研ぎ澄まされた製品しかユーザーに響かないのが世界ーー大日本印刷の北米チャレンジ【後編】

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本稿は前編からの続き

リーンは海外だからこそ出来る

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Image by Besty Weber

必要最低限の機能開発は昨年12月時点で終わっており、今年からプロモーション段階に入っている。

開発手法に関しては、ユーザーフィードバックを得て、それをプロダクトに即活かしつつ修正を加えてゆく、リーンなプロセスを取っていく。

このようなリーンスタートアップ的やり方は、北米の方が向いていると語る平野氏。これはユーザーフィードバックの質に起因しているようだ。

「いまはサンフランシスコ市内の大学に通っているいろいろな学生に声をかけてフィードバックをもらっている状態です。最近感じたのは、ユーザーのフィードバック自体は北米の方が濃いということ。特にサンフランシスコはアーリーアダプターしかいなく、多くのアプリに触れているからでしょう。そのため、フィードバックの質が重要になってくるリーン手法は、北米で最も通用すると考えています」(平野氏)。

私がサンフランシスコのスタートアップ界隈の人と話す時も、確かに多くの示唆に富む意見をもらえるので、平野氏の意見に同意だ。フィードバックベースのリーン手法が北米で最適であるという点も納得がいく。

一方で、日本ではリーン手法は難しいとも語っていた。日本人消費者からのフィードバックは比較的薄く、一定量をリサーチ段階でもらったとしてもローンチしてみるまでユーザー全体のリアクションがわからない。だからこそ、リーンとは逆に長期計画でじっくりと仕込んでいく必要が日本では生じるとのこと。

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Image by Alan Levine

一方でユーザーフィードバックの受けすぎには気をつけているらしい。

「やはり答えは現地にあります。困ったらユーザーに聞くのが一番良い。ですが意識しないといけないのは、ユーザーに聞きすぎてもいけません。仮に10人中7人が欲しいと言った機能だとしても、マネタイズやユーザー獲得というビジネスモデルの面からそぐわないと判断したら即切るようにはしています。

例えば友人機能。SnapAskのコンセプトとしてすぐに回答が来るツールと割り切っているので、友達に聞くというシチュエーションは想定していません。そのため、フィードバックの中に友人機能を付けて欲しいという要望がありましたが、対応はしませんでした」(平野氏)。

このように質の高いフィードバックの中から、自分が聞かなければいけないものを選び取り、プロダクトに反映させ、必要最低限の機能で市場にリリースするという方針と苦節が伺える。

「シンプル」には理由がある

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MVP – Minimum Viable Product (必要最低限の機能)はリーンスタートアップではお馴染みだ。SnapAskもこの考えを重視している。しかしなぜ必要最低限でなければならないのだろうか。その答えは、多様性の中にある。

「競合やトレンドアプリ調査のために100以上のアプリを使い倒しました。その結果、日本のものは機能が多く、複雑である一方、米国ではほんとうに研ぎ澄まされたシンプルなものが流行るということを実感しました。例えばYoならyoしか送れませんし、Instagramなら写真撮って投稿するだけ。これは多種の民族・人種が使ったとしても共通して好まれる部分を見つけ、そこに特化しているからです。SnapAskもそこを重視して、投稿と回答機能の2つしか実装していません」(平野氏)。

殊にサンフランシスコでは様々な人種が入り交じっている。メキシコ系からアジア系、もちろんヨーロッパ系まで幅広い。そして年齢・性別だけでなく、民族・人種別に見ると趣向が変わってくる。故に、各々のデモグラフィーの人達が欲しがるような機能を全て付け加えても埒が明かない。そこで共通項としてのたったいくつかの機能を見つけ、勝負する必要性が出てくるのだ。

また、シンプルという答えに行き着いたのは、企画段階で得たフィードバックからも来ていると語る。

「実は企画当初、SnapAskのたたき台として日本でローンチしていたレシーピ!を使っていました。ですがユーザーからは機能が複雑であったり、かわいいキャラクターがChildish(子供向けみたい)だという意見を言われました。ここは日本人がよく間違えるポイントで、日本人はかわいいものがキュートと思われると考えていますが、そうではなく米国では子供染みていると感じ取られます。これはこちらに来ないとわからないですし、日本人とアメリカ人の捉え方の違いを表した好例でしょう。だからこそ、機能を付加したり、キャラクターを作ったりせず、シンプルという大方針を取ったのです」(平野氏)。

日本市場では同じようなユーザーセグメントばかりが存在するため、ほんの少しのことでも手を加えて差別化を図る必要性がある。しかし、米国では同一の価値観というものが存在しないため、共通するほんの一握りの概念でないと、米国ユーザーとはつながれない。

こうした「多様性」という現状をしっかりと捉えた上で、シンプルという答えに至っているようだ。

これからの戦略と展開

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今後は回答側ではなく、投稿側を中心に今後集めていくとのこと。これはユーザートラッキングをしていく中で、アプリを使う頻度が多いとわかっているからだ。

そしてインセンティブは麻薬のようなものであり、こだわらないとも語っていた。インセンティブを重視した例として、楽天レシピがクックパッドに対抗するためにレシピ投稿者とレポート投稿者の両者にポイントを与える仕組みを作ったが、結局シェア率で敗れたことが挙げられる。このようにお金やポイントをあげると一瞬はユーザー数が伸びるがすぐに離れる。だからこそ、純粋にプロダクトを使いたいという共感を元にユーザー数を伸ばすことが大切になる。

また今後のマネタイズは3つ。1つはマーケティングデータを企業向けに売っていく。2つ目は、メディアとの連携。例えば投票番組や動画配信サイトなどでリアルタイムで行えるアンケートツールとしての利用だ。3つ目は、販売業者のプロモーション。特別プロモーション投稿を設定して、企業がマーケティング調査したり、好まれた商品をSnapAsk上でプロモーションできる。

しかし未だ世界観は定まり切っていない。プロダクト・サービスの考えは「問題解決型」(Problem-Solving)か「価値提供型」(Value-Added)の大きく2つに分けられる。この点は、これからユーザーに聞きながら決め、メッセージの出し方を考えたいとのこと。つまり利用シーン及びシーン訴求という細かい設定は決められているが、世界観はこれからということだ。現時点では問題解決型を想定しているらしいが。

メルカリやスマートニュースのように、着実に北米市場でシェアを拡大しているサービスもある。これら先駆者に追いつけるか、SnapAskの勝負はこれからだ。

情報開示:筆者はSnapAsk企画段階で行われたリサーチプロジェクトに携わっていました。

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