performa のスポーツ・ウェアラブル・デバイスは、2015年中にクラウドファンディングに出品が予定されている。

Crosscorp Prize: SmartCheckups(ドイツ・ベルリン)

副賞:シンガポール、デリー、ジャカルタ、マニラ、東京、ホーチミンシティのいずれかにあるクロスコープ・オフィスの一年間利用権。

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不動産事業者や不動産管理会社は、貸出にあたって、物件内部の様子についてレポートを作成する必要があり、そのためには非常に多くの写真を撮影し整理する必要があるため、煩雑な作業となる。SmartCheckups では、あらゆる種類の物件について、あらかじめ調査すべき箇所がテンプレート設定されており、それに沿って写真を撮影したり、状況の確認をすることで作業を簡略化できる。

ベルリンのスタートアップであるが、サービスはベルギーからスタートした。現在、ターゲットとしている市場は、ドイツ、イギリス、ベルギー、フランス、オランダだが、日本においてもパートナー企業を求めている。

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SmartCheckups CEO Didier Vermeiren 氏

以下は入賞には至らなかったものの、このセッションで素晴らしいアイデアを披露したスタートアップだ。出場順に紹介したい。なお、入賞の是非を問わず、本ピッチに参加したすべてのスタートアップに対して、Amazon Web Services から250ドル分のクラウド利用権が進呈された。

Cofame(日本・大阪)

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Cofame COO 野口寛士氏

Cofame はモバイルアプリを使って、名刺を交換するユーザ・エクスペリエンスを新しくするスタートアップ。初めてあった人と名刺交換する動作を、モバイルアプリを使って行える。複数人とのミーティングにおいては、同時に複数人との間で名刺情報が交換できる。

また、テーブルを囲んでミーティングをしたときの配置を、アプリ上に名刺を表示する形で再現できるほか、Salesforce や Microsoft Dynamics CRM など、さまざまなコンタクト先管理ソリューション用に連絡先データをエクスポートすることが可能だ。

Cofame 創業者の野口寛士氏は、大阪市の「第一回シリコンバレー人材派遣プログラム」に選抜され、シリコンバレーを訪問後1ヶ月間のテント生活を経験。日米を含む数名のエンジェル投資家から資金調達をしている。

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インゲージ(日本・大阪)

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インゲージ 代表取締役 和田哲也氏

企業において、顧客からのメール対応をおろそかにすることで発生する機会損失は、年間4,500万円に上るとの試算がある。インゲージは、グループにおけるメール共有・メール管理ソリューション「Re:lation」を開発、企業内において、返信を要する顧客からのメールに対して、社員が忘れることなくメールを返信できる環境を提供する。

一見はウェブメールの画面であるが、チームの誰かが返信メールを書き始めると、他のユーザには誰がその作業をしているかをリアルタイムで表示。既に返信を完了しているメールとあわせ、返信の作業が社員同士の間で重複するのを避けることができる。

顧客へのメール送信にあたり、上長の承認が必要な企業においては、社員が書いた返信メールの内容が保留され、上長承認とともに送信されるオプション機能も活用できる。

Cashboard(ドイツ・ベルリン)

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Cashboard CEO Robert Henker 氏

Cashboard は1,000ユーロ(約13.5万円)から投資できる、投資口座を提供する Fintech スタートアップだ。ETF(上場投資信託)だけでなく、新旧の金融商品をミックスさせて自動運用することができる(ラップ口座に近いか?)。いくつかの質問に答えるだけで、Cashboard がどの金融商品に投資すればよいか、ユーザに対するポートフォリオを作成。あとは、口座を開くだけで投資が開始できる。

2014年はVCから初の資金調達を実施。年末には Seven Ventures のピッチデイで優勝し、衛星放送で400万ユーロ(約5.4億円)分のテレビコマーシャルが流せる権利を取得しており、2015年には、これを使ってドイツ国内向けのプロモーションを強化する。2016年には2回目のVC資金調達を実施し、ヨーロッパ全域展開を予定。2017年以降、中東やアジアへの世界展開を図りたいとしている。

M Square(日本・神戸)

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M Square CEO 亟々美和氏

M Square の共同創業者で CEO の亟々美和(じょじょ・みわ)氏は2010年、MBA を取得するためパリに居た。仕事を得るための面接などでパリ市内を頻繁に移動したが、頼りになるのは、パリ地下鉄のICカード「NaviGo」 だ。しかし、彼女は使い方がわからず、電車に乗るたびに切符を買っていた。

ロンドンの OysterCard、シンガポールの EZ Card、香港の Octupus Card、ソウルのTカード、東京の Suica など、世界には多くの IC カードがあるが、インターオペラビリティー(相互運用性)は無い。また、複数のモバイルウォレットを持てば、それだけ多くのアプリと暗証番号やパスワードを持たなければならないし、盗まれることもある。

M Square が開発する Depago は生体認証を使った決済ソリューションだ。昨年10月から開発を始めており、今年の6月をメドにプロダクトがローンチする予定だ。

DigitAddress(日本・大阪/東京)

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DigitAccess 創業者 王偉(ワン・ウェイ)氏

DigitAddress は、デジタル時代の住所暗号化ソリューションを提供。ユーザは住所に代えて、自身の住所を コード化したDAコードとして取得、商品の発送などにあたり、送付先をDAコードとして送り主に伝える。配達するオペレータは API を通じてDAコードから位置情報を取得、商品は送付先に無事に届けられる。

ドローンによる商品配達の時代を想定し、DAコードは住所よりも細かい位置情報を保持。これにより、ドローンを使った商品配達のオペレータは、地番が同じ複数の住居や建物があっても、依頼主に正しく商品を届けることができる。ユーザのプライバシーを守りながら、きめ細やかな配達先位置情報を伝えられるのが特徴。

創業者の王偉(ワン・ウェイ)氏は、物理学を学ぶため中国から来阪。経済産業省らが主催する UVGP (University Venture Grand Prix) で TOMODACHI 賞を受賞し(当時の名前は CODDRESS)、既に大手セキュリティ系企業からも資金を調達しているとのことだ。

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Stamp(タイ・バンコク)

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Stamp CEO Opie Lopansri 氏

Stamp は店舗が顧客誘導をしやすくするデバイスを開発している。電話の画面の上にそのデバイスを押し付けるだけ、紙の顧客カードでスタンプを押すのと同じことができる。導入が容易であるため、店舗にとって導入コストがかからず、操作が簡単であることが特徴。ユーザは貯めたポイントを仮想通貨として利用することができる。

Stamp は iOS / Android 向けにアプリを出しているが、あわせて SDK (Stamp Development Kit)を公開しており、サードパーティーのアプリ・デベロッパ向けが自社アプリに SDK を組み込むことにより、そのアプリを使って Stamp 導入小売店舗でサービスを享受できるようになる。

飛行機のマイル、クレジットカードのリワードポイントなど、ポイントは貯めたが下限ポイントに達していないため交換できないケースは少なくない。多種のサードパーティー・アプリや加入小売店舗を持つことで、Stamp が共通して使える Stamp のポイント通貨圏を増やすという考え方だ。2013年、シンガポールで開催されたスタートアップ・イベント Echelon 2013 のピッチに出場、2014年には ASEAN ICT Awards を受賞している。

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